トピックス
- 2008_日本代表・・でも、本当に勝ってよかった・・(日本代表vsオマーン、3-0)・・(2008年6月2日、月曜日)
- 「アウェーでは、このようなイージーなゲームになるとは思わない・・」
「エッ!?」。あっ、そうか・・このゲームは、結果としてイージーに「なった」というニュアンスね・・あ〜ビックリした・・何せ、ゲーム内容は決してイージーなものじゃなかったからね・・。
岡田武史監督の記者会見では、冒頭のコメントが締めになったのですよ。それを聞いたときは、一瞬ビックリした。でも、ちょっと考えて、そうネ・・と納得した次第。
たしかに、セットプレーからの先制ゴール、中村俊輔とトゥーリオの夢の饗宴による(最後は大久保のフリーシュートで挙げた)追加ゴール、そして後半立ち上がりの松井大輔と中村俊輔による「流れのなかからの」スーパーゴールと、チャンスをしっかりとモノにできたことで、結果として非常にイージーな(楽な)ゲームになったことは確かな事実でした。
でも実際の内容は「イージー」という表現とは掛け離れていた。流れのなかで相手守備ブロックを崩してチャンスを作り出すという視点では、課題満載だったのですよ。そう、(相手守備ブロックのウラのゾーンも含む)スペースを効果的に活用したシュートチャンスの演出。タラレバは禁句だけれど、もし、あの「千載一遇ゴール」がなかったら・・もし、0-0でゲームが進み、オマーンの自信レベルの深まりに相応して彼らの守備ブロックがより堅牢に機能していったら・・。ジーコ時代のゲーム展開が脳裏をよぎる。
要は、組織的なプレー内容では、まだまだ課題が山積みだったということです。人とボールの動きの「量と質」が減退気味で、それらがうまく連動しないから(相手守備のウラの)スペースを突いていけない。
それでも、大久保嘉人が抜けて香川真司が入ったあたりから(また巻誠一郎が入ったあたりから)人とボールの動きが、より広く、深く、速く、変化に富んでいったと感じました。
またそんな組織プレー内容の高揚にともなって、松井大輔のプレー内容も(特にボールがないところでの動きや守備も含めて)大きく活性化したとも感じました。その、チームとしての組織プレー内容の高揚は(大久保という前戦のフタが取れ、より自由にプレーできるようになったことで!?)松井のプレーが活性化したからなのかもしれない。まあ・・錯綜するサッカーだから、因果関係を明確にするのは難しいよね。
とにかく、大久保嘉人のプレー内容には「もちろん」不満ばかりがつのっていたし、香川真司が出てくるまでの松井大輔のプレーにも、満足感は薄かったのですよ。それはもちろん、守備でのプレー内容と、ボールがないところでの動きの量と質に対するフラストレーションでした。
わたしは、松井大輔を「シャドー・ストライカー」的に使うことには賛成です。でも、大久保嘉人と松井大輔の二人を「併用」することには、まったくアグリーできない。才能に恵まれた「諸刃の剣プレイヤー」が二人もいると、確実に、組織プレーの機能性が減退するモノなのですよ。そりゃ、そうだ。二人もいちゃ、守備での組織プレーが減退したり、攻撃でのボールがないところでの動き(アクション)が有機的に連鎖しなくなったりするのも当然の帰結だからね。
ここで、ちょっと攻撃における「ボールがないところの動き」について、簡単にまとめてみましょうか。下記の「動き」すべてにおいて効果的なパフォーマンスを魅せなければ(特に日本チームの場合は)決して、シュートを打つという攻撃の目的と、相手からボールを奪い返すという守備の目的を達成することに対する『本当の意味での貢献度』を上げられるはずがないのですよ。
ということで、ボールがないところでの動き・・。
その「スター」は、何といっても決定的な「ウラ取りパスレシーブの動き」。その動きについては、大久保嘉人も松井大輔も、しっかりと狙っていた。でも「それ」は、ボールがないところでの動としては、もっとも「楽」なモノです。そりゃ、そうだ。何せ、走ったところにパスが来れば、そまま「自分」がシュートまで行けるんだからネ。目先の目的を考えれば、モティベーションが高いのも道理なのです。
でもサッカーにおける(ボールがないところでの)効果的な動きは、そんな「目立つ」モノばかりじゃないのですよ。例えば、味方にスペースを作るような動き。また、鋭く前後に動くことで相手マークを外してタテパスを受ける動き。そこからシンプルにボールを動かすことで、全体的な組織プレーの変化を演出できる。もちろん自身は、常にパス&ムーブで、次のスペースでのパスレシーブを意識する。
そんな「クリエイティブな汗かきの動き」を積み重ねるからこそ、組織プレーを効果的に機能させられるのです。それは、組み立てプロセスにおける「味方に使われる動き」とでも表現できますかネ。互いに「使い・使われるメカニズム」。それこそが「優れた組織サッカー」の絶対的な基盤なのです。
要は、大久保嘉人にしても松井大輔にしても(ウラのスペースで)パスをもらうため『だけ』に動くという印象が強すぎるのです。それに対して、もっとも大事な「クリエイティブなムダ走り」に対する意識レベルは低い!?
