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2008_天皇杯四回戦・・深層心理の「弱さ」と対峙させられたアントラーズとレッズ・・(2008年11月3日、月曜日)

まずは、失うモノなど何もないことで(!?)活きがよく忠実でダイナミックな積極サッカーを展開した国士舘大学に対し、うまく最高レベルまで気合いを乗せることができずに(!?)苦しみ抜き、最後はPK戦でやっと辛勝したアントラーズ。

 たしかに、アントラーズが、大学生だからと相手を甘く見すぎたことで「いい加減な心理」でゲームに臨んでいたという評価は厳しすぎると思う。チェイス&チェック(守備の起点プレー)もある程度は機能させられていたし、攻撃では、ボールがないところで「も」効果的な動きが出ていたとは思うのですよ。でも・・

 アントラーズのプレーに「最後の勢い」が欠けていたということなのかもしれない。最後の「10センチ先まで」足が出ない・・。本当に「小さなところ」での首尾一貫した極限のに闘う意志が欠けていた・・。局面勝負などで相手の気合いを凌駕するスピリチュアルエネルギーの爆発がなかった!?

 ボール奪取勝負へ行けるタイミングなのにスピードをダウンして味方の善処を期待したりする・・タテへ抜け出そうとする相手をマークしつづけなければならないのに「行かせて」しまい、誰かさんのように「交通整理」よろしく手を挙げて対処を促す(そのほとんどがアリバイプレー!!)・・協力プレスへ行けるタイミングなのに様子見になってしまう・・三人目のフリーランニングで決定的スペースへ飛び出していかなければならない状況なのに結局は様子見になってしまう・・勇気をもってドリブル勝負を仕掛けていかなければならないのに、最後の瞬間に「フッ」と気合いが抜けて横パスに逃げてしまう・・などなど・・

 そんな、ごく小さなところでの意志の不発現象。一つ一つは大きく目立つワケじゃないけれど、やはり「塵も積もれば山となる」。フムフム・・

 いつも書いているように、ある程度のレベルに到達しているチーム同士の対戦だから、相手に、本来の実力の差を体感させるためには、やはり極限のハードワークをしなければならないのですよ。

 それも「最初」が肝心。そこでガンガンにアタマを押さえつければ、すぐにでも相手の気力が萎えてくるし、心理的な悪魔のサイクルに陥れてしまうことだって出来る。そうしたら、もう「僅差で実力が上のチーム」の独壇場なのですよ。でも、肝心な「ゲームの入り」で相手につけ上がらせてしまったら(アッ・・やれるかも・・と自信を持たせてしまったら)、その後の展開が非常に厳しいモノになってしまう。

 それが、例年、この段階の天皇杯マッチに番狂わせが多い背景要因なワケだけれど、アントラーズの強者たちが「その心理メカニズム」を知らないはずがない。でも、やはり深層心理では「相手は大学生だぜ・・」というイージーな感覚が漏れ出していたのかもしれない。

 この後に、国士舘大学とトレーニングマッチなどで「再戦」したら、たぶんアントラーズが大勝を収めるに違いありません。要は「甘く見るなよ!!」ってなモティベーションの爆発ということだネ。

 ホント、サッカーは難しいネ。何せ、監督は「あの名将」オズワルド・オリヴェイラだからネ。その彼にしても、この状況で、選手のマインドを極限まで高揚させることが難しかったということか・・。アッと・・、これについては、チームの「気合いレベル」を一人の例外もなく最高レベルで統一させられなかったという表現も出来るネ。「意志のレベル」が選手によってデコボコになれば、すぐにでも消極ビールスがチームに蔓延し「より大幅に」モティベーションが下がるからね。とにかく、心理マネージャーとしての監督さんのウデが様々な部分で試されるというわけです。簡単な仕事じゃないね。フムフム・・

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 さて次は(愛媛FCが0-2の勝利を収めた!)昨シーズンの天皇杯四回戦の再現マッチとなったレッズ対愛媛FC。この試合については、前述した、「アントラーズが数日後に同じ国士舘大学と再戦したら大勝したに違いない」というモティベーション状況に匹敵する(またはそれ以上の)サッカーを展開できなければ許されないよな・・なんて試合前は思っていたのだけれど・・

 「勝てば官軍」という雰囲気に流されてしまっては、決して進歩はない・・。ということで、やはりレッズの(特に前半の)プレー姿勢に対する批評からコラムに入っていかざるを得ません。

 ということで、この試合を観ながら最初のメモしたのが「攻守にわたる全力ダッシュの量と質こそが評価基準」という表現だったというところから書きはじめます。

 その意味するところは、もちろん「意志」のチカラ。アントラーズ同様、(特に前半については)レッズもまた「深層心理にある人間的な弱さ」に流されてしまった部分があったということです。

 とはいっても、皆さんも観られた通り、後半からは少しは立ち直ったし、前半も含め、何本か決定的チャンスも作り出した。それでも、前述した評価基準(攻守にわたる全力ダッシュの量と質・・アントラーズについて述べた、攻守にわたるボールがないところでの主体的なプレーの量と質も含む!)からすれば、全体的なサッカー内容については、やはり不満の方が先行するのですよ。

