トピックス
- 2009_ACL決勝・・実質的な勝負の流れを逆流させた浦項の(韓国の)強烈な意志・・(浦項スティーラーズvsアルイテハド, 2-1)・・(2009年11月7日、土曜日)
- 極限まで張り詰めたといった感じの高い緊張感(テンション)・・。そんな雰囲気に支配された、本当にハイレベルな勝負マッチでした。わたしは、最後の最後まで、さまざまなテーマを脳裏に描きながら、とことん楽しんでいました。こりゃ、観に来た方々は、とても得したネ。
ゲームがはじまる前は、コラムをアップするかどうかは内容によるよな・・なんて(不遜なことを!?)考えていたけれど、ゲームがはじまった次の瞬間には、ガップリ四つに組んだエキサイティングな仕掛け合いに、完全にはまり込んでいました。いや、ホント、面白かった。
そこには本当にいろいろなテーマがあったけれど、まず何といっても、韓国チームの「素晴らしい闘う意志」に対して、心からのレスペクト(敬意)を表したいと思います。
それは、アルイテハドの絶対的エースであるヌールが、「2-1」と一点差に迫る「追いかけゴール」を決めてからの残り20分間に、浦項スティーラーズが魅せつづけた闘う姿勢(意志の強さ)のことです。
もちろんアルイテハドは、全身全霊で攻め上がろうとする。ただ、浦項スティーラーズが身体の奥底から絞り出す攻守にわたる戦闘パワーが、それを凌駕し、結局は、アルイテハド選手の攻撃の勢いを呑み込んでしまったのですよ。
その「強烈な意志」は、もちろん、守備でのチェイス&チェック、攻撃でのボールがないところでの人の動き(押し上げサポートの量と質)などに如実に現れてくる。
ホントに、素晴らしいの一言でした。もちろん、強烈な意志が爆発するわけだから、(特に守備では)多くの場面でファールになってしまうけれど、それでも、スティーラーズ選手の闘う意志は、落ち着くどころか、そんな一つひとつの激しい競り合シーンを糧に、際限なく高揚しつづけていたと感じました。ちょっと鳥肌モノだった。
そんな浦項スティーラーズ選手の強烈な意志の爆発に、アルイテハドの前へ仕掛けていこうとする積極プレー姿勢がどんどん萎(な)えていったと感じられた。わたしは、伝統的な韓国チームのアグレッシブな闘う意志を肌で感じ、例によって、それこそが日本サッカーに欠けているモノだと(韓国サッカーを真摯に見習うべきだと)再認識していた次第です。
そう・・、それこそが、U20とかU17の韓国ナショナルチームが魅せつづける(世界のエキスパートからも高く評価される・・実際に、何人かのヨーロッパの友人とも韓国ユースの活躍についてハナシをした!)素晴らしい積極サッカーのバックボーンなのですよ。サッカーの本質は、究極の心理ゲームだからネ。このままでは、日本サッカーは、本当に、取り返しがつかなくなるまでの「後れ」を取ってしまうかもしれない・・。ちょっと心配になった。
あっと・・またまたハナシが逸れそうになった。とにかく、浦項スティーラーズに対し、心からの拍手をおくっていた筆者だったということが言いたかった。
ということで、その他のテーマに入っていくわけです・・
まず、アルイテハドの攻めだけれど、前半と後半の「立ち上がり1分間」だけは、ボールが、ものすごくダイナミックな動きを魅せ(人もスペースへ動くことで、素早く広いダイレクトパスが連続する!)浦項スティーラーズ守備ブロックの視線と意識を完全に機能不全に陥れた。
特に前半の立ち上がり数十秒に魅せたアルイテハドの「ダイレクト・コンビネーション」は、浦項スティーラーズ守備だけではなく、観ている我々の意識と視線も「フリーズ」させたのです。そして最後は、決定的シュートまでブチかました。ホントにビックリさせられた。でも、そこからは・・
そう、時間の経過とともに、アルイテハドの攻めが、我々が普段イメージしている「中東のそれ」に落ち着いていったのですよ。しっかり守ってカウンターを狙うというチーム戦術は基本だけれど、その他の遅攻シーンでは、足許パスをつないで(ちょっとフリーになった選手が)個人勝負を仕掛けていくというやり方・・。だから、浦項スティーラーズ守備ブロックも、完璧に「次のパス」を読んで、効率的に(協力した)ボール奪取勝負を仕掛けられる。
それを観ながら、やはりアルイテハドの(中東のサッカー)は変わらないな・・なんて思っていたのだけれど、それでも、個の勝負を基盤にしたカウンターは、やはり、とても危険だよね。
