トピックス


2010_高校選手権(正月大会)決勝・・とても面白いエキサイティングマッチ・・また青森山田の「天賦の才」柴崎岳というテーマも・・(2010年1月11日、月曜日)

さて、第88回全国高校サッカー選手権大会の決勝。山梨学院と青森山田が対峙しました。とても内容のある、エキサイティングな(観ていてとても面白い!)勝負マッチだった。

 立ち上がりから、「後先考えず」ってな勢いで、山梨学院が、ガンガンと前から勝負を仕掛け、完璧にゲームのペースを握る。もちろんそんな流れの絶対的な基盤は、積極的なボール奪取勝負(守備)に対する強烈な意志にあることは言うまでもありませんよね。

 わたしは、全体的なチーム力では(山梨学院の横森巧監督も記者会見で言っていたけれど・・)青森山田に、わずかに一日の長があると思っていました。根拠は、もちろん個のチカラ。要は、同じような傾向とパフォーマンスのチーム戦術だったら、最後は、個人勝負の量と質で上回った方に分があるのですよ。山田には、個人のチカラでとても魅力的な選手が揃っている。もちろん山梨もツブ揃いだけれど、僅かに、青森山田に軍配が上がると思っていたわけです。

 だから、立ち上がりに山梨が魅せつづけた次元を超える積極プレーのオンパレードに、「いつまでつづけられるかな?・・15分もしてゲームが落ち着いたら、集中力が減退し、ウラのスペースを突かれてしまうんじゃないか?・・それに、後半になったらペースが落ちる傾向が強い山梨だから、そこまで勝負が引っ張られたら、立ち上がりのハイペースが仇(アダ)になってしまうかもしれないよな・・」なんてコトを思っていた。

 でも、その立ち上がりの時間帯に(前半11分!)山梨のスーパー組織プレイヤー(キャプテン)碓井鉄平が、見事な、本当に胸の空(す)くようなミドルシュートを叩き込んでしまうのです。この先制ゴールもまた、山梨学院の老練な指揮官、横森巧監督のイメージ作りによるものでした。

 「相手は前線にチカラのある三人の選手を残す・・変なカタチでボールを奪われたら、即ピンチになる・・とにかく攻撃をシュートで終わるという強いイメージを持って仕掛けていけ!」

 まさに、横森巧監督のイメージ通りに山梨学院が先制ゴールを奪ったわけだけれど、そこからゲームが、皆さん観られた通りに、両チームの仕掛けが入り乱れるエキサイティングなモノへと進化していくのです。

 青森山田が積極的に攻め上がり(最後は、背の高い二人のディフェンダーを最前線に置いたパワープレーまでいった!)、逆に山梨学院が、しっかりと、本当に堅実に守り、必殺のカウンターを仕掛けていく・・

 そこでの勝負の流れには、もちろん、必然的な要素と、偶発的ファクターが混在していた。そんなかなで、両チームが、誰が見ても「エッ・・何でゴールにならないの?」っちゅう、まさに決定的なチャンスを作り出すのです。

 こちらは、そんな熱いグラウンド上の現象に釘付けになっていたわけだけれど、そこでの「ゲームの構図」は明らかだったね。青森山田が繰り出していく、部分的に、とても素敵なクリエイティビティー(創造力)とイマジナビリティー(想像力)あふれる危険な攻撃を、本当に素晴らしい集中力と忠実なマインド(強い意志のチカラ)で、ギリギリのところで防ぎまくる山梨学院が、危険なカウンターを繰り出していく・・

 そこでの必然的なプレー(要素)としては、まず何といっても、山梨学院の粘り強いディフェンスを挙げざるを得ないでしょう。具体的なプレー描写は割愛するけれどネ・・スミマセン。でも、6番の宮本龍が何度か魅せた、抜群に忠実で感動的なカバーリングプレーが、彼らの守備のマインドを代表していたということだけは書き記しておきましょう。

 それに対し、青森山田。たしかに何度か100パーセントのチャンスを作り出したとはいえ、彼らが陥っていた(!?)最後まで美しい組織パスプレーで相手の背後スペースを攻略するゾ・・っちゅう高慢なプレー姿勢が鼻についていた。要は、シュート直前に繰り出した美しい「崩しコンビネーション」に酔ってしまい、肝心のラストパスや最終勝負ドリブルからのシュートが雑になったと感じられたということです。フ〜〜・・

 それに、特に後半の青森山田では、ちょっとミスパスも多すぎた。もちろん、山梨学院が展開した組織的な(汗かきプレーを忠実に積み重ねていく!)ディフェンスが素晴らしかったという側面もあるけれど、「最後までパスで・・」っちゅう思い上がりによって墓穴を掘ったとも言えそうだネ。そんなポイントも、私にとっては必然的なプレー(要素)だったというわけです。

