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2011_WM予選_テーマは何といっても選手交代・・それで「あうん」の組織プレーが戻ってきた・・(ウズベキスタンvs日本代表、1:1)・・(2011年9月6日、火曜日)

たしかにウズベキスタンは、三次予選グループ最大のライバルだね。この1月にカタールで行われたアジアカップでも高い評価を受けたハイレベルな組織サッカー。守備においても、攻撃においても。

 ただ、だからこそ、日本はより有利な闘いを展開できると思っていた。

 人とボールをしっかりと動かし、「組織プレー」と「個人勝負プレー」のバランスを高い次元でキープしようとするなど、同じような発想の組織サッカーを志向するウズベキスタン。また、ホームということで、積極的に人数を掛けて攻め上がってくるに違いないウズベキスタン。

 だからこそ、組織サッカーという意味合いで明らかに一枚上手の日本にアドバンテージがあると思っていたのですよ。でも・・

 この試合の最大のポイントは、後半が始まる時点での選手交代。そこでザッケローニは、阿部勇樹に代えて、清武弘嗣を投入しました。

 私は、その交代を、選手たちが、「いつものイメージ」でプレー出来るように調整したのだと思っています。

 ところで、前半は、いつもの組織プレーイメージを持てていなかった!?

 ・・そうだね・・いつもように、攻撃に人数をかけられていなかった・・だから、ダイレクトパスを組み合わせた素早い組織コンビネーションも、うまく機能させられなかった・・

 ・・それは、人の動きが、どうも停滞気味になっていたからに他ならない・・攻守にわたって、出来る限り多く、数的に優位な状況を作り出すというイメージの組織サッカー・・その絶対的なベースである活発な人の動きは、互いの信頼関係がなければ活性化させられない・・そう、互いの、サポートやカバーリングに対する信頼関係・・

 要は、前半の日本代表のサッカーでは、遠藤保仁、阿部勇樹、そして長谷部誠の「距離感」というか、彼らの、攻守にわたる「あうんの組織プレーイメージ」がうまく高揚していかなかったということです。攻守にわたる「互いに使い・使われる共同作業」に対する相互信頼が、相応のレベルまで高まっていかなかった!? フムフム・・

 とにかく、基本ポジションを攻撃的ハーフの位置まで上げた長谷部誠にしても、いつものように守備的ハーフのポジションからスタートし、途中で(ザッケローニの指示で!?)少しポジションを上げた遠藤保仁にしても、互いのポジショニングやカバーリングといった共同作業イメージに「迷い」が生じてしまったのは確かな事実だったと思う。

 守備にしても、攻撃にしても、両人とも、自分のパートナーが「どこ」で「どのような意図」を持っているかに関する感覚的なイメージに確信が持てていなかった。だから、よりセーフティーなプレーをしようとする傾向が強くなり、積極的にリスクチャレンジを仕掛けていけなくなった。そして、だからこそ前半の日本チームは、組織サッカーの機能性を高揚させられなかった。

 もちろん、攻撃的ハーフとしてスタートした長谷部誠にしても、そのポジションに慣れる必要があったわけだしね。

 ここで、誤解を避けるために書くけれど、阿部勇樹のプレーは、決して悪くなかったと思いますよ。でも、彼がアンカー気味のポジショニングにいることで、どうしても、前の二人(遠藤保仁と長谷部誠)のプレーイメージに「微妙な揺動」が生じ、攻守にわたる確信レベルが揺らいでしまった。

 だから、例えば、「オレが前へ仕掛けていったら、必ずアイツが戻ってくれる・・オレが仕掛けていったら、必ずアイツがカバーしてくれる・・等など」といった、攻守にわたる互いのポジショニングやカバーリング(協力作業)に関する「あうん」のコンビネーション・イメージを高揚させ切れなかったと思うわけです。

 ちょっとハナシが冗長になってしまったように思うけれど、とにかく、後半の立ち上がりから清武弘嗣を入れ、長谷部誠と遠藤保仁が、いつもの「大人ダブルボランチ」に戻ったことで、チームが、攻守にわたって「いつもの組織サッカー・イメージ」を高揚させられた・・攻守にわたって、互いのポジショニング&人数のバランスをうまく噛み合わせられるようになった・・と思うわけです。

