トピックス
- 2008_日本代表・・決定力・・岡田監督のメインテーマ・・興梠慎三という希望・・(日本vsUAE、1-1)・・(2008年10月9日、木曜日)
- フ〜〜〜ッ!!! そのとき深〜いため息が出た。
ゲーム終了直前、後半44分に香川真司が放ったフリーのヘディングシュート。まさに、これ以上ないというほど絶対的なシュートチャンスだったけれど、結局、ヘディングされたボールは右ポストを外れてしまった。フ〜〜〜ッ!!
「香川〜〜っ! それを決めなくちゃダメなんだよ!! アンタが奪った先制点はゴッツアンゴールにしか過ぎなかったんだからな!!!」
岡田監督は勝負にこだわる姿勢を前面に押し出している。内容なんか二の次で、勝ちさえすればどんなサッカーでもいい・・なんていうニュアンスじゃないけれど、とにかくチームの指揮官として「勝つこと」に徹底的にこだわるという『スピリチュアルエネルギー』を強烈に放散することには意義があると思います。
だからこそ、前半に作り出したチャンスだけじゃなく、後半の大久保のフリーシュートや終了直前の興梠のヒールシュートといった絶対的なモノも含めたチャンスをしっかりと決めなければならなかった。
たぶん岡田監督はかなり落胆していることでしょう。あれだけ多くの決定的チャンスを作り出しながら、結局は、そのうちの一つしか決めることが出来なかったんだからね。チャンスを確実にゴールへ結びつけるという「意志の高揚」を意図した岡田監督だからこその落胆は推して知るべし・・。
決定力・・。もう何度も書いているように、その唯一のバックボーンは、トレーニングや勝負マッチでの数限りない成功体感の積み重ねというイメージストックから『決定的瞬間』に(爆発的に!?)沸き上がってくる『確信』の深さや強さです。
歴史に残るストライカーたちは、異口同音にこんなことを言う。「そのとき、シュートされたボールがゴールに入っているイメージが見えるんだよ・・でも、そのレベルに至るまでには、気の遠くなるほど長く、単調で、辛い道程が待っているのさ・・」
相手のUAEだけれど、例によって、局面での個人勝負を積み重ねるという「局面プレーのブツ切り」サッカーから脱却できていない。たしかに彼らは、個人的なチカラでは日本と遜色ないけれど、それが「組織的なシナジー(相乗効果)」を生み出していないということです。まあ、組織的な(チーム戦術的な)洗練度では、日本に一日以上の長があるということだね。
その洗練された日本の組織サッカーは、もちろん「守備」からはじまる。選手のクリエイティブな守備意識は、かなり高まっていると感じるし、そこにこそ、プロコーチ岡田武史のウデの本質が見えてくるわけです。
攻撃から守備への切り替えが(忠実で)素早くダイナミック・・また、そこからのチェイス&チェックも素早く効果的・・だからこそ、ボールが動いていく次のポイントでのボール奪取勝負を優位に展開できる・・また、相手のボールの動きに停滞に狙いを定めた協力プレスも効果的に機能しつづける・・そして、だからこそ次の攻撃に勢いが乗る(そのバックボーンは、言うまでもなく、ボールがないところでのプレーの量と質!)・・ってな具合。
そんなだから、日本がゲームを実効支配するのも自然な流れだったし、そのなかでしっかりとチャンスも作り出すなど、日本サッカー全体にとっても価値のある『内容のある』サッカーを展開していたと思うわけです。でも、終わってみたら、UAEの四倍ものシュートを放ちながらの引き分け・・。
この「結果」には、何らかの意味が込められているはず。わたしは、決定力という「魔物」を制するだけの、地道な努力を積み重ねることでしか体得できない『確信の深さや強さ』というポイントにスポットライトを当てたけれど、もちろんそれ以外にも様々な視点があるよね。フムフム・・
岡田監督が意図した戦術テーマだけれど、たぶんそのメインメニューには、『強く、低いトラバース・クロスをニアポストゾーンへ送り込む』・・前述した『素早い攻守の切り替えをベースにした前からの協力プレッシング守備』・・そして『勝ち切るためのセットプレー』・・なんていうのが含まれていたはずです。
低い弾道で強い「トラバース・クロス」については、上手くイメージがシンクロしていたと感じる。
