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2010_東アジア選手権(女子)・・世界も認める「なでしこ」の素晴らしい組織サッカー!・・(日本vs韓国、2-1)・・(2010年2月13日、土曜日)

韓国女子代表、イ・サンヨプ監督。 「日本は、パス回し(組織コンビネーション)や(人とボールの)動きが素晴らしい・・我々としても、そんな日本の良さを学ばなければいけない・・」

 この日の第一試合でプレーした中国女子代表のシャン・ルイフア監督。「我々のチームは、総体的に、コンビネーションが足りなかった・・我々は、日本からチームプレーを学ばなければならない・・」

 チャイニーズ・タイペイ女子代表監督で、日本でもプレーした経験のあるチョウ・タイイン監督。「中国女子代表の特長はフィジカルの強さ・・韓国女子代表は闘う意志の強さ・・そして日本女子代表は、チームプレーに優れていると思う・・」

 三人とも、異口同音に、「なでしこ」が魅せた素晴らしい組織プレーに心から拍手をおくっていたというわけです。

 彼らだけじゃありませんよ。またまたリンクを張っちゃうけれど、昨年7月30日にドイツのマンハイムで行われた「なでしこ」対ドイツ女子代表の「フレンドリーマッチ」を観た友人のサッカーコーチ連中も、口々に、日本が魅せた(部分的にはドイツ代表をキリキリ舞いさせた!)素晴らしい組織サッカーを賞賛していた。

 またその前日までプォルツハイムで行われていた(ドイツプロサッカーコーチ連盟主催の)サッカーコーチ国際会議でも、ノルウェーやドイツなど、欧州を代表する女子代表チーム関係者も(酒の席だったし、例によってオレが挑発したこともあったから、まあ、本音でしょ!?)日本のハイレベルな組織プレーをとても心配していた。もちろん、来年ドイツで行われる女子ワールドカップに臨むにあたって・・ネ。

 そうそう、来年ドイツで開催される女子ワールドカップは、「なでしこジャパン」にとって、とても重要な大会になるのですよ。何せ彼らは、トップフットボールネーションも認めるコンテンダー(競争相手)なんだからネ。

 もちろん私も・・と言いたいところなんだけれど、その開催期間と、日本の男子代表が招待される「コパ・アメリカ(南米選手権)」の開催期間がバッティングしてしまうのですよ。コパ・アメリカは、来年6月15日から7月15日までの一ヶ月。女子ワールドカップは、来年6月26日から7月17日までの三週間。

 もちろん、「なでしこ」が世界の頂点に立つような雲行きになったら、すぐにでもアルゼンチンからドイツへ駆けつけるけれど、それ以外は、やっぱり「コパ」の方かな・・。さて・・

 ということで、世界中から賞賛を集める「なでしこ」の組織サッカー。本当に、とても素晴らしい。

 「それでもネ、佐々木さん・・サッカーコーチの国際会議で、酔っぱらったコーチ仲間(何人かのヨーロッパ各国女子代表チーム関係者・・ほとんど男)に本音を話させたんですよ・・そんな強い日本の女子代表に対して、オマエたちはどうやって対抗するつもりなんだよ?ってね・・そうしたら、ヤツら、本音をしゃべるんですよ・・いやいや、そんなときは、ボールを放り込んで高さやパワーで勝負するんだよ・・そしたら日本の彼女たちは、ひとたまりもネ〜〜だろ!?・・なんて言うのですが、そのことに対してコメントをいただけませんか?」

 そんな私の長〜い質問に対し、「え〜〜・・ハナシが長すぎて、質問の骨子を忘れてしまったんですが・・」などとユーモアを振りまいて笑わせた佐々木則夫監督が、すぐに真顔に戻って、こんなニュアンスのことを言っていた。

 「もちろん我々も、フットボールネーション女子代表チームのパワープレーに対抗するチーム戦術を着々と準備していますよ・・正確なクロスやロングボールを蹴られるような余裕を与えない(協力プレスの積み重ね!)は当たり前として、例えば、サイドから正確なクロスを入れられるのは危険だから、彼らの仕掛けの流れを、サイドゾーンからセンターゾーンへ向かうように追い込んでいくとかネ・・センターからの仕掛けだったら、協力プレスも掛けやすいし、ディフェンダーやゴールキーパーも、正面を向いて相手とボールを同時に見ながら対応できるはずですからネ・・まあ、実際に対戦する相手が決まってから、より具体的にゲーム戦術を詰めていきますよ・・」

 そう、その通り。もちろんケースバイケースで、上記のように相手の仕掛けを「制限」するディフェンスのコノテーション(言外に含蓄される意味)にも、様々に相違する「意味合い」が付いてくるだろうし、実行のプロセスも変わってくるでしょ。

 とにかく、大事なことは、自分たちの強みを出来る限り「開放的に表現できること」と、相手の強みを、効率的&効果的に「抑え込めること」なのですよ。日本は「強いチーム」じゃないから、基本的には、相手を研究し尽くして計画された「ゲーム戦術」を徹底するという戦い方になるよね。

 その意味では、はじめから有利な立場にいる「はず」なんだけれど・・。そう、今回の東アジア選手権で(日本と韓国を相手に)素晴らしい存在感を示した中国男子代表チームのようにネ。

 ありゃ〜〜・・またまた「前段」が長くなり過ぎてしまった。さて、なでしこ対韓国女子代表。

 とにかく、本当に、本当に素晴らしくエキサイティングな勝負マッチでした。女子で、このレベルのゲームが観られるのは、もしかしたら初めての経験かもしれない。

 まず、勝てば優勝の韓国が、立ち上がりからガンガンと積極的に攻め上がっていく。もちろん、前からの積極的なボール奪取勝負(ディフェンス)のことですよ。それがあるからこそ、次の攻めが活性化する。

