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2010_UCL・・本田圭佑は、「個」が前面に押し出される外国チームのなかで、うまく組織的なシンプルプレーを駆使して最終勝負で目立っている・・(セビージャvsCSKAモスクワ, 1-2)・・(2010年3月17日、水曜日)

すごいネ〜〜、本田圭佑。とても強い星の下に生まれたということなんだろうか・・!?

 「あの」決勝フリーキックは、とても素敵な「ブレ球」だった。いや・・ホントにスゲ〜〜ブレ球だった。セビージャのGKは、そのことも含めて、手だけじゃなく、身体全体をつかって「受け」るべきだった。まあ彼は、手で弾き出そうとしてのかもしれないけれど、結局は「パンチしようとした拳がうまく当たらず」ボールが拳からスリップするように背後の自ゴールへ飛んでいってしまった。オリバー・カーンが、ブレ球への対処としてこんな発言をしたことがある。

 「あんな魔球だから、とにかくキャッチしたり、手だけで対処しようとしたら地獄を見ることになる・・外から見てたら、そんなでもないだろうけれど、正面から飛んでくるボールを見たら、ホントにビビるぜ・・まるでコマ送りのように、ボールの軌跡が、瞬間的にクックッって変化しちゃうんだからな・・オレは、飛んでくるボールのコースを全体的に包み込むといったイメージで、身体全体で立ちはだかるようにしていたんだよ・・」

 実際オリバーの場合は、何度も、胸や腕や腰や脚などに「当てて」失点を防ぐというシーンがあった。そりゃ「変な感じ」だよ。あの、オリバー・カーンが、イージーなボールなのに(周りにはそう見えるのに)まったくキャッチできず、胸などにボールが当たって「こぼれて」しまうんだからネ。もちろんオリバーの場合は、最初から「前へこぼれていく」ことを想定しているから、ほとんどのケースで彼自身が「その後」にボールを押さえちゃうけれど・・。でも、この試合でのセビージャGKは、その対処を誤った・・フムフム・・

 さて、本田圭佑。チェスカ・モスクワでの彼は、前戦での組織パスプレーと「一発勝負」を期待されているということなんだろうね。

 守備は、例によって「そこそこ忠実」。ボール奪取の勝負シーンに絡めれば「しっかりと行く」けれど、それ以外では、守備ポジションに入っていくだけで、積極的にチェイス&チェックを仕掛けていくといった、自ら仕事を探す(守備の起点になる汗かきプレー)という姿勢はみせない。

 もちろんそれは、この試合に臨むチェスカ・モスクワの守備のゲーム戦術ということでしょう。何といってもアウェーゲームだからね、積極的にプレッシング守備を展開することで「穴」をつくってしまうことを極力避けるというイメージでしょ。だから、まず「リトリート(後退)」してディフェンス組織をしっかりとバランスさせるというイメージ。そのゲーム戦術にとっては、チェイス&チェックにいき「過ぎる」のは、マイナス効果の方が大きいということです。

 さて攻撃。

 本田圭佑のプレーでもっとも目立つのは、前述したように、何といっても、シンプルな「使われる」プレー。自分でボールをもって仕掛けていくという勝負プレーは、まったくといっていいほどありません。自らドリブルで仕掛けていくという意志もなさそうだしね(何度かトライしたけれど結局はすべてツブされてしまった・・)。そして、「そんな組織プレー姿勢」が、このチェスカ・モスクワの攻撃陣にとって「ピタリとはまる」わけです。そう、それぞれの選手の「プレータイプ」が、とてもうまくバランスしているということです。

 本田圭佑は、シンプルに(ほとんどダイレクトで!)ボールを「はたいた」後は、もちろん間髪いれずにパス&ムーブで背後の決定的スペースを突いていく。彼は『最終勝負ポイントで目立つ』という強烈なイメージと意志をもっていると感じます。だから「二列目センターをやりたい」と主張し、チームも、それがとても効果的だと判断した・・そして結果が出た・・。フムフム・・

 チームメイトの攻撃陣だけれど、ネチドにしてもクラシッチにしても、ドリブルやタメ(ポストプレー)といった個の勝負で存在感を発揮するタイプだからネ。要は、本田圭佑は、そんなチームメイトの「個の才能」をうまく活用することで(自分は組織プレーを強調することで)、最後は自分がゴールに絡んでいこうというイメージなんでしょう。とてもクレバーなプレーイメージだよね。

 前半には、相手のクリアボールを、ダイレクトでネチドの足許へ出し、そこでネチドが魅せた素晴らしいコントロール&ポストプレーの間に「爆発的なパス&ムーブ」でセビージャゴール前のスペースへ飛び出していった。そして(ネチドからの)リターンパスを受け、決定的なシュートを打った。存在感抜群の勝負シーンを演出したじゃありませんか。

 また前半38分の先制ゴールシーンでは、スローインを受けた本田圭佑が、一発コントロールからの素早い横パスをネチドへつないだことで生まれた。あのタイミングのパスは、ホントに素晴らしかった。そして、そんなチャンスメイクだけじゃなく、後半10分には、言うことなしのフリーキックゴールを決めた。日本人では初の決勝トーナメントゴールだったし、これまた日本人では初の二回戦進出を決定づけたゴールでもあった。強い星の下に生まれた本田・・!?

 ということで、日本代表だけれど、そのコンセプトは、もちろんチェスカ・モスクワとは全く違う。攻守にわたって、最初から最後まで「組織プレー」を全面に押し出す究極の組織サッカー。

 本田圭佑の場合は、個の勝負プレーが「主流」の外国チームで、うまく組織パスを駆使することで最終勝負ポイントで良いカタチでボールに触る(瞬間的な個の勝負で、自らの才能を最大限に発揮する!)という『漁夫の利イメージ』がうまくツボにはまっているということだと思います。だから、最終勝負シーンでの存在感を強烈にイメージし、そのプロセスでは「使われるプレー」に徹している・・。

 もちろん、組織パスプレーとはいっても、局面のせめぎ合いプレーでは、しっかりとしたボールコントロールと日本人離れしたパワーを駆使し、仕掛けプロセスでは避けて通れない相手との接触プレーでも、しっかりとボールをキープして「次」へ展開していけるしネ。とにかく本田圭佑は、自分の持ち味を、存分に発揮していると思いますよ。

 でも日本代表のコンセプトは「究極の組織プレー」だからネ、本田圭佑も、チェイス&チェックをもっとしっかりやらなければならないし(汗かきのプレッシング守備プレー)、攻撃でも、もっともっとボールがないところで動き回らなければ、最終勝負の流れに「うまく乗って」いけない。ちょっとしたところだけれど、チェスカ・モスクワでのプレーイメージに慣れてしまったら、日本代表では、これまでのように「浮いた存在」になってしまうだろうね。

 チェスカ・モスクワも含め、外国チームの場合は、常に、攻守にわたって「世界レベルの個のチカラ」がいるということです。

 とはいっても、本能的なモノなのか、意識してロジカルな結論に達したのか、とにかく本田圭佑が魅せつづける、攻守にわたる「究極の実効プレー」は、それはそれで素晴らしいよ。

 究極の実効プレー・・。要は、ボールを奪い返すという守備の目的と、シュートを打つという攻撃の目的を、究極の「効果レベル」で達成してしまうプレーイメージ・・っちゅうことですかネ。あははっ・・

 




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