内田篤人と長友佑都の(両サイドハーフとのタテのポジションチェンジを織り交ぜた)オーバーラップからのクロスには明確なイメージが込められていたし、だからこそ、受ける方も、彼らのイメージを効果的に「トレース」することが出来ていた。
協力プレッシング守備については前述したとおりだけれど、もう一つの「勝ち切るためのセットプレー」というテーマでも、しっかりと結果を残していたと思う。中村俊輔の直接フリーキックだけじゃなく、そこでも「ニアポスト勝負」というイメージが、高い次元でシンクロしていたからね。
前半のCKシーン。ニアポストゾーンに送り込まれた中村俊輔のコーナーキックシーンでは、岡崎慎司が「潰れる」ことで、その後方(ゴール前センターゾーン)の味方にボールを流すというイメージが成就しかけたし、その直後の長谷部誠のフリーキックシーンでは、中澤佑二が抜け出した「背後のスペース」に飛び込んだ寺田周平が決定的ヘディングシュートを放つというシーンもあった(僅かに、UAEゴール右ポストを外れてしまった!)。
最後に、選手についても、いくつかコメントしておきます。まず何といっても興梠慎三。将来性あるストライカーです。わたしは、このゲームで彼が素晴らしい存在感を発揮したことが嬉しくて仕方ありませんでした。
前述した香川真司のヘディングシュートも、それを演出したのは、興梠慎三の、ペナルティーエリア内での「粘りのボールキープ」と、その競り合いシーンで集中力を使い果たすことなく、緊張感を最後まで高みで保てていたからこその正確なラストクロスだったのですよ。
それ以外でも、最前線からの守備はもちろんのこと、攻撃でも、局面ボールキープやコンビネーションのコアとして機能したり、味方に使われる役に徹したりなど、抜群の存在感を誇示しつづけていた。とにかく、これで楽しみと学習機会が増えた。
また後半から登場した中村憲剛の攻守にわたる実効プレーも特筆だった。3-4回はあったですかね。彼がコアになった、抜群に危険なコンビネーション。
中盤でのボールキープシーンで、半身で構えて相手を誘い、そのまま(UAE守備ブロック全体の!)逆モーションを取るように「鋭いタテパス」を送り込む・・そして自身は、間髪いれずにパス&全力ダッシュで、次のパスレシーブスーションになる・・そして、そこからトントント〜ンと、人とボールを動かしてUAE守備ブロックの「背後の決定的スペース」を突いてしまう・・。まあ、爽快そのものでした。
後は、稲本潤一。局面勝負の強さ(ボール奪取勝負での強さ)は相変わらずだったし、この試合では、長谷部誠と入れ替わるように何度も最前線の決定的シーンへ飛び出していくなど、攻撃にも積極的だった。
ただし、この日の相手が(組織プレーでは劣る)UAEということで、中盤でのチェイス&チェックなどの「守備の起点プレー」やカバーリングといった「汗かきディフェンス」の実効レベル(それに対する意識の高さ)までは検証できなかった。
相手が強くなり、日本の守備ブロックが組織的に振り回されるようなギリギリの展開で試される「本当の意味での守備の起点プレーの実効度」が、この試合では分からなかったと思うのですよ。
守備と攻撃の「リンクマン的な役割」を担える選手は多いけれど、中盤守備のアンカーとして、チームの重心機能とも言うべき「守備の起点プレー」を十二分にこなすことできるような「汗かきプレイヤー」は、そうはいないからネ。
とにかく、来週15日の勝負マッチ(W杯予選のウズベキスタン戦)へ向けて、様々なニュアンスを内包する「楽しみ」が増えてきた。待ち遠しいね。
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ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。
基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。
いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。
蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。
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