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2010_WM準備マッチ・・ワールドカップ(世界の強者たちとのガチンコ勝負)という巨大な刺激・・その2・・(日本vsコートジボワール、0-2)・・(2010年6月4日、金曜日)

スゴイね〜〜、コートジボワール。

 局面の「個人的」な競り合いでヤツらが魅せるスキル、パワー、スピード。やはり「世界」だね。それだけじゃなく、攻守にわたる組織プレーでも、とても優れたレベルを魅せていた。サスガに、現時点の、アフリカ実力ナンバーワンだけのことはある。

 このゲームは、そんな世界の強者とのガチンコ勝負ということになったわけだけれど、それでも日本の守備ブロックが簡単に崩されるようなことはなかった。

 決して「一対一」という局面勝負に持ち込ませないように、しっかりと組織的にカバーし合い、効果的な「集散」を繰り返すことで実効ある「協力プレスの輪」を作り出す日本代表。だからこそ、ボール奪取のプロセスを、(これが大事なポイントなんだけれど・・!)日本のディフェンスが主体になって、「組織的」にリードできていた。フムフム・・

 守備アクションが、チーム全体に統一された「イメージ」で有機的に連鎖する。日本代表は、そんな組織ディフェンスを、粘り強く、忠実に積み重ねていた。彼らは、とても効果的に、守備のチーム戦術を機能させていたというわけです。

 まあ、「あの」フリーキック失点シーン(コートジボワール2点目のシーン)はいただけなかったけれどネ・・。日本選手は、あれだけ集中していたのに、結局は、ファーサイドスペースに、斜めに走り込まれてしまった。それも、二人も(三人だった!?)。

 あのシーンは、とても貴重な「イメージトレーニング素材」だよ。何度も、何度も、繰り返し(しっかりとイメージしながら!)観ることで、確実に、最終勝負シーンでのオートマティゼーション(考える前に、自動的に勝負アクションが出てくる状態)のレベルが向上する。

 まあ、とにかく、この試合での日本代表のディフェンスは、まあまあ上手く機能していたのですよ。それに対して(前半の)攻撃は、とても「薄く」なっていた。守備に気を取られているから、どうも「前への押し上げアクション」が鈍重になっていたのですよ。その要因は、中盤から前線へかけての人とボールの動きを加速させられなかったことだね。

 まあ、この時点だからね、もう「誰」なんていう議論には入っていかないけれど、一度ボールの動きを「タメ」るならば、「そこ」から、本当に危険な仕掛けの流れが出てくるべきなんだよ。単に、シンプルな「逃げパス」を出して足を止めてしまったり、持ちすぎて相手に奪われるような愚鈍なプレーを繰り返す選手がいたら、そりゃ、チームメイトのイメージが警戒感にあふれてしまうのも当然だね。

 それに対して、後半。それが、このコラムのポイントになるわけだけれど、ナカナカ・コンビ(中村俊輔と牛若丸=中村憲剛)が入り、しっかりとボールが動くようになった(ポゼッションの内容&イメージが向上した!!)ことで、人とボールの動きは、明らかにポジティブに増幅していったのです。

 換言すれは、チームメイトたちの(簡単にボールを失わないことに対する)確信レベルがアップしたことで、組織的なサポートの意志が、大きく活性化されたとも言える。だから、守備での組織プレー内容は、まあ・・そのままに、次の攻撃の流れを加速させることが出来た。

 前半では、まさに寸詰まりの攻撃で、攻めの流れを作り出すこと「さえ」できなかったのに、後半では、しっかりと、組織的に、チャンスのキッカケを萌芽させ、その流れを加速させられていたのです。シンプルな人とボールの動きを積み重ねることで、局面でのコートジボワール選手との「フィジカル接触」を極力避け、そして、あくまでも組織的にスペースを突いていく。

 そんな組織プレーをベースにしているからこそ、たまに魅せる、玉田圭司のドリブル勝負や、『次の仕掛けの流れ』につながる中村俊輔の「タメ」が、とても効果的になるのです。

 繰り返すけれど、コートジボワールは、とても強いチームだからネ(特に守備がメチャクチャ強い!)・・もちろん、そんなに簡単にコートジボワール守備ブロックを振り回してウラのスペースを突いていくところまではいけない・・それでも後半は、チャンスメイクという視点で、明らかに、希望の星が輝くようになった・・それこそが、岡田武史がイメージする効果的な仕掛け・・

