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2009_浦和レッズ・・今シーズンの「希望」が見えはじめている!?・・(2009年2月15日、日曜日)

どうしようか迷ったのですが、わたし自身の学習機会として気付いたテーマがあったから、例によって、学習メモとしてレポートしておくことにしました。テーマは、09年シーズンへ向けた浦和レッズの希望・・

 今シーズンも、わたしは浦和レッズを中心に「J」を観戦するつもりです。別に、レッズファンというわけじゃなく(斜に構えているわけでもなく)純粋にレッズの発展プロセスに興味があるのです。

 そこには、「サッカーに対して」興味がある熱心なサポーターに支えられながらビッグクラブに成長しているというバックボーンもあるし(浦和では、広く深いサッカー文化が、社会生活のなかでの異文化接点としても機能している!?)、Jリーグ発足当時から「ドイツの香り」を放っていたのはレッズだけだったということもある(いまでも「ドイツ系」は彼らだけ・・)。

 そんな現象に内包されているかもしれないサッカー的なコノテーション(言外に含蓄される意味合い)に対しては、個人的なモティベーションもあって殊のほか興味を惹かれるのです(学習テーマの積極的な模索!?)。

 そしてもう一つ。「一つのクラブをベースに観戦する」ことで、ほとんど全てのクラブを網羅できるという理由もある。とはいっても、遠くのアウェーゲームまでは、よっぽどのことがない限り出掛けていかないけれどネ・・あははっ・・。

 さて今シーズンの浦和レッズ。ご存じの通り、レギュラークラスでは、永井雄一郎と相馬崇人がチームを去り、それを補うような(メディア的に!)目立った大型補強はありませんでした。「自前」のレッズユース(原口元気も入れれば5人の新人)、レンタルしていた赤星貴文のカムバック、そして大卒の野田紘史・・。

 いくら優秀なフォルカー・フィンケでも、ちょいと厳しいかもしれないな・・なんて(軽率に!?)思った半面、まあチーム戦術的な「リセットの機会」という視点じゃ、「表面的な脅威は本物の機会にイコール・・」なんていう普遍的概念の正しさを証明する良い機会かもしれない・・なんていうポジティブな思いも交錯していた。

 要は、フォルカー・フィンケのお手並み拝見といったスタンスということですかね。もちろん、斜に構えているわけじゃないですよ。

 フォルカー・フィンケは、非常に優秀なプロコーチのハズです。わたし自身は、立ち話程度の接触はあるけれど、まあ、インテリジェンスとかパーソナリティーなど、個人的にはほとんど知らないに等しいネ。とはいっても、ドイツでは、特に「プロコーチも含む現場に関わる連中」からポジティブ評価を獲得していることは特筆に値する。「あの」ものすごく厳しい競争社会の猛者連中から認められたパーソナリティー(≒コーチング能力)だからね。とにかく(日本という)異文化のマネージメント能力も含め、すべてが「これから」ということです。

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 また前置きが長くなった。さてレポートの本題。今シーズンについては、まだまったくトレーニングを観ていなかったのですが、ある方から誘われ、また時間的な都合もついたことで、昨日と今日、レッズの大原グラウンドで行われたトレーニングマッチを観戦してきたのですよ。昨日は、中央大学、今日は「J2」の栃木SCとのトレーニングマッチ。なかなか面白かったですよ。いや・・ホントに・・

 あまり詳しく書くのではなく、とにかく簡単にテーマをまとめられればと思ってはいるのだけれど・・。要は、フォルカー・フィンケの心理マネージメントと、それに刺激を受けた(!?)選手たちの、主体的な戦術イメージ構築トレーニング・・

 この両ゲームでのレッズは、完璧にセットされた(メンバーが分けられ固定された!)二つのチームが登場しました。

 一つは、エジミウソン、ポンテ、山田暢久、細貝萌、鈴木啓太、平川忠亮といった昨シーズンの主力クラスに数人の新人がミックスされたチーム(ここでは仮にAチームとしましょう)。

 もう一つが、永田拓也、原口元気、加藤順大、橋本真人、林勇介、高橋峻希、山田直輝といった新人に、阿部勇樹、高原直泰、堀之内聖、そしてエスクデロといった、昨シーズンの主力&準主力がミックスされたチーム(とりあえずBチーム)。