 皆さんも観られた通り、後半の日本は、とても良くなり、何度も決定機を作り出しただけではなく、実際に同点ゴールまで奪った。それだけじゃなく、その後も、決勝ゴールまで陥れてしまう勢いでウズベキスタンを攻め立てたっけ。でも・・

 そんな日本の攻勢だったけれど、時間の経過とともにウズベキスタンも勢いを復活させていった。そして最後は、勝負がどちらに転んでもおかしくないというエキサイティングな展開へとゲームが成長していった。

 やはりウズベキスタンは強敵だよ。その意味じゃ、FIFAランキングなんて、単なる数字的な参考値にしかすぎないよね。

 最後に・・、状況に応じて柔軟にチーム戦術を(選手の組み合わせや基本ポジショニング&役割=システムを!?)使い分けられるようにするというザッケローニの目標イメージについて。

 チームは生き物・・

 このゲームの前半で観られたように、選手自身は、攻守にわたる全力の汗かきプレーを積極的に実行していくという心の準備を整えてはいるけれど、フタを開けてみたら、プレーの確信レベル(あうんの相互信頼レベル!?)を十分に上げられない・・だから、プレーの連動性もアップさせられず、結果としてリスクチャレンジも繰り出していけないし、スムーズなコンビネーションプレーも影を潜めてしまう・・そして安定志向の(後ろ向きで消極的な!?)プレーに縮こまってしまう・・なんていう負の連鎖現象に落ち込んでしまうこともあるのですよ。

 もちろん、さまざまなチーム戦術イメージを、柔軟に(そしてもちろん効果的に!)使い分けられれば、それに越したことはありません。でも、チーム戦術の機能性は、11の個性(意志)や感覚(意図)の「微妙なリンク状態」によって大きく変わってくるわけだから、簡単な作業じゃありません。

 その意味でも、アルベルト・ザッケローニの今後の仕事に対する興味は尽きないわけだけれど・・。

 それにしても、前回のコラムでも書いたけれど、この試合でのザッケローニの采配(ゲームマネージメント)も、見事でした。

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 告知ですが、明後日(金曜日)から、私用で外国へ行かなければならなくなりました。たぶん、2週間くらい日本を留守にすることになります。

 ナデシコと北朝鮮の勝負マッチまではレポート出来ますが、その後はコラムを休みます。悪しからず。ではまた・・

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 ちょっと話題は変わりますが・・。

 このところ、わたしが愛用しているウエストバッグやバックパックについて質問してくる方々が増えています。ということで、それを軽くご紹介することにしました。

 ブランドは、METAS(メタス)といいます。

 以前「サザビー」という有名ブランドのチーフデザイナーを務めていたわたしの友人が、10年前に独立して作り上げたプライベートブランド。その、痒(かゆ)いところにも楽に手が届くっちゅう感じの、実用的なアイデアが満載されたビジネスツールが、とても気に入ってます。

 METAS(メタス) が扱っているのは、わたしが愛用するウエストバッグやバックパックだけじゃなく、ショルダーバッグやハンドバッグ、はたまたボストンバッグやブリーフケース等もあります。

 全体的なデザインはオーソドックス(どこか懐かしいスタンダード・・というのがコンセプトらしい)だけれど、高質な材料の選択や、その素敵な組み合わせだけじゃなく、細かな気配りアイデアにも感嘆させられるスグレモノです。使い込めば込むほど(長寿もコンセプトの一環!?)、愛着がわいてくる。そして、安物とは違い、古くなればなるほど、素敵なチャック金具やおしゃれな裏地といった「細かなデザイン」が光り輝いてくる。

 ちょっと誉めすぎ!? まあ私は、メタスの哲学と、それを具現化したバッグ類を、とても気に入っているのですよ。

 様々なタイプのバッグを日々のアクションに活用している方々こそが、その細かな気配りアイデアを高く評価するに違いないと確信する筆者なのでした。ちょっと「押し」過ぎ!? あははっ・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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