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2008_ヨーロッパの日本人・・水野晃樹(もちろん中村俊輔についても間接的に!)・・(2008年12月27日、土曜日)

たしかにグラウンド状態はよくない(部分的に氷が浮いていて硬い!?)。ただ、そんなことでチャレンジマインドが縮こまってしまうのではだらしない。そう(相手ディフェンスの人数が足りないゾーンなど)有利な状況でボールをもっても、吹っ切れたドリブル勝負を仕掛けていけなかった水野晃樹だったのです。

 レンジャーズ対セルティックのグラスゴーダービー。前節のように(俊輔からのタテパスと、それを受けた晃樹のドリブルシュートに目を奪われた!!)中村俊輔と水野晃樹の共演を期待したけれど、俊輔は体調不良(風邪!?)だとか。フム、残念。とはいっても、俊輔が万全だったら、水野晃樹の先発はセカンドチョイスってなことになったのかもしれないね。

 ということで、この試合での水野晃樹には、中村俊輔に準ずるようなタスクイメージが期待されていた!? まあ、とはいっても、やはり水野晃樹には、組織的なチャンスメイクよりも、ドリブルなどの個人勝負への期待の方が高かったんでしょうね。

 ということで、中村俊輔のいないセルティックの組み立てプロセスは、どうも単純に過ぎるという印象になってしまう。要は、組み立ての起点での「創造的なタメ」がないことで、稚拙なボールの動きから、最後はシンプルに過ぎる仕掛けの勝負パスが飛ぶばかりということです。

 俊輔がいたら、まずボールの動きの量と質がワンランクはアップするでしょう。

 攻守にわたって動きまわる中村俊輔をコアに、スパッ、スパッとボールが動くことで、相手守備ブロックを振り回しながらウラのスペースを『組織的』に攻略してしまうのですよ。もちろん、そんな組織的な崩しプロセスのなかに、マクギーディーやマクドナルドといったスピーディーでスキルフルな選手の爆発ドリブル突破が盛り込まれる。組織と個のハイレベルなバランス・・

 とにかく、中村俊輔がいることで、セルティック中盤に様々な「変化」が演出されるのですよ。だから、相手守備ブロックは、容易には次のボール奪取ポイントを絞り込めない。逆に、積極的にボールを追い込もうとしたら、その逆を取られて「振り回されて」しまう。とにかく、いまのセルティックにとって、中村俊輔の「組織コンビネーションのリーダーシップ」は、とても重要な価値を生んでいる。

 まあ彼の場合は、とにかく守備意識が素晴らしいからね(追いかける意識だけじゃなく、実際にボール奪取勝負シーンでも効果的なプレーを魅せつづける!)。だから、多くのケースでボールを奪い返すスポットの近くにいる・・だから、そんな俊輔に対する信頼感の醸成とともに自然と彼にボールが集まり、彼のイメージする『リズム』でボールが動き、彼を中心にゲームが組み立てられていく・・。とにかく、中村俊輔に対するチームメイトの絶対的な信頼を感じます。

 そんな「優れた守備意識を絶対的なベースにする組織プレーのコア」がいるからこそ、水野晃樹のプレーイメージも「膨らみ」つづけるというわけです。何せ、一度ボールを預け、パス&ムーブで次のスペースへ抜け出せば、高い確率で再びパスが送られてくるのだからね。そりゃ楽しいよ。ワンツーで抜け出せば、確実に、水野晃樹が得意とするドリブル勝負を仕掛けていける状況になるわけだからね。

 でも、組み立てのリーダー(中村俊輔)不在のこのゲームでは、組織プレーがうまく機能しない。だから、水野晃樹のプレーにも、主体的な「冴え」が感じられない・・そして「その他大勢プレイヤー」のなかに埋没し、右往左往するばかり。フムフム・・

 水野晃樹は、もっと自信をもって、積極的にプレーしなければいけない。たしかにセットプレーでのキッカーを任せられる程度にはチーム内のヒエラルキーもアップしているのだろうけれど、このようなプレーをしていては、存在感はアップしないし、良いプレーも出来ないよね。

 要は、もっともっと、攻守にわたって積極的に「仕事を探しつづけなければ」ならないということです。そう、ボールがないところでの仕事・・。サイドゾーンに「張り付いて」パスを待ち、守備でも、ぬるま湯のチェイス&チェックしか繰り出さないのでは、個人事業主のアイデンティティー(誇り)などまったく感じない。

 もっと、もっと、攻守にわたって主体的に仕掛けていかなければならないのですよ。でも、動き回り「過ぎた」ら、必要なときに、自分の本来のポジションであるサイドゾーンにタイミングよく戻れなくなっちゃう・・なんていうのは言い訳にしか過ぎません。俊輔は、あれだけ前後左右に動き回って守備に入っているのに、肝心なところでは、しっかりとスペースでボールに触っているのですよ。

 だって、良いタイミングでパスが出てこないじゃん・・。それも、次元の低い言い訳だね。パスを「出させる」のも、個人事業主の「ウデの内」なのです。どうしたら味方にパスを出させるのか・・。その工夫が足りないのですよ。

 その方策で、もっとも効果的なのは、もちろん守備での汗かきを味方に「見せる」ことです。味方の誰もが「サンキュー!!」と感じるような、爆発的な(要は、誰もが視認するような目立つ)汗かきの忠実プレー。それを積み重ねていれば、自然と、ボールが集まってくるものなのです。

 何といっても、水野晃樹は、天賦の才に恵まれた特異なプレイヤーなんだからね。その天賦の才を、効果的に表現するためにも、まず『攻守にわたる汗かきプレーを!』と思うワケなのです。この試合でも、フリーキックだけじゃなく、何度かのドリブルチャンスや、タテへ勝負パスを送り込んだシーンでも、彼のキャパシティー(能力)の高さを感じさせた。だからこそ、この試合でのパフォーマンスでは、不満しか残らないのですよ。

 だからこそ、一試合がおわったときに足が攣(つ)って動けなくなるくらいの運動量をベースに、もっともっと(特にディフェンスで!)積極的にプレーしなければ(リスクチャレンジしていかなければ!)いけない。

 中村俊輔は、来シーズンには日本に戻ってくると言われている。それに合わせてセルティックは、「ポスト俊輔」をドイツのブンデスリーガに探しに行っているという。そりゃ、屈辱じゃないか。とにかく水野晃樹には、中村俊輔の後継者はオレだ!っていう自覚をもってサッカーに取り組んで欲しい筆者なのです。

 とにかく意志だよ、意志。「こうありたい」っていう具体的なイメージを持ち、それを極限まで(誠実に!)追求するストイックな姿勢っちゅうのかな〜〜・・。そんな強い意志をもっていれば、自然と道は見えてくるものなのですよ。ガンバレ、水野晃樹。

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 ところで、拙著「ボールのないところで勝負は決まる」の最新改訂版が出ました。まあ、ロングセラー。それについては「こちら」を参照してください。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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