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2008_日本代表・・様々な意味を内包する「プラスの体感」を積み重ねた日本代表・・(日本vsシリア、3-1)・・(2008年11月13日、木曜日)

前から〜〜っ! 前から行け〜〜〜っ!!!

 この試合での日本代表は、そんなゲキがチーム全体からあふれ出てくるような(実際にゲキを飛ばし合ったかどうかは定かじゃないけれど)素晴らしいダイナミックサッカーを魅せつづけてくれました。もちろんそれは、「前からチェイス&チェックを仕掛けていけ〜〜っ!!」っちゅう、積極的なディフェンス姿勢を鼓舞するゲキですよ。

 積極的なチェイス&チェックをベースに、前戦から効果的な「守備の起点」を演出できれば、後方からの「協力ボール奪取プレス」の機能性(それぞれの守備プレーの有機的な連動性!)は格段にアップする。それこそが、本来の協力プレッシングとも言える「サンドウィッチ守備」なのです。

 そして、積極的なボール奪取プロセスがうまく機能すれば、もちろん、次の攻撃でのダイナミズム(チャレンジプレーの量と質≒ボールがないところでの全力ダッシュの量と質)が増幅しつづけるのも道理。積極的な守備(積極的ボール奪取)がうまく機能することと次の攻撃の実効レベル(積極的な仕掛けへの意志の高揚!)は、本当に密接な関係にあるのですよ。特に日本のような「組織プレーを志向するチーム」にとってはね。

 とにかく、攻守にわたる素晴らしい組織プレーを魅せつづけた日本代表が、特に前半、シリアに全くといっていいほどサッカーをさせなかったことは確かな事実でした。

 中東のチームは、やはり、局面での個のプレーを積み重ねていく(そしてボールだけは動く)というのが基本線。まあ、レベルの低い中東チームの場合は、単なる自分勝手な個人プレーのブツ切りサッカー(!?)っちゅうことになってしまうわけだけれど、そんな局面での「ボールコントロール」がうまく機能しなければ、彼らがイメージする「全体的なサッカーの流れ」が停滞してしまうのも道理なのです。そう、この試合で(特に前半)シリアの攻撃がまったく機能しなかったようにね。

 ここでハタと考えた。カタールは、シリアよりも格段に強いのだろうか? いや、決してそんなことはない。

 日本は、昨年のアジアカップでカタールと対戦したわけだけれど(そのときのレポートは『こちら』を参照してください)内容的には日本が圧倒し、しっかりと実のあるチャンスも作り出した。また、ここまでの最終予選でカタールが展開していたサッカー内容も、そんなに誉められたものじゃなかった。

 まあ、新しく代表監督に就任したブルーノ・メツによって、まったく別物チームに生まれ変わる可能性はあるわけだけれどネ。カタールの国内リーグも、新任の代表監督ブルーノ・メツを全面的にバックアップし、日本戦までに、2週間という準備期間を用意したそうな。フムフム・・

 とはいっても、優秀なブルーノが監督に就任したからといって、カタールの(中東の)生活文化とも密着リンクしているサッカーだから、そう簡単には、彼らのプレーイメージを「組織方向へ」転向させられないだろう・・とは思うのだけれど。まあ、ブルーノのウデも含め、興味が尽きないテーマではあるよね。

 あっと、試合。

 この試合での岡田監督は、新しい(若い)選手にチャンスを与えるというテーマ「も」設定していたということだけれど、まさに、その新鮮なチカラ(新鮮な闘うマインド)が抜群のパワーを放散しつづけた。特に、田中達也、長友佑都・・

 もちろん彼らだけじゃないけれど、この二人の攻守にわたる積極的なチャレンジプレーは、冒頭の「前から〜〜っ!」というゲキの体現そのものだったのですよ。言葉ではなく、態度でチームを鼓舞しつづけたということです。

