トピックス
- 2012_世界トップサッカーというテーマ_まずは、バルセロナから・・(2012年1月10日、火曜日)
- 昨日の高校サッカー決勝。試合後の記者会見で、四日市中央工業高校の樋口士郎監督が、バルセロナのサッカーに言及した。
そのコメントが、誰の、どんな質問に対応したモノだったかは覚えていないけれど、とにかく樋口さんが、バルサの強さを演出する絶対的バックボーンは守備にある・・という事実を強調していたのは特筆だった。サスガ〜・・
「あのサントスが、二本以上の効果的パスを積み重ねられなかったことに衝撃を受けた・・バルサについては、パスワークばかりが注目されるけれど(われわれ専門家にとっては!?)彼らの積極的なプレッシング守備こそが、その強さの絶対的バックボーンだと思っている・・云々」
そう、まさにその通り。わたしの近著「サッカー戦術の仕組み」でも、そのことに言及したっけ。
まあ・・、サントスの中盤ディフェンスが、人数バランスと互いのポジショニングバランスに気を遣い「過ぎて」いたことも大きかったと思うね。だから、局面での(バルサの)ボールホルダーに対するチェックとプレッシャーが甘くなり、バルサの仕掛けイメージを(その膨張を!?)抑制し切れなかった。
その現象については、空いたスペースを探しながら、そこへ、スッ、スッと忠実に入り込んで、素早く正確な仕掛けの(ワンの!?)パスを受ける巧みなバルサ選手たち・・という視点もある。ただ逆に、サントス選手のボールホルダーへの寄せが甘く、バルサ選手に無為にスペースを与えてしまった(要は、自由にプレーさせてしまった・・)という事実もある。そうなったら、「あの」天才連中のこと、まさに自由自在ってなコトになっちゃうでしょ。
あっと・・バルサの守備がテーマだった。
サントスが描く守備(ボール奪取)イメージには、相手攻撃の「流れ」を上手く誘導することで、ボールを奪いかえす勝負所を、『自分たちが主体になって』コントロールしようとする意図があったと思う。でもさ、相手はバルサなんだぜ、あの天才連中にそんな余裕を与えたら、キリキリ舞いさせられてしまうのも道理だよね。
そんなサントス守備に対し、あくまでもバルサは、高い位置でのボール奪取と、そこからのショートカウンターを目指し、互いのイメージが正確に連動しつづける強力な組織プレッシングディフェンスをブチかましつづけるのです。
とにかく、攻守の切り替えが素早く効果的。そして、チェイス&チェックへの「入り方」が巧みで正確、そして忠実。「あの」天才連中が、そんな忠実なディフェンスまでも機能させちゃうんだから・・
彼らは、まるで、相手が攻め上がろうとする「ルート」が正確に見えているかのように、効果的に追いすがったり、ときには先回りしちゃったりする。そんなだから、相手が繰り出すドリブルにしてもパスにしても、効果的に「抑制」されちゃうのも道理。そしてだからこそ、「次」また「その次」の勝負所での協力プレスやボール奪取勝負を効果的に仕掛けていける。
言葉で表現するのは簡単じゃないね。とにかくバルサの守備では、ボールを奪われてから再び奪い返すまでのプロセス(選手たちの、ボール絡み、そしてボールがないところでの守備プレー)が、一つの美しいハーモニーを奏でているんですよ。
そんなダイナミックな組織守備の絶対的バックボーンは、繰り返しになるけれど、素早い切り替えからの忠実な爆発チェイス&チェック。サントス戦では、こんなシーンがあった。
久しぶりに高い位置でボールを奪いかえしたサントス。すかさず、エースのネイマールにボールを回す。次の瞬間、ネイマールの超速ドリブルが炸裂した。誰もが追いつけないスピードと巧みなコース取り。ただネイマールの背後から、黒い疾風が追いつこうとしていた。このゲームでは右サイドハーフを任されたダニエウ・アウベス。
それは、まさに爆発的な超速スプリントだった。見る間に、ネイマールに追い付き、そして素早く、正確に、ブラジル代表の後輩がコントロールする『ボール』めがけてフェアなタックルをブチかます。次の瞬間、ボールをブロックされたネイマールは、前方へ吹っ飛んでいた。
この、アウベスが魅せた全力スプリントこそが、バルセロナ守備の真骨頂だった。一人の例外もない全力チェイス&チェック。そして、その仕掛けアクションに呼応した、正確な協力プレスや(正確なマーキングを基盤にした!)インターセプトアクション。またまた繰り返しになっちゃうけれどネ・・あははっ・・
まさに、強烈な「意志のプレー」が連動し、結晶した実効ディフェンス。溜息が出た。
バルサの協力プレッシング守備は、相手が強ければ強いほど(要は、バルサ相手でも積極的に攻め上がってくるチームであればあるほど!)その効果レベルはアップする。
例えば昨シーズン欧州CLでのアーセナルや決勝でのマンU。またリーガ・エスパニョーラでも、ケースバイケースで、レアル・マドリーにもそのセオリーが当てはまることがある・・!?
とはいっても、逆に、バルサを知り尽くし、徹底してその強みを「消す」サッカーを仕掛けてくるチームが多いリーガ・エスパニョーラでは、ハナシは違う。どのように「違う」のかは、皆さんもご存じの通りですが、そんなサッカーと対峙しても、多くのケースで、最後は強固なディフェンスブロックをブチ破っちゃうんだから、バルサはスゴイ。
いや、ホント、サッカーは奥が深いね。ということで次には、そんなバルセロナの強力攻撃にスポットを当てましょうかね。
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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