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2011_親善マッチ_・・今日は朝からちょっと気持ちいい・・(ドイツvsオランダ、3:0)・・(2011年11月17日、木曜日)

あくまでもクリエイティブ(美しく創造的&想像的)で、それでいて(ドイツの伝統的な)質実剛健さも兼ね備えるドイツ代表・・。

 彼らは、このオランダ戦(二日前にドイツのハンブルクで行われた親善マッチ)でも、本当に素晴らしいサッカーを魅せてくれた。要は、美しさと勝負強さが高い次元でバランスしている高質なドイツ代表ってなことかな。

 そんな「ドイツサッカーのポジティブな流れ」を観るにつけ、1990年代の「落ち込み」を思い起こさずにはいられない。まあ、「そんな事態好転のニオイ」は、21世紀に入った辺りから感じられていたわけだけれど・・ネ。

 この10年以上、ドイツサッカーについて書くときは、いつも「そこ」からコラムをスタートしちゃう。何せ、当時(1990年代)は、ドイツサッカーの関係者の誰もが、ドイツサッカーに対する最悪イメージ(世界中に充満していた悪評)に悩み、苦しんでいたわけだから。

 ・・テクニックのレベルが低く、まるでロボットのようなフィジカルサッカーを展開する「勝負強いだけ」のドイツ・・

 そんな、誰もが落ち込む悪レピュテーションのなか、「そりゃ負け犬の遠吠えだぜ・・オレ達は勝っているんだから(たしかに当時の成績はそこそこだったネ・・)」とか、「オレ達だって、1972年ヨーロッパ選手権で優勝したチームのように、美しいサッカーが出来るんだよ・・それにはタレントが必要だけれど、それは、待つしかないよな・・」なんていう強がりが支配する雰囲気だった。

 でも、現場のリーダーたちは違った。本当に、ドイツサッカーの体質的な問題を心配していたのですよ。

 ・・選手たちの才能を潰してしまう オーバーコーチング・・理論ばかりの(人間的に選手を導くことができない!?)頭でっかちのコーチたち・・選手たちの創造性(才能)を発展させるために不可欠な忍耐力を持ちあわせていない(自分たちだけが主役になろうとする次元の低い)コーチたち・・そして、何といっても、一本スジの通った普遍的な「方針」を示せないドイツ協会・・

 当時わたしも、そんなドイツサッカーの将来を心配するリーダーたちと深く接し、彼らとディベートを重ねたモノです。

 ・・才能は「解放」しなければ発展しない・・コーチの忍耐・・ストリートサッカーの要素をレギュラーなトレーニングに応用せよ・・プロクラブは、エリートキッカーのために、寄宿制の学校も併設する施設をもたなければならない(フランスの成功から学ぶという謙虚な姿勢も大事!)・・そして何より、タレント(才能)を効果的に発掘するための情報網の整備と、ドイツ協会の方針設定と全力のバックアップ体制の整備・・

 わたしは、そんな「全体的な流れ」の中枢にいた(いる)リーダーたちを知っている。彼らの悩みと、サッカー界の「後ろ向きな体質」との闘いの日々を知っている。

 だからこそ、彼らの高質なクリエイティブサッカーを観るたびに、当時を思い出して感慨に耽(ふけ)ってしまう。あははっ・・

 試合だけれど、まあ・・ネ・・スポナビに「オランダ人」の中田徹さんが書いているレポートがあるから、「そちら」も参照して下さいな。とにかくドイツは、内容でも、結果でも、オランダを凌駕した。

 単なるフレンドリーマッチとはいっても、大ライバルのドイツとオランダが対峙したわけだからね、そこに内包されているコノテーション(言外に含蓄される意味合い)も、おのずから「深い」ものになる。とにかく(今年8月11日のブラジルとの親善マッチのように!?)面白かった。

 「あの」モウリーニョも絶大な信頼を寄せるエジル(ドイツ語では「オェツィール」と発音するのかな)とケディーラを中心に、もちろん全員が「よどみなく」連動しつづける究極の「イメージ連鎖」組織ディフェンス。

 忠実でダイナミックなチェイス&チェック。それに連動する、インターセプト(パスカット)アクション、間合いを柔軟に調整しつづける実効マーキング、相手のボールの動きの停滞を狙いつづける協力プレスアクション・・等など。本当に「よどみ」がない。

 そんな忠実な(組織的な)守備アクションでは、もちろん「あの」ルーカス・ポドルスキーもサボるわけにゃいかない。いまのドイツ代表チームでは、そんな究極の組織サッカーが、「チームの体質」にまで昇華していると感じますよ。ヨアヒム・レーヴは良い仕事をしている。

 そして、ボールを奪いかえしてからの、素早い切り替えをベースにした、これまた「よどみ」がない、直線的でダイナミックな(大迫力の力強さが湧き出してくるような)仕掛けコンビネーション。

 とにかく人とボールが「よどみ」なく動きつづけ、どんどんと、相手がいやがるスペースを突いていく。だからこそ、タイミングよく繰り出す「勝負ドリブル」も、ものすごく効果的になる。

 ここで大事なコトは、「主体的」に、勝負ドリブルを効果的なモノに「してしまう」という発想です。そう、組織プレーでスペースを突いていけているからこそ、個の才能を(チームのために)存分に光り輝かせることができる・・っちゅうわけです。

 今日は、朝からちょっと気持ち良い。サッカー(好きなスポーツや文化的な出来事)って、人の気持ちに様々な(そして強烈な)影響を与えるよな〜・・なんてね。以前に書いた「エモーショナル価値」のことだか、まあ、当たり前か。

 さて、これから気持ちよくミーティングへ行くことにしよう。

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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