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2011_ACL・・久しぶりのスタンド観戦ということもあって、とても興味ぶかく観られました・・(アントラーズvs水原三星、 1-1)・・(2011年4月19日、火曜日)

「アウェー戦だし、戦力的にも、ケガ人が出たり、外国人の登録が間に合わなかったりと、とても厳しい状況だった・・だから、守備を固めてカウンターを仕掛けていくという戦法が、もっとも現実的だった・・そのやり方は、ある程度うまくいったと思う・・先制ゴールまで奪ったのだから・・(そこまではプラン通りだったが!?)それを守りきれなかったことは残念で仕方ない・・」

 水原三星(スウォン)のユン・ソンヒョ監督が、わたしの質問に、ちょっと笑みを浮かべながら、そんなコメントをくれた。その質問は・・

 「スウォンは素晴らしいディフェンスを展開した・・おっしゃるとおり、アントラーズはチャンスを作り出すのに四苦八苦していた・・そんなゲームの流れのなかで、スウォンが、まさにプラン通りの(フリーキックから)先制ゴールを挙げた・・その瞬間、このゲームは絶対にモノにしたぞと確信したに違いないと思うが・・?」

 このゲームは、スウォンのゲーム戦術がツボにはまったとするのがフェアな評価だろうね。だからこそ、「あの」先制ゴールが決まったとき、ユン・ソンヒョ監督は、勝利を確信したに違いない・・と思ったわけです。

 でも、そこはアントラーズ。その6分後には、これまたフリーキックから、遠藤康、田代有三とつないで同点ゴールを奪ってしまうのですよ。あの状況で、しっかりと同点ゴールを叩き込んだこと自体が(もちろん、スウォンに先制ゴールを奪われてからの抜群のペースアップも含めて!)勝負強いアントラーズの面目躍如だったのでした。

 それにしてもスウォンは、徹底した守備戦術でゲームに臨んできたね。

 断っておくけれど、彼らのやり方は、決して、下がってブロックを固める・・なんていう受け身で消極的なモノじゃありませんよ。あくまでも、創造的に、そして忠実に守備ブロックを組織するなかで、選手たちのボール奪取イメージが素晴らしくシンクロしつづけるという高質なディフェンスだったのです。

 彼らが魅せつづけた、忠実で責任感あふれる、ボールがないところでの(予測ベースの!)守備アクションには、溜息が出た。そんなところにも、厳しい競争社会である韓国の生活文化的な側面が感じられた。そう、個の闘う意志(自己主張)の強烈なオーラ・・

 スウォンが展開した守備のゲーム戦術は、こんな感じ。

 スリーバックのうちの二人が、興梠慎三と田代有三をしっかりとマークし、両サイドハーフのフェリペ・ガブリエルと野沢拓也を両サイドバックがケアーする。もちろん両サイドバックは、アントラーズのサイドバックのオーバーラップに対しても、臨機応変に対応する。また、アントラーズ攻撃のキーパーソンである小笠原満男に対しては、効率的なマークの受け渡しから、勝負所では、しっかりとタイトにマークする・・ってなイメージ。

 そんなスウォンのゲーム戦術を観ながら、わたしにとっての「この試合のポイント」は、いかにアントラーズが相手守備ブロックを崩してチャンスを作り出すのか・・という一点に絞り込まれた。

 ・・組織コンビネーションを繰り出すという仕掛けイメージか・・それとも、田代有三のアタマを狙ったロングボールのこぼれ球を狙うのか(たしかに前半には野沢拓也が、田代ヘディングのこぼれ球を叩くというチャンスがあった!)・・はたまた、ミドルシュートを前面に押し出していくのか・・

 もちろん、強化守備ブロックに対抗する仕掛けの戦術イメージには、もっともっと多くのバリエーションがある。相手がディフェンスを強化しているのだから、その強化ゾーンへ入っていくのではなく、アーリークロスをどんどん放り込むとか、前述したように、ペナルティーエリアへ突進していくふりをしてバックパスを送り、味方にミドルシュートを打たせるとか・・。

 そんなアントラーズの仕掛けで、とても印象に残ったのが、左サイドバックとして抜群の存在感を発揮したアレックスのオーバーラップ(フェリペ・ガブリエルとのタテのポジションチェンジ)だった。

 二回、三回と、アレックスのオーバーラップが決まる。その「人の動き」に、決定的なパスを送り込むのは、もちろん小笠原満男。何度か、素晴らしいポジションチェンジ気味のロング・スルーパスを決めたよね。それは、小笠原満男の天賦の才が光り輝いた瞬間だった。

 もちろん、そんな一発ロングパスからの崩しだけじゃなく、本山雅志が入ってからは、細かな組織コンビネーションから抜け出していくシーンも連続した。

 とはいってもサ、そんな良い流れを演出しながら、それでもアントラーズは、数えるほどしか「ホンモノの決定機」と呼べるようなチャンスを作り出せなかった。

 だからこそ私は、この試合でスウォンが魅せつづけた、素晴らしい「クリエイティブ守備」を賞賛するのですよ。特に、本山雅志が登場してから活性化したアントラーズの組織コンビネーションを、最後の最後まで抑えつづけたスウォン守備ブロックの「創造力」と「忠実さ」には目を見張った。

 まあ、全体的なゲーム内容からすれば、オズワルド・オリヴェイラ監督が言うように、「アントラーズが勝ち点2を失った」っちゅうニュアンスの評価が出来なくもないけれど、敢えて私は、とても強力な「クリエイティブ守備」を魅せつづけたスウォンが、フェアに勝ち取った「粘りの勝ち点1」っちゅう評価の方に肩入れするな〜。

 とにかく、様々な視点で、とても興味深い勝負マッチではありました。あ〜〜・・面白かった。

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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