 その発想(コンセプト)は、基本的な戦術メカニズムの「一つ」だけれど、サッカーを、より深く、楽しく語り合うためには、そのことも含む様々な「戦術的メカニズム」を理解しておくことの方が、数字の羅列に過ぎないシステムを云々するよりも圧倒的に大事だと思ってい筆者なのですよ。

 ありゃ・・スミマセン・・脱線・・実は、いま書いている新刊のテーマが「それ」なんですよ・・システムを超越する戦術的な発想(メカニズム)!?・・もちろん実際には、もっと簡単なタイトルで、内容も分かりやすいものなるわけですが・・あっ・・またまた脱線・・スミマセン・・それも私の新刊のピーアールなんて・・

 ということで、積極的に立ち上がった韓国。でも「なでしこ」も負けちゃいない。そんな韓国の圧倒的な勢いを、余裕をもって受け止め(もちろん「なでしこ」も守備エネルギーを増幅させたということですヨ!)、ガンガンと押し返していくのです。

 そこでのリーダーは、言わずと知れた澤穂希。凄いネ、やっぱり、澤穂希(彼女を抑えようとしてうまくいかなかった韓国の監督さんも絶賛でした)。

 そして一発カウンターから、超速ドリブラーの大野忍が、ブッちぎりドリブルで先制ゴールを叩き込み(前半7分)、その10分後には、またまた大野忍のスーパードリブルが、韓国ディフェンダーの視線と意識を引きつけて2点目をお膳立てする。相手ディフェンダーの間隙を突いて決定的スペースへ飛び出していった山口麻美へ、流れるような動作で、大野忍がスルーパスを送り込んだのです。ホント、鳥肌が立つほどに美しい2ゴールではありました。

 でも、そこから韓国が、持ち前の闘争心で日本を押し込んでいくのです。ゲームのイニシアチブを握る韓国。でも実際には・・

 そう、ゲームを支配しているように見えて、実は違った。韓国は、流れのなかでは、まったくといっていいほどスペースを突いていけないのです。だから可能性の高いチャンスも作り出せない。そして最後は、ゴリ押しでアバウトな中距離シュートを飛ばすだけになってしまう。

 逆に「なでしこ」にとっても、そんな韓国の攻めはまったく怖くないから、余裕が出る・・だから、どうもプレーに締まりがなくなっていく(全体的な運動量が落ち、守備でのチェイス&チェックにも勢いが乗っていかない・・等々)。

 でも、そんな「締まりのないなでしこ」が、急に覚醒するのです。韓国のセットプレーからの失点という刺激。やはりゴール(失点)に勝る刺激はない。

 セットプレーでの韓国チームは、繰り出せる最大限の人数を、日本のペナルティエリアへ送り込んでいく。そして日本選手と、四肢を駆使した「せめぎ合い」を展開する。まさに大迫力の競り合い・・手に汗握った。

 そして、そんな「ガチャガチャの競り合い」からこぼれてきたボールを、うまくラストパスにした韓国チームが「2-1」となる追いかけゴールを決めてしまうのです。

 追いかける韓国が一点差に迫ってきた・・。それは、我々オールドサッカーマンにとっては、まさに冷や汗が出るような悪夢のゲーム展開の「はず」でした。目的イメージをより鮮明なモノにした韓国の強大な心理パワーが炸裂する!? 普通だったら、それまでの倍のエネルギーを爆発的に発揮した韓国が、日本をガンガンに押し込んでしまう「ハズ」だったのですよ。でも実際は・・

 「日本チームは、とても強い・・そのことは、北京オリンピックや昨年のドイツとの親善試合だけじゃなく、この試合で韓国に一点差に迫られてからのサッカー内容で如実に証明されていたと思う・・」

 それは(前述した)佐々木則夫監督が「長すぎて骨子を忘れた・・」と揶揄したわたしの質問の「前段」でした。

 そう、「なでしこ」は、韓国に一点差に迫られたことをポジティブな刺激として効果的に活用してしまったのですよ。韓国を押し返し、ゲームを掌握してしまう「なでしこ」。頼もしく感じたものです。もちろん、一度だけ、例によっての「スーパープレッシャーの韓国セットプレー」というシーンはあったけれどネ・・

 とにかく、素晴らしい「大会連覇」ではありました。おめでとうございます。

 またまた長〜いコラムになってしまった。

 このゲームも、女子サッカーに詳しい講談社の矢野透さんと観ていたのですが(矢野さんが作った、なでしこ本は「こちら」)、そこで、プリントメディアに代わる新しい電子メディアや、そのコンテンツについて話していたとき、こんなテーマが出ました。いや・・ゲームはしっかり観戦していたんですよ、ホントに・・

 矢野透さん。「やっぱり文章は短くまとめるのがいいですよね・・いまの読者は、長い文章は読まなくなってきていますからネ・・」

 「そうですよね・・短くまとめられれば、それに越したことはありませんよね・・でも私のHPは、いつも長い(私にゃ、文章を短くまとめられる文才がない!?)・・だから、一つの文章ブロックは短くし、それぞれのブロックの間を1行ずつ空けることにしてるんですよ・・その方が読みやすいだろうし・・でも、文章が長いことには変わりはない・・いいんですよ、私は、ハナから、文章を短くまとめたり推敲する気なんて、ないですから・・」

 そんな私の独り言に対して、矢野さん。「・・・・・・」

 スミマセン、観戦の邪魔して・・。とにかく、いつも、貴重な「女子サッカーの情報」を有難うございます。今後とも、よろしくお願いします。来年の「2011ドイツ女子ワールドカップ」もご一緒しますか? あははっ・・

 




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