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2011_J2_第35節・・またまた、両監督との対話・・(横浜FCvs湘南ベルマーレ, 3-2)・・(2011年11月13日、日曜日)

・・エ〜〜ッ!?・・こんなことってアリなのか〜!?・・

 思わず、そんな頓狂な声が出た(イヤ・・実際には心のなかで叫んだんですけれどネ・・)。後半41分まで、「1-2」で、質実剛健にゲームをリードしていた湘南ベルマーレ。それが、わずか数分のうちに大逆転劇をブチかまされちゃったんですよ。いや、ホント、ビックリした。

 攻守にわたる、ハイレベルで着実なコレクティブ(組織)サッカーを繰り広げたベルマーレの質実剛健リード・・という表現のコノテーション(言外に含蓄される意味合い)は・・

 まあ要は、サッカーの内容からすれば、誰もが順当と感じるベルマーレの着実リードのことだけれど、とはいっても、もちろん(一点を追いかける!)横浜FCも攻め上がり、それなりのチャンスの芽は作り出していたよ。しかし、肝心の「最後の瞬間」まで行き着けなかったんだよ。

 横浜FCの仕掛けプロセスでは、最後の瞬間だけをイメージした「脇目を振らない決死のフリーランニング」とか、シュートチャンスの臭いを嗅ぎ分ける、ボールがないところでの「感覚的な勝負アクション」等といった決定的プレーが出てこない。だから、どうしても、「アッ・・ゴールだ・・」と鳥肌が立つようなシチュエーションを演出できない。

 全体的なゲーム内容では、そんな「鳥肌シチュエーション」の量と質で、明らかにベルマーレに一日以上の長があったということです。ただ・・

 まず、レギュラータイム残り時間4分というタイミングで、右からのクロスボールが、まさに「唐突」に、ファーポストゾーンでフリーになっていた(どうしてフリーになったの??)荒堀謙次にピタリと合った。そして、その7分後のロスタイムには、コーナーキックからヘディングで折り返されたボールを、これまたまったくフリーになっていた(ホントに反省材料だぜ・・!!)野崎陽介が、チョンッと、ヘッドで押し込んだ。

 これでゲームがひっくり返り、横浜FCの大逆転劇が完遂したというわけです。

 ということで、試合後に両監督に聞いた。まず反町康治ベルマーレ監督。例によって、わたしが理解した意味合いのニュアンスをベースに、質問とコメントを分かりやすく整理します。

 ・・何か、このゲームは、今シーズンのベルマーレを象徴するような展開になったと思う・・サッカー内容では相手を凌駕している・・それでもゴールを割れない・・そうしているうちに、カウンターとかセットプレーといった偶発的なワンチャンスで失点して負けてしまう・・そんな、今シーズンのベルマーレが直面した(とてもサッカー的な!?)現象を、反町さんなりに、一言のキーワードで表現していただけませんか?・・

 「一言ネ〜・・まあ、自滅・・」

 「おっしゃるように、最近は、このようなゲームがつづいています・・しっかりとチャンスは作り出せているのに、実際のゴールは奪えない・・そしてベンチの我々は(まあ・・グラウンド上でプレーする選手たちも多分・・)、同じようなニオイを嗅いでいたっちゅうわけです・・そう、これは、とても危ないニオイだってね・・そして実際に・・」

 「それでも我々は、決して弱腰になってはいけない・・とにかく、確信レベルをアップさせられるように努力をつづけなければいけないということです・・」

 反町康治監督は、ちょっと自嘲気味に、そんなニュアンスの内容をコメントしてくれた。

 昨シーズンのレッズしかり、今シーズンのアントラーズやベルマーレしかり。良いサッカーで可能性の高いチャンスは作り出すけれど、それを決められずに、ズルズルと順位が後退していってしまう。そこには、とても深〜いテーマが内包されているのかもしれないね。

 まあ、勝者のメンタリティーとか、究極のエゴイストマインドとか、ゴールを決める(ゲームを勝ち切る)ためのキーワードはゴマンとあるけれど、やっぱり最後は、「本物ゴール体感の量と質」というテーマに行き着くということなんだろうね。

 もちろん、決定的な勝負所での粘り強いマーキングやカバーリング等などといった守備のキーワードもあるけれど、ここでは「ゴール」というテーマに特化しましょう。

 とにかく私は、実際のゴールという現象に、特別な(哲学的な!?)コノテーションが内包されていると思うわけなのです。だからこそ、歴戦の強者コーチは、選手の「心の弱さ」と闘いながら、究極の「しつこさ」で、超ハードなシュート・トレーニングを課すんだよね。

 わたしも、ドイツ留学時代には、歴戦の強者コーチとスター選手の人間的な弱さが「対峙」したときの、スピリチュアルエネルギーの(哲学的な!?)激しい揺動を、何度も何度も体感したっけ。

 超ハードなシュートトレーニング。爆発する怒りのぶつかり合いは日常茶飯事。それでも強者コーチは、決して弱腰になることはない。最後の最後まで、究極の厳しさで選手を?咤し、モティベートしつづけるのです。フムフム・・

 あっと・・次は横浜FCの岸野靖之監督。彼に対して、こんなことを聞いた。ここでもニュアンスを私なりに整理しまっせ。

 「いまの最初の質問(わたしの前に質問した方がいました・・)でも出ましたが、たしかに横浜FCの勝利は、限りなく奇跡に近い出来事のように感じます・・とはいっても、勝利は、勝利です・・特に、この一ヶ月以上も勝ち星に恵まれない横浜FCにとって、この勝利には、ものすごく大事で深い意味合いが内包されていると思います・・岸野さんは、そんな勝利の価値をポジティブに増幅し、継承していくために、何がもっとも大事なことだと考えますか?」

 それに対して岸野靖之は、こんなニュアンスのコメントをくれた。

 ・・それは、トレーニングです・・先ほども言いましたが、我々は、二つのテーマに特化したトレーニングを積んできました・・それは、基本技術と切り替えです・・トレーニングでできていなければ、試合では絶対にできないということです・・だからこの試合では、今週やってきたことにが結果につながったと思っています・・

 ・・基本技術とは、しっかりと止め、蹴るということだけではなく、それをトップスピードで、しっかりとボールを動かせることにつなげていく・・そして、そこでのパスの精度を上げる・・また切り替えだが、例えばスローインなどの切り替え場面・・我々は、その切り替え場面で何度も失点し負けてい る・・とにかく、その二つだけでも高めていけば変わると確信してやってきた・・

 ・・もちろんその先のテーマも山積みだが、まずは、その二つのテーマを進化させなければならないと思っている・・一勝したからといって調子に乗るのではなく、そのテーマを突き詰めていく・・残り3試合しかないけれど、次も同じような(忍耐強い)サッカーをやっていかなければならない・・

 ・・これから、選手も横浜FCもつづいていくわけだから、そのなかで、しっかりと伝統を作り上げたいと思っている・・この試合でも、我々は、最後の最後まで決して諦めなかった・・そして、そのことが勝利につながった・・

 ちょっとハナシが揺動してはいたけれど、(読売サッカークラブ時代の戦友でもある)岸野靖之が言いたかったことは、継続こそチカラなり(そこには究極の忍耐もある!)・・ということに集約されるでしょ。アグリーだね。

 それに、彼が言う二つのテーマという視点も正しいと思いますよ。そのテーマを極めていく作業を我慢強くつづけていれば必ず成果が出るはず。とにかく、このゲームでの勝利という「価値」の本質を見極め、ソレを極限まで増幅させ、発展させられることを祈って止みません。

 ガンバレ〜〜・・岸野〜〜・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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