 この二試合を通じてグラウンド上で起きたことは、ホントに興味深かったですよ。全体的な「現象の流れと、そのコノテーション」はこんな感じでした。

 昨日(2月14日、土曜日)の中央大学とのトレーニングマッチの前半・・先発はAチームだけれど、まったく気合いが乗らない・・ものすごい運動量とダイナミズム、そして粘り強さで協力プレスを掛けつづける中央大学に完全にイニシアチブを握られつづけるAチーム・・ボールを持っても、ボールがないところでの(パスレシーブの)動きが、まったくといっていいほど連動しないから(足許パスばかりだから!)相手の効果的な協力プレスに簡単にボールを失ってしまう・・

 ・・そんなジリ貧の雰囲気のなかで、自分たちが展開する低級サッカーに腹を立てた(!?)ポンテとか細貝萌が、無理なアタックを仕掛けてファールを取られたりする・・観る方も、やっている方も、フラストレーションのオンパレードといったところ・・

 運動量が圧倒的に足りないから、中盤のダイナミズムがまったく高揚していかない・・いつも書いているように、個のチカラの差を効果的に表現していくためには、忠実な汗かきの運動量、また闘う意志で、少なくとも相手と同等以上でなければならないのですよ・・それなのに、相手が学生ということで(!?)完全に甘く見たプレー態度・・これじゃ、中央大学に凌駕されるのも道理・・

 ・・一度でも、そんな怠惰なマインドでゲームにはいったら、途中から修正するのは至難のワザだよ・・本物のリーダーがいないし、リーダー的な役割も期待されるポンテが一番「サボッ」ているんだからネ・・ポンテは、自分のプレーが足りないことを良く理解している・・だからこそ、理不尽にアタマにきて味方に文句を言って罵倒したり、相手に対してアンフェアにファールを仕掛けていったりするんだよ・・フ〜〜・・

 ・・そんな低級サッカーを観て、正直、こりゃ大変なことになったと思った・・もちろん、まだ一ヶ月ちかく時間があるとはいっても、選手たちの「攻守にわたる主体的な汗かきアクション」は、昨シーズンも大きな課題だったわけだからね・・そんなプレーイメージの深層にはびこった「悪癖」を修正するのは大変だ・・なんて思ったわけです・・

 ・・でも、ハーフタイムに、フォルカー・フィンケが、身振り手振りで「派手な指示」を飛ばしている光景を目にした同僚ジャーナリストの方が、「あっ・・フィンケ監督が、あのような大仰なアクションで指示をしているシーンは初めてですよ・・」なんて言った・・それを聞いたとき、これまではまだ『観察』に徹していた(!?)フォルカー・フィンケも、その、あまりにも低級なサッカーに「これはイカンッ!」ということになった違いないと思った・・そりゃ、そうだ・・サッカーではイメージが命・・そのイメージの根底までも揺るがせかねないネガティブなサッカー内容を「そのまま」にしたら、後のリカバリーにも膨大なエネルギーが必要になってくるからネ・・

 ・・そして後半のAチームが覚醒しはじめる・・攻守にわたる運動量が格段に高揚したことで、効果的にボールを奪い返せるようになっただけではなく、その後の攻撃でも、人とボールが動く組織プレーにエネルギーが注入されるようになったのです・・

 ・・そして前半の怠慢サッカーが原因で(!?)眠気に襲われはじめていた湯浅も、「それだよ、それ!」なんて急に目が覚めた・・前半のサッカー内容だったら明日(要は今日)は絶対に観に来ないゾ!なんて思っていたからね・・と、そのときでした・・フォルカー・フィンケが、審判に対して「チェンジッ!」と大声でアピールし、「全とっかえ」で、Bチームをグラウンドへ送り込んだのですよ・・

 ・・そして、そのBチームが、素晴らしいダイナミックサッカーを展開し、中央大学を圧倒してしまう・・たしかにゴールは奪えなかったけれど、内容的には、後半のAチームをも完全に凌ぐサッカーだった・・

 ・・そんなBチームの素晴らしいサッカーを横目で見ていたに違いない、クールダウン中のAチームの心境は??・・そう、自ら招いたフラストレーション・・そりゃ、自業自得だよ・・どんな状況でも、全力で、攻守にわたって仕事を探しつづけることで観ている方に感動を与えるのがプロとしての使命なんだよ・・それが、アナタ任せの低級サッカーしか出来なかったんだから「横目のフラストレーション」は当然の報いなのです・・いくら後半は持ち直したからといって、そんな怠慢なプレー姿勢は、プロとして許されるモノじゃないわけだからね・・

