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2008_「ユーロ08」・・リベリーの負傷退場が全てだったね・・イタリア対フランス(2-0)・・(2008年6月18日、水曜日)

あらら〜。そのとき絶句。フランスの、攻守にわたる起点としてだけではなく、仕掛けの創造性リーダーとしても抜群の存在感を光り輝かせていたダイナモ(チームプレーの発電器)リベリーが負傷退場してしまったのですよ。これじゃ・・

 そして案の定、そこからイタリアのサッカー内容が目に見えて充実していく。サッカーは心理ゲームだからね。イタリアがもっとも警戒していたリベリーがいなくなったのだから、彼らが心理的に加速するのも道理なのです。

 リベリーのケガだけれど、それは、彼のチームプレーに徹した「忠実な意志」が災いしてしまったのだから、まさに皮肉な結果としか言いようがなかった。

 右サイドを駆け上がるザンブロッタを(何十メートルもの!)全力ダッシュで「チェイス&チェック」したリベリー。最後は、ボールを奪い返すところまで迫る。でも結局は、ザンブロッタと「不運なカタチ」で交錯し、左足が「変に」着地してしまうのです。そのシーンのスローモーションを観ていて、鳥肌が立ちました。

 そして、イタリアの絶対的な創造性リーダー、ピルロのプレー内容がどんどんと積極的になっていく。それまで注意深かった彼のプレー姿勢(彼を中心としたボールの動きの内容)が、より前気味なモノへとシフトしていったのですよ。要は、ボールを持ったときの展開(仕掛け)イメージが、より攻撃的にシフトしていったということ。そして彼の足から、どんどんと縦方向への勝負パスが飛ぶ。ペロッタの絶好機を演出したラストパスのようにね。

 まあ、イタリア先制ゴールシーン(トーニへの縦パスがPKを呼び込んだシーン)が、ピルロの天才を象徴していたですかね。本当に素晴らしい、ピルロからの、ロング(ラスト)タテ一本パスではありました。

 フリーキックからの横パスを(ハーフウェイライン手前で)受けたピルロ。チラッと最前線のトーニへ視線を投げる。その瞬間、最終勝負のイメージ・シンクロ・コンビネーションが「爆発」した。

 トーニが、マークするアビダルをスッと回り込み、背後の決定的スペースへ抜け出したのですよ。もちろん同時にピルロからラストパスが出たことは言うまでもない。そして、ボールをトラップしてシュートしようとするトーニを(スクリーニングで抑えられてどうしようもなくなった)アビダルが後方からブッ倒してしまったというわけです。もちろん、PK! そしてアビダルには「レッドカード」!

 最後は「イタリアの絶対的イメージリーダー」ピルロが、PKを、クールに、フランスゴール左上角へ決める。このキックは簡単じゃありません。ゴールキーパーが絶対に届かないコース。でも、ちょっとでも間違えばバーを越してしまう危険なシュート。「あの」極限のテンション(緊張)のなか、そんなシュートが打てるんだから、まさに脱帽だよ。

 「ピルロの天賦の才は、まあどうしようもない・・守備的ハーフの位置にはいるけれど、まさに攻守にわたって代替の効かないファンタジスタだよな・・」

 2006ドイツワールドカップの準決勝でイタリアに敗れた後、知り合いのドイツ人ジャーナリストが、アタマを横に振りながら言っていた。まさに、そういうことだね。ファンタジスタって、攻撃的なハーフのポジションで「そのときだけ」光り輝くってなイメージだよね。でもピルロの場合、目立たない汗かきの「合間」に、スッと前面に出てきて「ファンタジスタ〜〜ッ」ってな創造性プレーをクールに決めちゃうんだから、相手にとって、これほど怖い存在はいない。オレはファンタジスタだぜ!っていう顔をしているヤツを「消し去る」ことほど簡単な作業はないからね。とにかくピルロは、未来型の(要は攻守にわたる汗かきもいとわない!)天才プレイヤー。ホントに素晴らしい。

 ということで、この時点でゲームの趨勢は決まったも同然だった。その後フランスは、リベリーの代わりに投入したナスリを再び交替させてディフェンダーを入れたけれど、結局コンビネーションイメージが定まらずに混乱するばかりでした。そしてイタリアのトーニが、続けざまに何本も絶対的シュートチャンスに恵まれるのですよ。もちろんカゲの演出家は、ピルロ。

 でも、そんな絶対的チャンスを、トーニが、「エッ、どうして決まらないの??」と誰もが首をひねるように外しまくるのですよ。そして逆に、アンリが(数少ない)チャンスを得たりする。こりゃ・・もしかしたら神様のドラマが・・ってなことを感じていた。

 そして後半。フランスが来た。たぶんフランスチームの全員が、イタリアの二倍は走るというイメージでグラウンドに向かったのだと思う。逆にイタリアは「慎重に・・慎重に・・」と、完全に「様子見プレー」に終始していた。もちろん一人少ないけれど、それを全体的な運動量と積極性の高揚で補おうとするフランス・・それに対して、プレーの対する意志が「慎重」に減退しているイタリア・・ってな構図。そして、ベンゼマやアンリが、立てつづけにシュートシュートを放つのですよ。

 でも、徐々にイタリアも、ゲーム展開に対する経験ベースの感覚が呼び覚まされてくる。そして、攻守にわたるボールがないところのプレー内容も充実してくるのです。こうなったらイタリアのものじゃありませんか。そしてゲームが落ち着いてきた後半17分に、デ・ロッシの直接フリーキックが、アンリの足に当たってコースが変わったことで(フランスにとっては)万事休す。

 ちょっと脱線するけれど、私は、このゲームに臨むにあたり、フランス、ドメネク監督が、こんなことを意図していたと想像します。

 ・・この試合は勝つしかない・・とにかく勝負を懸けよう・・2006年ドイツワールドカップにおいて(試合内容で)鈍重に立ち上がったフランスが「大会が進むなかでブレイク」したプロセスを再現するんだ・・そう、ジダンに完全な自由を与え、彼を中心に、周りをサポートプレイヤーで固める・・

 ・・今のチームでは、ジダンの代わりはベンゼマしかいない・・彼に、二列目のセンターで「完全なる自由」を与える・・その周りを取り囲むように、リベリー、ゴヴー、アンリ、マケレレ、トュラランがサポートする・・とにかくベンゼマに「良いパス」を供給し、彼の才能を活かし切るというイメージに徹底する・・

 でも結局は、リベリーの負傷退場やアビダルの退場といったアクシデントもあったことで、その「意志」が十全に機能することはなかった。あっと・・もちろんこちらは、ドメネク監督がどのようなチーム戦術的な意志をもっていたかなんて知る由もないわけですがネ。

 それにしてもオランダは強い。サブチームでも、ルーマニアに余裕の勝利を収めてしまった。これも、オランダの、サッカー的に優れたインフラストラクチャーの為せるワザってなことなんでしょう。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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