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2008_「J2」_第43節・・良いサッカーを展開した横浜・・硬かった仙台・・(横浜FCvs仙台, 2-2)・・(2008年11月22日、土曜日)

「なんだ・・どうしてサポートへ行かないんだよ・・」「あっ、勝負に行かないで、逃げパスを出した・・」

 久しぶりの「J2」。あまり観ていないこともあって、レポートすべきかどうか迷ったけれど、横浜FCが魅せた「なかなか興味をそそられるサッカー」と、J1昇格をめぐる競り合い真っ只中の仙台が展開した、心理プレッシャーに押し潰されたような鈍重なサッカーの関係性、また、隣に座る(皆さんお馴染みの!?)イングランド人ジャーナリスト仲間ジェレミー・ウォーカーさんの「静かに熱い観戦姿勢」に触発されたことで、キーボードに向かうことにした次第。

 冒頭の二つの発言は、試合中にジェレミーが(例によって!?)冷静な口調で発したクリティック。対象になったのは、仙台のある選手だったのですが、味方が左サイドから全力でチェイシングしているのに、その選手がボケッと様子見になってしまっていたことと、自分自身が(ドリブル勝負やチャレンジパスなどで)勝負していかなければならない状況なのに、結局は味方への安全パスに「逃げて」しまったアリバイプレーに対する強烈な指摘でした。

 我々の隣には、これまたお馴染みのイングランド人ジャーナリスト仲間マイケル・プラストウさんも座っていたのですが、たまに彼らが発する鋭い指摘は、ズバリと的を射る。イングランドの長い歴史(そして深遠なサッカー文化)に支えられている彼らの、サッカー的な想像力と創造力は、私にとっても素晴らしい刺激なのです。そして互いに意見をぶちかましながら、刺激的な観戦をとことん楽しんでいたという次第。

 「それでどうだい? 全体的なサッカー内容では、明らかに横浜FCの方が凌駕していたと思うけれど・・」というわたしの問いかけに、二人とも「うん、横浜の方が良いサッカーをしていた・・」というニュアンスを異口同音に語っていた。

 とはいっても、特に前半の立ち上がりは「明確な目的に引っ張られる」仙台が、気合いの乗った、危険な臭いのする実効サッカーを仕掛けていったことも確かな事実だった。そこでは、関口訓充と梁勇基がコアになった勝負ドリブルや仕掛けコンビネーション、また平瀬智行の高さといった武器を効果的に活用してチャンスを作り出していた。

 その「勢い」は、もちろん、攻守にわたる「ボールがないところ」でのプレー内容に如実に現れてくる。全力でのチェイス&チェックや、(攻撃では)フルスプリントでスペースへ入り込んでいくフリーランニングなど・・。そんな流れを観ながら、やっぱりモティベーションのバックボーンが違うからな・・などと、仙台の攻勢を自然な流れだと感じていた筆者なのです。

 ただ横浜は、そんな気合いが空回りして(!?)薄くなった仙台の守備ブロックのウラスペースを突いて先制ゴールを奪ってしまうのですよ。左サイドからのシンプルなクロスを、高さのある御給匠がブチかましたヘディングシュートがこぼれたところを根占真五が押し込んだゴール。とにかく見事なカウンターだった。

 そんな「ゲームの流れからすれば、ちょっと意外なゴール」を観ながら、「さあこれから仙台の攻撃の勢いが倍加していくぞ・・」なんて思ったものでした。でも驚いたことに、そこから仙台が「仕掛けの勢いを増幅させる」のではなく、完全に横浜ペースにはまっていったのですよ。

 そこで横浜FCが展開したのは、まさに人とボールが動きつづける優れたダイナミック組織サッカー。それに対して、心理的な悪魔のサイクルに捉まったかのように足が止まり気味になっていく仙台。そんなジリ貧の雰囲気のなかで、冒頭のジェレミーのクリティックが飛び出したというわけです。

 そんな優れたサッカーを魅せつづけた横浜FCだけれど、その、様々な選手タイプの効果的な組み合わせと、だからこそのハイレベルな機能性は、なかなか興味深かった。

 どっしりと落ち着き、足許だけではなく高さもあるポストプレーを魅せつづける御給匠。その周りでダイナミックに動きながら、ドリブル突破やワンツーコンビネーションなど、勇気ある仕掛けを魅せつづける難波宏明(まさに突貫小僧・・私は、彼のことをものすごく気に入りました!)。

 攻守にわたって実効ある汗かきプレーを魅せていた根占真五(ツボのシーンではしっかりと決定的スポットに入り込んでいる・・それがゴールにつながった!)。また、運動量はないけれど、クリエイティブなゲームメイクを魅せつづけた三浦淳宏。

 三浦淳宏だけれど、ボールは常に彼に集まっていたし、三浦淳宏自身も、ゲームメイクに徹するイメージでプレーしていた。彼に対するチームメイトの信頼感は相当なレベルにあるけれど、まあ、その素晴らしく正確なパスとフリーキックを観ていれば、それも当たり前だと感じる。そして、その後方で「前後」をうまくリンクするだけではなく、たまにはリスキーなオーバーラップも仕掛けていく山田卓也。

 そんな様々な選手タイプが、横浜では、うまく噛み合っていると感じられるのです。まあ、三浦淳宏と山田卓也が、うまく「接着剤」になっていたということかな・・。

 あっと・・横浜で忘れてはならないのが、左サイドバックの太田宏介(背番号6)。彼は、勇気ある積極プレーをつづけていたからこそ、その天賦の才が存分に発揮された。自信と確信に支えられたリスクチャレンジ・・。素晴らしかったですよ。

 サッカーの全体的な内容では仙台を凌駕したと言っても過言ではない横浜FC。都並敏史監督は、「選手はよくやってくれた(だから良いサッカーを展開できた!?)・・でも勝ち切れなかった・・詰めの甘さも含め、今期の内容を象徴するようなゲーム展開だったと言えるかもしれない・・」というニュアンスのことを述べていた。フムフム・・

 ただ最後の最後で、仙台の中原貴之が、うまいボールコントロールから、振り向きざまのグラウンダーシュートを決めてしまうのですよ。結局これでドローという結果に収まったわけだけれど、まあ、様々な意味で、偶然と必然が交錯しつづけたゲームだったということですかね。とにかく、なかなか興味深く面白いゲームではありました。

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 ところで、拙著「ボールのないところで勝負は決まる」の最新改訂版が出ました。まあ、ロングセラー。それについては「こちら」を参照してください。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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