 たしかに後半は、厳しい気候条件だったから(とても暑かった)両チームともに運動量が落ちた。それでも日本は、肝心なところでは、しっかりと「忠実な動き」が出来ていたと思う。また守備でも、前回のイングランド戦と同じように、チェイス&チェックを仕掛けた選手は、決して安易にアタックを仕掛けたりせず、我慢して「チェック」に徹していた。

 要は、相手がいくら強くても、安易にボール奪取アタックを仕掛けていかず、(我慢の)チェイス&チェック、効果的な「集散」をベースにした協力プレス、忠実なマーキングと次のボール奪取ポイント狙い・・という「組織ディフェンスのサイクル」を、しっかりと忠実に回しつづけられれば、必ず良いサッカーを展開できるということです。

 わたしは、この2試合を通じ、岡田武史の「確信レベル」は、結果とは関係なく、とてもソリッドに(濃密に、堅く)深化したと思っています。そう・・勝負のカメルーン戦に向けて・・

 ここからは、個人についてのコメントを短く・・

 大久保嘉人。気合いが乗ったコートジボワールが、とても力強いプレーを仕掛けてきたこともあって、(気が抜けた)イングランド戦のように際立つところまではいかなかったけれど、それでも、彼のプレーからは(特に守備!)積極的な意志を感じ、とても頼もしく思っていましたよ。もしかしたら、ワールドカップという巨大な刺激によって、もっとも覚醒したのは大久保だったりして・・

 森本貴幸。彼のプレーは、まさにフットボールネーションの「本格感」を振りまいていた。もちろん、岡崎慎司の、最前線からの全力汗かきディフェンスと、攻撃での忠実な飛び出しは、いまの日本代表の仕掛けイメージにとって欠かせないけれど(岡?が途中交代したことで、最終勝負の飛び出しが減り、中村俊輔が、勝負のスルーパスを出せなくなった!?)、森本貴幸の「本格的なゴールの嗅覚」にも大きな魅力を感じますよ。

 あっと・・中盤の構成。やっぱり、長谷部誠、遠藤保仁、ナカナカ・コンビの中盤カルテットは、攻守にわたる、有機的なプレー(イメージ)連鎖の集合体・・という視点でも、欠かせないと思う。それも、岡田武史の、濃密で堅い確信コンテンツに内包されたはず・・!?

 最後に今野泰幸。もし彼が、関節系のケガで戦列を離れるようなことがあったら、それは、本当に、本当に、シリアスな一大事です。阿部勇樹とともに、彼は、岡田武史が描く「勝負の流れのシナリオ」で、とても重要な「隠れた主役」を張るチーム戦術パーツのはずだからね。要は、この二人ほど、高いレベルで計算できる「守備ユーティリティープレイヤー」はいないということです。本当に心配です。フ〜〜・・

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 さて、わたしの南アWM遠征計画ですが、所用が重なってしまったことで、 現地への出発を遅らさざるを得ませんでした。だから開幕ゲームには間に合いません。できれば、最初の数ゲームは日本でテレビ観戦してレポートしたいとは思っているけれど・・。アッ・・そんな時間も取れないかも・・

 日本を出発するのは、6月13日。そして、ヨハネスブルクの空港にランディングするのは、日本対カメルーン戦当日の朝、0730AMなのですよ。そこで、予約してあるレンタカーをピックアップし、SIMカードや水などを仕入れてブルームフォンテーンへ400キロのドライブ・・っちゅうわけです。

 それだけじゃなく、ブルームフォンテーンに到着しても、まずアクレディテーション・センターへ行って、プレスIDを作ってもらわなければなりません(スタジアムとは別の場所!)。本当にゲームに間に合うのだろうか・・。

 まあ、やるっきゃない。フ〜〜・・

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 ところで、三年ぶりに新刊を上梓しました。4月14日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定したらしい。フムフム・・。タイトルは『サッカー戦術の仕組み』。岡田ジャパンの楽しみ方・・という視点でも面白いかもしれません・・たぶん。池田書店です。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。

 




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