 ・・とにかく、Bチームの爽快で高質なサッカーは、Aチームにとって、それは、それは強烈な「刺激」になったことでしょう・・

 ・・そして今日(2月15日の日曜日)・・栃木SCに対する先発メンバーは、昨日のBチームということになりました・・アッと、一人だけ・・闘莉王だけが昨日のメンバーから入れ替わって出場した・・彼らが栃木SCを凌駕し、昨日のウップンを晴らすかのように、素晴らしいゴールを二本も決めたことは言うまでもない・・素晴らしい阿部勇樹のヘディングシュート・・そして原口元気のスーパードリブルシュート!!・・

 そして後半の15分・・昨日のゲームとまったく同じパターンで、Aチームが「全とっかえ」で登場し、やっと、攻守にわたって主体的なダイナミックプレーを展開する・・そりゃ、当たり前だよね・・

 私は、両ゲームの「現象の流れ」について、そんなストーリーを脳裏に描いていました。フォルカー・フィンケは「まだ」戦術的なことは言っていない・・と聞いてはいるのですが、だからといって、組織プレーの基本中の基本も「できない・・」「やらない・・」のでは、まったく言い訳は立たない。

 多分フォルカー・フィンケは、昨日の中央大学とのゲーム前には、まったく心理マネージメント的なことはやらなかったんだろうね。そして選手の「戦術的な基本イメージ」や「セルフ・モティベーション能力」などを観察した!? 彼には見えていたんでしょ。Aチームが、相手を甘く見た「怠慢サッカー」に陥ってしまうことを・・。だからこそBチームを、フレッシュな(フォルカー・フィンケが大きな期待を掛ける!?)若手で構成した・・。もし本当にそうだとしたら、素晴らしい「心理マネージメント・スクリプト・ライター」だよね。

 そんなフォルカー・フィンケの「期待」は、かなり顕在化してきているように感じますよ。

 特に、闘莉王にも認められた(!?)山田直輝、素晴らしい個人勝負能力を魅せつけた原口元気、右サイドを駆け上がる突貫小僧(!?)高橋峻希・・。あははっ、「ナオキ、ゲンキ、シュンキ」だってさ・・。あっと、守備で安定した存在感を発揮した「ミズキ」もいた(濱田水輝)。

 それ以外にも、Aチームで出場した新人、阪南大学を卒業予定の野田紘史、これまたレッズユース出身の西澤代志也など、なかなか良かったですよ。

 これからレッズは、「サテライト・チーム」についても、トップのコーチ陣が交替で受け持つことを決めたらしい(フォルカー・フィンケの決定!?)。まあ、今シーズンのレッズの「チーム作りのベクトル」を考えれば、当たり前の措置だよね。

 ということで、今シーズンのレッズに「具体的な希望」が何となく見えはじめたことにエネルギーをもらい、一気に書いてしまった次第。やっぱり、若さのエネルギーはスゴイ。日本の体質じゃ、そのエネルギーを潰してしまうことが多いけれど、フォルカー・フィンケには、彼らの正しい発展サポートを期待しますよ。

 そして最後に、サッカーイメージの問題児、天才セルヒオ・エスクデロ。良くなっている。ホントに・・。Bチームでの出場だったけれど、彼の口から「前から行け〜〜っ!!!」なんていう、耳を疑うような「気合いの雄叫び」が飛び出していた。また声だけじゃなく、実際に「守備でも!!」闘っていた。昨シーズンまでの「アリバイ守備」じゃない。

 ホント、ビックリした。もちろん「まだまだサボるところ」は目立つけれど、良くなる兆しが出てきたことは、嬉しい限りじゃありませんか。ドリブル突破チャレンジにしても、カッコつけのぬるま湯ではなく、絶対にオレが抜いてやる・・という気合いが込められていた。そうそう・・それだよ!!・・それがありゃ、都築龍太から、「オマエのはサッカーになってないんだヨ!」なんて罵倒されることも少なくなるでしょ。

 繰り返すけれど、アーセナルにしてもマンUにしても、バルサにしてもレアルにしても、はたまたバイエルンにしてもインテルにしてもミランにしても、現代サッカーでは、天才は「走ってナンボ」なんだゼ。それがあってはじめて、誰にでも敬意を持たれる「本物の天才」になるっちゅうわけです。あっと・・マラドーナは別だよ・・マラドーナは・・あははっ・・

 スゲー長いコラムになってしまった(書き上げるのに3時間も掛かった!)。わたしは文章家じゃないし、短くうまく(美しく)まとめた美文などとは無縁なのです。乱筆、乱文、誤字・脱字、悪しからず・・あははっ・・

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 ところで、拙著「ボールのないところで勝負は決まる」の最新改訂版が出ました。まあ、ロングセラー。それについては「こちら」を参照してください。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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