 とにかく今は、チームとして統一して持つべき「意志」の意味をしっかりと見つめ直さなければいけません。

 スタジアムに掲げられた横断幕。正確ではないけれど、ニュアンス的にはこんな内容だったと記憶します。『浦和の将来にとって、残りの試合が持つ意味はものすごく大きい・・そこでしっかりとしたサッカーをしなければ、来シーズンも同じ失敗を繰り返すことになるゾ!・・浦和の男だったら、サッカーの内容で(自らの意志で!)オレたちの声援を勝ち取ってみろ!』

 いいね〜〜、ホントに。レッズは素晴らしいサポーター(ファン)の皆さんに恵まれていると思いますよ。私は世界中のサポーターの「言動とその心理パックボーンのニュアンス」をある程度は把握しているつもりだけれど、戦術的な深度(サッカーの楽しみ方)とか、情緒と理性のバランスなどといった視点でも、レッズサポーター(ファン)の皆さんは、世界に誇れる人たちだと思うのです。

 ところで後半のペースアップ。そこでの精神的な支柱は、明らかにロブソン・ポンテでした。

 後半10分過ぎだったと思うけれど、エジミウソンが、左サイドで、全力でのボールをめぐる競り合いを仕掛けていったシーン。結局は相手ボールになってしまったけれど、そこで、前気味センターゾーンにいたポンテが、その少し後方にポジションを取っていた細貝萌と鈴木啓太の守備的ハーフコンビに対し、大袈裟なジェスチャーをつかい「何でお前たちはエジミウソンのサポートへ押し上げていかなかったんだ(前のスペースへ詰めて行かなかったんだ)!!」と怒り狂っていたのですよ。

 ポンテが放散した激しい怒りという「強烈な刺激」。それは、ポンテが、本物のリーダーシップを取りはじめたことを意味するに他なりません。特に、それが「中盤」だからこそ重要な意味をもつ。後方にはトゥーリオがいるから、本当にポンテのリーダーシップがが機能しはじめたのだとしたら、タテ方向へ有機的につながる「心理的な支柱」っちゅうことになる。それこそが、レッズに欠けていたものなんですよ。

 そのバックボーンは、ポンテが、自分自身のプレーに自信を持ちはじめたことだと思いますよ。「やっとオレがイメージするプレーを不満なくできるようになった・・攻撃だけじゃなく、守備においても・・」という確信。彼が繰り出しつづける前戦からのチェイス&チェックには、どんどんと本物の勢いが乗りはじめていると感じます。

 後は、鈴木啓太がベストコンディションで戻ってくるのを待つばかり。いまの彼のプレーは、明らかに「何かがおかしい」からネ。もちろんゲーム感を取り戻すことも大事だけれど、心理的に「完全に解放されていない」状態でプレーすることが彼にとって良いことなのかどうかは微妙だね。私は、自分の「物理的&心理的フォーム」についての確信レベルを最高の状態まで戻すことが先決だと思うけれど・・

 最後にもう一人、セルヒオ・エスクデロについてもコメントしておきます。もちろん彼については、ネガティブ・ニュアンスということになります。

 とにかく彼は、少なくとも「今の二倍」走りまわり、ヘディングもしっかりと競り、守備でも(前戦からのチェイス&チェックなどでも)実効あるプレーが出来なければ(汗かきもやろうとしなければ)発展ベクトルに乗ることなど夢のまた夢です。いま彼の中途半端なプレー姿勢については、能力が高いからこそ、心配で仕方ありません。

 自分がチャンスの主役になれるときにだけ「走る」のでは、まさに「楽して金儲けする」という怠慢なプレー姿勢じゃありまんか。また彼の場合は、とにかく「足許パス」をもらおうとし過ぎる。もっとタテのスペースへ走り抜けるような「ボールがないところでのクリエイティブプレー」も織り交ぜなければ、この試合のように、相手ディフェンダーの「ボール奪取勝負での格好の標的」になってしまうのですよ。そんなだから、ボールをもっても、何も出来ずに「逃げの横パス」を出すハメになる。

 それでは、チームメイトから尊敬されたり頼りにされたりするハズがないし、結局は邪魔なだけの存在になり下がってしまうのがオチ。彼は、得意のドリブル勝負にしても、ボールがないところで走り回り、味方にスペースを提供するなど『味方に使われる』汗かきプレーを積み重ねることで「のみ」良いカタチでボールを持てる・・という明確な「メカニズム」に対する理解を深めなければなりません。良いカタチとは、ある程度フリーで、相手との1対1の勝負(相手のサポートが遅れているような1対1の勝負)を仕掛けていけるような状況です。

 とにかく今のセルヒオ・エスクデロは、楽して金儲けしてよいのは「マラドーナのような世紀の天才」だけだという、サッカーの歴史が証明している明確な事実をしっかりと理解しなければならないと思いますよ。

 インテルの天才アドリアーノだけれど、新任の天才監督モウリーニョが、こんなことを明確に言い渡したそうですよ。「オマエは、200メートルダッシュをつづけざまに20本走り、それでも息が上がらなくなったら先発に入れてやる!」

 ということで(例年もっともエキサイティングな勝負ドラマが起きる!?)今年の天皇杯四回戦は、結局、ほとんど波風が立たずに終了することになったという次第でした。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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