 前半に攻撃ブロックを組んだのは、「小兵カルテット」とも表現できそうな四人組。田中達也、玉田圭司、大久保嘉人、そして岡崎慎司。この上背のない四人が、目まぐるしくポジションをチェンジしつづけながら、最前線からのダイナミックな守備と、人とボールの動きが有機的に連鎖しつづける仕掛けをリードしつづけるのです。そして、高さではなく、人もボールもよく動くグラウンダーコンビネーションで、シリア守備ブロックの「ウラスペース」を次々と攻略していく。爽快でしたネ。

 そこでは、やはり「サイドからの仕掛け」というのがキーワードだった。要は、「小兵カルテット」に、長友佑都と内田篤人という二人のサイドバックが、素晴らしいタテのコンビネーション(ポジションチェンジ)を魅せつづけたということです。

 たしかに「小兵カルテット」は縦横無尽にポジションをチェンジしつづけていたけれど、仕掛け段階に入ったら、確実に誰かがサイドゾーンに張ることで、サイドバックとのタテの仕掛けコンビネーションを演出するのです。

 例によっての、サイドゾーンの攻略をイメージする(少なくとも)二人のタテのコンビネーションプレーというわけです。あれだけ縦横無尽にポジションを変えながらも、要所で、サイドゾーンで数的優位なカタチを作り出してしまうのだから、その(小兵カルテットの)運動量と意識の高さは賞賛に値するよね。まあ、前半の方がよかったけれど・・

 そこでは、大久保嘉人も、しっかりと守備に入っていた。いままでのように、いい加減に相手との間合いを詰める「だけ」ではなく(アリバイ守備ではなく!)汗かきプレーで守備の起点になったり、スライディングでボール奪取勝負を仕掛けていったりと、実効レベルも高かった。だからこそ、長友佑都も、後ろ髪を引かれることなく最終勝負を仕掛けていけた。

 でもサ、逆に、大久保嘉人に期待されている攻撃での勝負プレーの影が薄くなってしまったのも事実だったね。要は、まだまだ全体的な運動量が足りないということなんだけれど、まあ、この試合で魅せたような、攻守にわたって積極的で実効ある「汗かきプレー」を積み重ねていけば、きっと、良いカタチで個人勝負を仕掛けていけるような(自らシュートを打てるような)シーンも多くなってくるでしょう。要は、攻守にわたるボールがないところでの動き(アクション)の量と質が高揚することで、より良いカタチでボールをもつことが出来るようになるということです。

 そして、「リンクマン」として抜群のゲームメイクセンスを魅せつづけてくれた牛若丸。二点目ゴールシーンでの玉田圭司へのラストパスは秀逸だったね。そこには大久保嘉人もいたわけだけれど、そのシーンでは、大久保がオトリになっていた。

 それだけじゃなく、牛若丸は、インテリジェンスあふれる「スペースマネージメント」を魅せてくれた。スパッ、スバッという切れ味鋭いトラップ&ボールコントロールから、シリア守備ブロックの「薄いゾーン」を、どんどんと、そして素早くスムーズに突いていくのですよ。そのスペースには、例外なく味方が押し上げている。ケンゴに対する信頼を感じます。

 ということで、様々な意味を内包する「プラスの体感」を積み重ねられたシリア戦。もちろん勝負マッチとなったらガラッと雰囲気は変わるだろうけれど、この積極マインドを高みで安定させられることが大事だよね。例えば、この試合の(特に前半の)ベストシーンを短く編集したビデオを、カタール戦までの間、繰り返し、合宿所のモニターで流しつづけるとかネ。そう、イメージトレーニングとして・・。それを海外組も横目でチラチラと見るだろうしね。それが程よい緊張感をかもし出す。

 とにかく、カタール戦に臨む準備プロセスでは、心理マネージメントほど重要なアイテムはないからね。

 ところで、拙著「ボールのないところで勝負は決まる」の最新改訂版が出ました。まあ、ロングセラー。それについては「こちら」を参照してください。 

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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