とにかく彼らの場合、味方にスペースを作り出したり、自分が「駒」になって「使われる」という発想があまりにも希薄。とにかく、自分がスペースでボールをもらいたい・・自分の足許にボールをもらいたい・・そんな発想が強すぎると思うのです。もっと、組織プレーの何たるかを強く意識しなければ、結局はチームのお荷物になってしまうのがオチだと思うのです。
もちろん彼らが、何人の相手に取り囲まれても全く動じず、完璧なタメ(ボールキープ)から、余裕をもって何人も抜き去ってしまう(置き去りにしてしまう)ようなスーパードリブラーだったらハナシは別。そうしたら、中村俊輔にしても、彼らのために走り回らなければならなくなるだろうね・・。
ということで、中村俊輔。本当に素晴らしかったね。トゥーリオへのスーパーロング・ラストパスや、切り返しからのスーパー右足シュートだけじゃなく、(前述した)ボールがないところでのクリエイティブな汗かきアクションや、ものすごく実効レベルの高いディフェンスも特筆モノだった(何度も、粘りのタックルからボールを奪い返してしまった!!)。
そんな組織(汗かき)プレーを積み重ねているからこそ、決定的パスを効果的に繰り出せる・・より有利な状況でドリブル勝負を仕掛けていける・・より余裕をもったフェイント&カットからシュート(中距離シュート)まで持ち込める・・等々。
中村俊輔は、本当に素晴らしい「組織プレーのイメージリーダー」へと成長した。そんな中村俊輔について、岡田武史監督が、こんな興味深いコメントをした。「俊輔とヤット(遠藤保仁)を横に並べると(二人の間でパス交換を繰り返してしまうことで!?)うまくタテパスが出てこない・・」
今日の記者会見では、その岡田武史監督のコメントが、もっとも興味深かったし、わたし自身も「ナルホド・・それが岡田監督の判断か・・」と、かなり納得していた。まあ、彼らのことだから、話し合い、イメージシンクロのトレーニングを積み重ねることで、問題を解決できるとは思うけれど・・。その発言に、ちょっと考えさせられた湯浅でした。
次のオマーン戦とタイ戦は、暑さという過酷な自然条件とも闘わなければなりません。もちろん岡田武史監督には、暑さと闘うのではなく、それを「味方」にしてしまうような戦術的アイデアを期待しましょう。
エネルギーのロスを最小に抑えるようなクレバーな人とボールの動き、中距離シュート、セットプレーや意図的な放り込み(アーリークロス)などなど!? さて・・
その他にも、中盤の底(アンカー)に徹した遠藤保仁、前に「フタが二枚」もいることでタテのポジションチェンジがままならなかった(フラストレーションをためていた!?)長谷部誠、どうもうまく機能しなかった(ドリブル勝負を仕掛けていったり、ココゾの爆発的な抜け出しフリーランニングを繰り出せなかった)玉田圭司、ワントップの機能性タイプ(巻誠一郎タイプ・・ジュビロの前田タイプ・・等々)、また中盤の底(アンカー役)候補の鈴木啓太と今野泰幸の相手に応じた(!?)使い方、牛若丸・中村憲剛の価値とその使い方などなど、テーマは多いけれど、明日はタイ&オマーンへの移動日だし、出発の前にビジネスミーティングもあるので、今日はここまでにします。ということで、次はオマーンから・・。
最後に・・。お世話になった長沼健さんのご冥福を祈り、心から合掌・・。本当にありがとうございました。そしてお疲れ様でした。
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ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。
基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。
いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。
蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。
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