 そして、そんな、美しさを追求し「過ぎる」プレー傾向の代表格が、青森山田の天賦の才、柴崎岳だった。

 「黒田監督にとって柴崎岳は、諸刃の剣ですか?・・質問の骨子はこうです・・誰が見ても、柴崎は素晴らしい才能に恵まれています・・とはいっても、チームにとってプラスのパフォーマンスだけではなく、逆にマイナスになってしまうようなプレーも多々見受けられる・・黒田監督は、それらを天秤に掛けて柴崎を使っているとは思いますが・・そこで質問です・・彼が素晴らしい才能に恵まれているからこそ、キャプテンの椎名伸志のような、攻守にわたる素晴らしい全力の組織プレーにも精進したら、日本サッカーの将来がバラ色に見えてくると思うのですよ・・でも、いまの彼のプレー姿勢だったら、いずれは(過去の、素晴らしい才能だと言われた選手たちと同様に!)死んでしまうのは目に見えている・・彼については、今の段階で、やらなければならないことが山積みなのです・・このことについて、黒田監督は、どのように考えていらっしゃいますか?」

 柴崎岳について、そんな質問を、黒田剛監督にぶつけてみた。その質問に対するコメントのニュアンスをまとめると・・

 ・・彼には将来日の丸を付けてプレーすることを期待しているし、彼に対しても、常日頃そう言っている・・彼は(ユース年代の)日本代表チームなどで海外経験も豊富だし、あとは自覚次第だと思っている・・要は、自分自身で自分のプレーを分析し、改善ポイントを見出して実行していく主体的な姿勢のことだ・・もちろん私からもアドバイスはするが、最後は、成長していくための努力も含めた自分自身の自覚に掛かっていると思う・・

 フムフム・・。でも、この決勝でも準決勝でも、とにかくプレーの発展ベース(進歩のベクトルに乗っていくための意志とイメージの基盤!)が十分ではないと感じたのですよ。

 ・・自分で最終勝負を仕掛けていくべき(もちろん最後はシュートまで!)場面なのにパスに『逃げて』しまったり・・何度かあった決定的シュートチャンスでも、弱気の体勢からのシュートということで「見事に宇宙開発」してしまったり・・そのこともあって(自信を失って!?)その後は、積極的にシュートを避けたり・・チャンスなのに、最後は自分がラストパスを受けるという強烈な意志を前面に押し出した(自分がコアになった)パス&ムーブにチャレンジしなかったり・・パスを出して足を止めてしまったり(自分が出した素晴らしいパスに酔っている!?)・・もちろん守備は、お座なり(彼がしっかりと戻らなかったことで、何度チームがピンチに陥ったことか!!)・・攻撃でも、ボールがないところでのスペースへの飛び出しにしても、100パーセント自分にパスが出てくるシチュエーションでなければ走らない・・

 わたしは、ボールタッチ、フェイントも含む相手の守備アクションの逆を取る(カットの)才能、相手マーカーに寄せられたときの身体の使い方(スクリーニング)、様々な種類を使い分ける優れたパスセンス、高いクオリティーのドリブル勝負などなど、彼のテクニックや戦術能力は認めるし(足も、とても速いよネ!?)日本サッカーの将来の星として大いに期待しているのですよ。

 あっと・・守備にはいったときの、素晴らしいボール奪取テクニックに舌を巻いたことも付け加えておかなければ。まあ・・だからこそ、彼がマークをサボったり、行けるところでボールウォッチャーになったりと、要はディフェンスをサボッているプレーを観て、ハラを立てていたのですよ。

 オイッ、柴崎!! いまからそんな高慢なプレー態度じゃ、将来なんて、まさに漆黒の闇だぞっ!!

 彼には、より高いレベルのトレーニング環境が必要だね。日本のプロチームで、大人に混ざって経験を積ませることも一つの方法だけれど、より効果的なのは、同じ年代の超ハイレベルなチームに放り込むことだよね。たとえば、バルサのカンテラとかさ。そうすりゃ・・ゲッ、あんな上手い選手なのに、スゲ〜一生懸命に守備したり、パスレシーブの動きに入ったりしている・・オレもやらなきゃ・・ってな気持ちが芽生えることを期待できると思う訳なのです。

 これまでだったら、彼のことを甘やかすメディアに潰されちゃうのが常だったでしょ。日本には、歴史に裏打ちされた、しっかりとしたサッカー環境がないからね。フットボールネーションだったら、親や兄弟、恋人だけじゃなく、周りの親しい友人や近所のオッサン連中にしても「正しい批判」をしてくれるからね。

 とにかく、わたし自身の学習機会として、メディアの動向も含め、柴崎岳の今後に注目しましょう。

 




[ トップページ ] [ Jワンポイント ] [湯浅健二です。 ]
[ Jデータベース ] [トピックス(New)] [ 海外情報 ]