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2011_なでしこ_後半のペースアップ現象は、とても興味深かった・・(日本女子代表vsタイ代表、 3-0)・・(2011年9月1日、木曜日)

やっぱり、なでしこジャパンでは「人の動きの量と質」が命なんだよ・・

 攻めあぐんだ先制ゴールまでの60分間。ナデシコの攻めは、まったくといっていいほど、人とボールの動きが噛み合わなかった。

 ・・というよりも、人の動きの量と質が、あまりにも低レベルに過ぎたから、相手ディフェンスを混乱させられるだけのボールの動きを演出できなかった・・と言った方が正確な表現だよね。

 それに対して後半は、その立ち上がりから交替出場した宮間あやが、タテ方向への「素早いタイミングの仕掛けパス」を積極的に供給しはじめたことで、徐々にサッカーに「動き」が出てきたことも確かな事実だったけれど、前半の、ダイナミズムが感じられない重苦しい雰囲気は、そう簡単に晴れわたることはなかった。

 とはいっても、もちろん前半でも、たまには仕掛けのタテパスは出ていた。

 でも「それ」は、まさにミエミエのタイミングとコースの「自信なさげ」の仕掛けパスという体たらく。前戦での人の動きの量と質が低レベルなことで、ボールを、相手ディフェンスが予想できない(反応できない)くらい素早く、広く、タテへ動かすことが叶わなかったのです。

 だから、仕方なく中盤で安全な横パスをつなぎながらタイミングを探るわけだけれど、そんな「動きのない」サッカーでは、相手ディフェンスに、次の仕掛けパスのタイミングとコースを正確に予測され、ベストタイミグでアタックされてしまうのも道理というわけでした。

 とにかく前半では、ほとんどの仕掛け(タテ)パスが、タイ選手によってカットされていた・・っちゅう印象なのですよ。

 そりゃ、そうだ。何せ、「ヨッコラショッ!」ちゅう雰囲気の、まったく「闘う意志と確信」が感じられない恐る恐るのタテパスだから、タイのディフェンダーにとっては、まさに、飛んで火に入る夏の虫・・ってな感じだったに違いありません。

 そして日本の攻撃が、どんどんと心理的な悪魔のサイクルに陥っていき、そのことが逆に、タイ選手の確信レベルを目に見えて押し上げていった。

 そんな前半のゲーム展開を観ながら、「やっぱり組織サッカーは、あうんのイメージ連鎖が命だからな〜・・それに、中盤でのリーダーシップが期待された宇津木瑠美にしても、どうも意志のレベルがアップしてこない(動きに精彩を欠き、受け身のプレーに終始している)・・これじゃ、ボールの動きをアップさせられるような人の動きが出てくるはずもないか・・」なんて思っていた。

 ・・でも、相手は実力の劣るタイだし、この初戦で勝ち点を失うわけにはいかない・・ここは、やはり主力メンバーを出すしかないだろ・・でも誰を出すのが正解なのだろうか・・

 そして佐々木則夫監督が選択したのが、宮間あやだったというわけです。大正解・・

 これは、ニワトリが先かタマゴが先か・・ってな因果性のジレンマ議論になってしまうかもしれないけれど・・。

 わたしは、冒頭で書いたように、やはり「人の動き」こそが、全体的な「サッカーの動き」を活性化するための基本的なキッカケだと(動きの加速装置になるべき!)考えているわけですよ。

 でも、この試合では、後半から入った宮間あやが、まさに強引とも呼べそうなタイミングとコースの(アーリークロス気味の)ロングボールを、どんどんと決定的スペースへ供給するわけです。そして、明らかに「そのこと」で、最前線の人の動きが活性化し、全体的な「人とボールの動き」がダイナミックに変身していった・・と思う。

 そして、見事な、本当に見事なコンビネーションが決まり、全力スプリントで、タイ守備ブロックのウラに広がる決定的スペースへ飛び出した川澄奈穂美が先制ゴールを「流し込んだ」。

 このシーンで川澄奈穂美が魅せた全力スプリントには、ワールドカップで蓄積された確信パワーがみなぎっていた。

 またこのシーンでは、川澄奈穂美や永里優季、浮き球のダイレクトラストパスを決めた上尾野辺めぐみだけではなく、高瀬愛実や、右サイドバックの近賀ゆかりまでもが、最後のコンビネーションの流れに乗っていたという事実も、しっかりと把握していなければなりません。そう・・「動き」が格段に活性化していたのですよ。

 ところで・・、この一連の「仕掛けの流れ」のキッカケになったのも、ある意味「強引」な、宮間あやのアーリークロスだったよね。

 そのクロスボールは、相手のヘディングではね返されたけれど、その「はね返されたボール」に何人もの日本選手が強烈に反応した。だからこそ、次の決定的コンビネーションが生まれた。フムフム・・

 そんな、後半立ち上がりから先制ゴールまでの(徐々にペースアップし、前半の、ダイナミズムが感じられない重苦しい雰囲気を好転させていった!?)グラウンド上の現象は、とても興味深かったですね。

 とはいってもサ、やっぱり、ワールドカップで世界の頂点に立ったチーム(ベストメンバー構成)が完成型ユニットであるという事実は変わらないね。要は、彼女たちは、代替の効かないユニットということです。

 だから、ちょっと心配はつのるけれど、それでも、彼女たちを「休ませる」ためのターンオーバーメンバー構成で、大事な初戦に勝利を収められたことは、とても重要な出来事でした。

 さて、ここからホンモノの勝負がはじまる。

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 ちょっと話題は変わりますが・・。

 このところ、わたしが愛用しているウエストバッグやバックパックについて質問してくる方々が増えています。ということで、それを軽くご紹介することにしました。

 ブランドは、METAS(メタス)といいます。

 以前「サザビー」という有名ブランドのチーフデザイナーを務めていたわたしの友人が、10年前に独立して作り上げたプライベートブランド。その、痒(かゆ)いところにも楽に手が届くっちゅう感じの、実用的なアイデアが満載されたビジネスツールが、とても気に入ってます。

 METAS(メタス) が扱っているのは、わたしが愛用するウエストバッグやバックパックだけじゃなく、ショルダーバッグやハンドバッグ、はたまたボストンバッグやブリーフケース等もあります。

 全体的なデザインはオーソドックス(どこか懐かしいスタンダード・・というのがコンセプトらしい)だけれど、高質な材料の選択や、その素敵な組み合わせだけじゃなく、細かな気配りアイデアにも感嘆させられるスグレモノです。使い込めば込むほど(長寿もコンセプトの一環!?)、愛着がわいてくる。そして、安物とは違い、古くなればなるほど、素敵なチャック金具やおしゃれな裏地といった「細かなデザイン」が光り輝いてくる。

 ちょっと誉めすぎ!? まあ私は、メタスの哲学と、それを具現化したバッグ類を、とても気に入っているのですよ。

 様々なタイプのバッグを日々のアクションに活用している方々こそが、その細かな気配りアイデアを高く評価するに違いないと確信する筆者なのでした。ちょっと「押し」過ぎ!? あははっ・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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