彼らが繰り出す個人勝負プレーには、並外れたスピードやパワーなど、やはり特別なチカラが備わっていると感じます。「あの」強烈な意志に支えられた韓国選手の粘りのマーク&アタックをモノともせずに、ガンガンとドリブルで突き進み、ラストスルーパスを出したり、そのまま危険なドリブル中距離シュートをブチかましたりしちゃうんだからね。
そんなアルイテハドに対し、「組織と個のバランス」という視点では、やはり浦項スティーラーズに一日以上の長がある。要は、浦項スティーラーズの方が、しっかりと「スペースを活用しよう」というイメージで攻撃を展開しているということです。人とボールをしっかりと動かしつづける組織プレー・・。だからこそ、デニウソンやノ・ビョンジュンといった個の才能も、良いカタチでドリブル勝負を仕掛けていける。
でもネ・・、これも中東チームの(特にサウジアラビアの)特長だけれど、とにかく守備が、とてつもなく強いのですよ。組織的な追い込みからのインターセプト・・っていう(互いのイメージが有機的に連鎖しつづける!?)スマートな組織プレーではなく、限りなく「局面勝負の力強さ」を前面に押しだすディフェンス(ボール奪取勝負)。フ〜〜・・
ということで、両チームともに、魅力的な仕掛けプロセスは魅せるけれど、それをうまくゴールに結びつけられない・・という展開がつづくのです。でも、そのプロセスは、勝利への渇望がビンビンと感じられる強烈な意志が乗っているし、何度も(両チームともに・・交替に)決定的なチャンスを作り出すから、ゲーム展開自体は本当に魅力的です。
そんな緊迫した展開のなかから、唐突にゴールが生み出されます。浦項スティーラーズの先制ゴールと追加ゴール。二つとも、セットプレーからでした。
そしてその後、アルイテハドの前への意志が加速していき(要は、より人数を掛けていったということ)流れのなかから追いかけゴールを奪うのです。誰もが、「これは、まだまだどうなるか分からない・・」と思ったはず。
でも私は、浦項スティーラーズ守備の「強烈な意志」を体感しながら、こんなことを思っていた。たしかにアルイテハドの前への勢いは倍増したけれど、(しっかり守って必殺カウンターを繰り出すというサッカーに慣れ、それで大きな成果を成し遂げてきた!?)彼らは、自分たちが主体になって攻め込むというやり方は、そんなに得意じゃないよな・・もっとガンガンとアーリークロスを放り込んだり、どんどん勝負ドリブルで突っ掛けていけばいいのに、相変わらず足許パスをつなごうというイメージの方が目立っている・・それじゃ、浦項スティーラーズ守備ブロックを「バタつかせる」ことはできない・・
そして案の定、浦項スティーラーズの強烈な意志に、アルイテハドの前への勢いが殺がれていったというわけです。
たしかに、全体的なゲームの流れからすれば、試合項者のアルイテハドが、僅かにアドバンテージを握っていると感じられる時間帯が長かったし、実際、アルイテハドのカウンターやセットプレーが成就しそうになったシーンもあった。
でも結局は、浦項スティーラーズが魅せた強烈な(そして粘りの)意志が、この試合では、アルイテハドに優ったし、前述したように、最後の時間帯での浦項スティーラーズは、「変に受け身」になることはなかった。
わたしは、試合の(実質的な勝負の)流れを「逆流」させ、立派な勝利をもぎ取った(アジアの頂点に立った)浦項スティーラーズに対し、本当に、心からの拍手を惜しみませんでした。おめでとう、浦項スティーラーズ・・
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ところで、拙著「ボールのないところで勝負は決まる」の最新改訂版が出ました。まあ、ロングセラー。それについては「こちら」を参照してください。
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ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。
基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。
いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。
蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。
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