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2008_なでしこジャパン(東アジア選手権)・・素晴らしいサッカーで「日本」の存在感をアップしてくれた「なでしこ」に乾杯!!・・(日本vs中国、3-0)・・(2008年2月24日、日曜日)

今回の「なでしこ」にはビックリさせられました。何せ、第一ゲームの北朝鮮で、まさにビックリのラッキー勝利を収めてからは(ここでのラッキーという表現は微妙だけれど・・)まさにビックリのスーパーサッカーで相手(韓国と中国)を完璧に圧倒して優勝を勝ち取ってしまったんだからね。

 わたしは、彼女たちを常に追いかけているわけじゃないから、「ビックリ」なんていう表現を使ったら、またまた認識不足という「そしり」を免れられないかもしれないけれど、少なくとも、トーナメントを通してチームが着実に発展したことだけは確かな事実だと思いますよ。

 発展・・。ゲーム後の記者会見で、世界との「最後の僅差」を縮めていくために・・というテーマについて、佐々木監督がこんなことを言っていた。「守備では、連動性をテーマにリスクなくボールを奪い返すというイメージ・・攻撃でも、優れた個人勝負を味方がサポートしていくという連動性がテーマ・・日本人は有酸素運動能力は高い(要は持久力がある)・・また、敏捷性にも優れている・・それらの特性を、もっともっと伸ばしていくのがオリンピックまでの課題ということです・・」

 佐々木監督が言う「発展」が志向するベクトルは、やはり、絶対的な運動量を増やすことで、攻守にわたって数的に優位なカタチを作りつづけ、組織プレーでの連動性をアップさせていく・・というところにある。まあ、佐々木監督が何度も繰り返したキーワード「攻守にわたる連動性」の意味を要約すれば、そういうことになるでしょう。それは、基本的に、男女に共通するテーマだということです。

 世界トップネーションとのフィジカルの差を埋めることは難しい(テクニックやタクティックは着実に埋まってきている)・・だからこそ、運動量を増やすことで組織プレーの内容をより充実させていかなければならない・・そのためには人数が必要・・だからこそ、運動量を上げなければならない・・そして究極は、相手とのフィジカルコンタクト無しでシュートまで至るというイメージ・・ってな具合ですかね。

 とにかく、韓国戦と今日の中国戦で魅せた「攻守にわたる連動サッカー」は、素晴らしいの一言に尽きます。中国人記者も、「日本は、個人的にだけではなく、チームとしても中国を圧倒していた・・その差は、何からくるのか・・」なんていう質問をしていたっけ。佐々木監督は、外交辞令的にマイルドに答えをしていたけれど、内心では、「そう・・おれ達は、あなた方の代表チームを圧倒しましたよ・・この時点では、差は開いているというのがフェアな見方だろうね・・」なんてことを思っていたりして・・。

 そんな素晴らしい「連動サッカー」の中心的な存在だったのは、やはり何といっても、大会MVPに輝いた澤穂希でしょう。

 「彼女は、ボールを奪い返すのがうまいじゃないですか・・もちろん総合的な能力は折り紙付きですからね、ボールを奪い返したところから攻撃がはじまることを考えれば、それほどチームにとって有利なことはないわけですよ・・」。佐々木監督に、少し下がり気味にプレーするようになった澤穂希の役割イメージについて聞いたとき、真っ先に、そんな答えが返ってきました。

 要は、少し後方からプレーをスタートする方が、より彼女のチカラを引き出せる(解放させられる)という判断だったわけですが、その考え方がピタリとツボにはまったということなのかもしれない。今大会での澤穂希の活躍ぶりには、まさに目を見張らされましたからね。佐々木監督が言うように、彼女が展開する、効果的な「ボール狩り」のバックには天性の勘が働いていると感じますよ。相手のパスレシーバーへの「寄せ」や、パスコースの読み、そしてボール奪取勝負でのアタックの上手さなどなど、何度「フム〜〜」と唸らせられたことか。そして「そこ」からはじまる攻撃の(仕掛け展開の)危険なこと。ナルホドね。

 それ以外でも、様々な「連動イメージ」がうまく噛み合っていましたよ。まず何といっても、両サイドで展開されつづけた「タテのポジションチェンジ」。左サイドでは、柳田と宮間。右サイドでは、近賀と(大会得点王に輝いた)大野。サイドバックがオーバーラップすれば、サイドハーフがスペースを埋めて、次の守備に備えながら押し上げる・・といった具合。

 サイドバックの柳田と近賀がオーバーラップしていくときの勢いは尋常じゃありませんからね。彼女たちが(次の守備について)相互に深く信頼し合っていることを感じます。

 センターゾーンでは、もちろん澤穂希を中心に、トップの二人(永里と荒川)とのトライアングル(連動)コンビネーションが光り輝きまくる。このツートップは、役割イメージのバランスという意味でも傑出していたと思います。抜群のポストプレーを魅せつづける永里と(彼女は、ここぞのドリブルシュートや相手を抑えながらの競り合いシュートでも抜群の存在感を発揮していた!!)言わずと知れたトップドリブラーの荒川。良かったですよ、この三人で機能していたトライアングル・コンビネーション。

 もちろん、このセンターゾーンのトライアングルと、タテのポジションチェンジを繰り返すサイドのコンビが、状況に応じて柔軟に「連動コンビネーション」を繰り出していったことは言うまでもありません。もちろんそれは、常に、次の守備に備えた「ポジショニング・バランス」を前提にしたコンビネーション。両サイドだけではなく、守備的ハーフの坂口が上がれば、澤穂希がしっかりと後方のバックアップに入ったりする。

 縦横無尽のポジションチェンジをつづけても、次の守備において、ポジショニングバランスや人数バランスが「大きく」崩れることがない。その絶対的パックボーンは、言わずと知れた「優れた守備意識」なのです。それこそが、「連動」というキーワードのもっとも大事な要素ということです。

 日本のサッカー人の一人として、「なでしこ」がインターナショナルレベルで魅せた素晴らしい活躍に対して、心から感謝しています。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「五刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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