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2012_UCL・・常識を超越するバルセロナ(その2)・・(バルセロナvsミラン、 3-1)・・(2012年4月4日、水曜日)

前半32分。ミランのノチェリーノが、バルセロナ守備ブロックの一瞬のスキを突いて同点ゴール(アウェーゴール!)をブチ込んだ。そして私は、不安に駆られた。

 そのミランの同点ゴールが決まるまでのバルサ。

 例によっての破壊的な(そして美しい!)人とボールの動きや、そのなかにタイミングよくミックスしていくレベルを超えた個のドリブル勝負でミランを圧倒し、流れのなかから何度も決定機を作り出した。だからメッシのPK先制ゴールは、まさに順当といえる果実だった。でも・・

 ミラノでの第一戦は、両チーム無得点の引き分け。ということでACミランは、両チームが得点を入れるというゲーム展開で引き分けに持ち込めばいい。

 そのミランが、待望の同点ゴール(アウェーゴール)を奪ったんだよ。その段階では、もちろん彼らが準決勝進出ということになる。「あの」イタリアサッカーを代表する強力ディフェンス。そんな猛者が、モティベーションを格段にアップさせていく。ちょっと不安がつのった。

 それだけじゃなく、「流れ」のなかで繰り返し決定機を作り出していたバルセロナだったけれど、どうしてもゴールを奪うところまで行き着けなかったんだよ。そんなゲーム展開も、不安を増幅させた。

 でも結局サッカーの神様は、バルセロナに微笑んだ(ツキに恵まれた!?)。バルセロナが奪った三つのゴールは全て、どちらかといったら偶発要素の方が先行するチャンスから生まれたんだよ。

 ・・前半11分のメッシに対するアントニーニのファールにしても・・前半41分コーナーキックの際に、セルヒオ・ブスケッツを掴んで引き倒してしまったネスタのファールを審判が見逃さなかったことや(もちろんPK!)・・後半8分のカウンターシーンで、メッシのシュートが相手に足に当たり、ピタリと(決定的スペースへ走り抜けていた!)イニエスタの足許に転がっていったシーンにしても・・

 たしかに終わってみれば、バルセロナの「ロジカルな圧勝」ということになった。でもそこには、数字では推し量(はか)り切れないドラマファクター(神様の脚本の要素)もテンコ盛りだった。あ〜、面白かった。

 ところでバルセロナのサッカー。

 最終勝負のツボについては(また、全てのスタートラインとしての守備や、レベルを超えた動きなどなどのテーマについても)、前回のコラムを参照して欲しいのですが、ここでは、相手ディフェンスに狙われている味方の足許に「敢えて」パスを付けるバルセロナ・・っちゅう、常識を超越した彼らのプレーに(簡単に)注目しようと思います。

 もちろん(バルセロナの)バスレシーバーは、相手ディフェンスに狙われていること知っている。また、その周りの(ボールがないところからアクションをスタートさせる)チームメイトにしても、次の瞬間に起きるシーンを、明確にイメージ描写できている。

 だからこそ、ズバッという「足許パス」が出され、それを受ける(バルサの)パスレシーバーに(ミランの)選手がアタックを仕掛けた次の瞬間には、そのアタックをあざ笑うかのように、ダイレクトで、次のスペースへボールが展開されちゃうんだよ。

 もちろん「そこ」には、味方がいる。最初に狙われていたバルサのパスレシーバーは、事前に、「そこ」にチームメイトがいることを(=そのスペースに味方が入り込んでくることを!)完璧にイメージできていたっちゅうことです。

 そして次の瞬間、アタックを仕掛けたミラン選手は、完璧に「置き去り」にされ、ウラのスベをスを攻略されてしまう。

 バルサの試合では、そんな魅惑的コンビネーションがテンコ盛りなんだよ。観ているこちらは楽しくて仕方ない。

 そんな展開がつづくわけだから、相手ディフェンスが様子見になってしまう(足が止まってしまう=ボールを奪い返すための協力コンビネーションが機能しなくなってしまう!)のも、まさに当然の成りゆきということです。

 とにかく、バルセロナが展開する、サッカーの常識を超越するプレー(組織と個のプレーが頂点バランスを魅せる超コンビネーション!)の数々に、舌鼓を打っていた筆者でした。

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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