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2012_EURO(11)・・スペインの美しさと強さばかりが目立った勝負マッチだった・・(スペインvsフランス、 2-0)・・(2012年6月24日、日曜日)

これは・・

 ゲームの「入り」を観ながら、そんな感嘆詞が口をついた。

 予想されたことではあったけれど、案の定フランスは、完璧に守備ブロックを組織し、ディフェンスのやり方を徹底してきたのですよ。

 特に、才能あふれるナスリをベンチに置いてまでも、サイドゾーンの守備を固めるというゲーム戦術は目立っていたね。まあナスリの場合、汗かき守備をやらないとか、ボールをこねくり回しすぎるといった問題点は指摘されていたわけだけれど・・

 フランスのローラン・ブラン監督は、スペインにボールを支配されることは仕方ないと考えたんだろうね。たしかに、いまのフランスが、「あの」スペインに対して(積極的に仕掛けていく!)真っ向勝負を挑んでいったら、すぐにでも「先」が見えちゃう。

 だから、スペインがボールをキープするなかで、いかに高い位置でボールを効果的に奪い返し(出来れば)ショートカウンターを仕掛けていくのか・・という勝負ポイントに集中し、そこでチーム全員のイメージが連動するようにマネージした。

 そんなだから、フランスは、スペインのパス回しに安易にアタックを仕掛けていくのではなく、あくまでも冷静に、彼らのトラップ&パスのなかの「ちょっと したブレ」を誘発しちゃうような守備アクション(ボールへの寄せとかアタックフェイントなど!)を仕掛けることで、次のパスが予測できる状況を演出すると いうプレーイメージで統一されていた。

 スペインのパス回し(素早いボールの動き)は、フランス守備の組織バランスの「乱れ」を誘っているわけだからね。

 フランス選手が、安易に「飛び込もう」ものなら、トントント〜ンと素早くボールを動かすことで、その守備アクションで出来た穴(=スペース)を攻略しちゃうんだよ。

 だから欧州エキスパート達の間では、そのスペインの(バルセロナの!?)ボールの動きのことを、「悪魔のささやき」なんて呼んだりする。

 まあ、だからこそ、そんなスペインの(バルセロナ的な!?)意図が明確に分かっているフランスは、あくまでも冷静に、そして忠実に「待つ」のですよ。

 そして何度か、まさにフランスが意図したカタチでボールを奪いかえすというシーン(我慢の賜物!?)が演出される。

 でもサ、あっ・・ここだ〜!・・フランスのショートカウンターが炸裂するぞ〜!・・なんて思った次の瞬間には、信じられないほど素早く攻守を切り替えたスペイン選手が、全力スプリントで戻り、効果的な協力プレスでボールを奪い返しちゃうんだよ。

 そして、今度はスペインが、素早くショートカウンターを繰り出していく。

 フランスは、直前の(自分たちの)ボール奪取からのショートカウンターチャンスに乗っていくことで「前掛かり」になったわけだけれど、逆にスペインは、そのピンチを逆手にとってチャンスにしちゃうんだ。まあ・・舌を巻いた。

 ところで、冒頭の「感嘆詞」。それは、「普通だったら・・」っちゅうニュアンスでした。

 「あの」フランスが、「こんな」ガチガチ勝負タクティクス(ゲーム戦術)をブチかましてきたんだからね、観ているこちらが、これじゃ「あの」スペイン だって危ない・・なんて感じるのも自然の成りゆきだと思うよ。でも、スペインは、私の想像力をはるかに超越していた。フ〜〜・・

 そう、スペインが、(私の)想像力をはるかに超えた先制ゴールを叩き込んでしまうのです。

 スペインは、フランスが強化したサイドゾーン守備を、流れのなかで完璧に崩して先制ゴールを挙げちゃった。その演出家は、言わずと知れたスペインの天才イニエスタ。

 彼のドリブルで、3人のフランス選手が、視線と意識とアクションを引きつけられた。そして最後の瞬間、イニエスタが、「チョンッ!」というスルーパス を、フランスディフェンスの背後に広がる決定的スペースへ送り込んだ。そして「そこ」には、(イニエスタの才能に全幅の信頼を置く!?)左サイドバックの アルバが、ベストタイミングで忠実に走り抜けていた・・っちゅうわけです。

 最後は、アルバが送り込んだ、ファーポストゾーンへの素晴らしい「一山越えクロス」が、後方から3人目として走り込んでいたシャビ・アロンソのアタマにピタリと合った。

 これで勝負あり・・そのゴールだけじゃなく、ゲームの勝負もネ・・

 その後は、動的な均衡状態がつづく。たしかに後半20分あたりで、両チームともに選手を交代させ、ちょっとゲームの流れが変わりそうになった(実際に両チームがチャンスを作り出した)けれど、それでも結局フランスは、強力なスペイン守備を崩し切れずにゲームセット。

 とにかく、スペインの美しさと強さばかりが目立ったゲームだった。

 そのスペインの美しさと強さの絶対的バックボーン。その秘密は、人とボールを「あるリズム」で動かしつづけるという組織サッカーだけじゃなく、そんな「天才連中」が魅せつづけるレベルを超えた守備意識(忠実な汗かきディフェンス)に「も」あるんだよ。念のため・・

 さて、今日はこれから、「J2」のジェフ千葉vs湘南ベルマーレを観に行く。明日朝にアップする予定のイタリア対イングランド戦レポートの冒頭で、またまた「でもまず・・から・・」ってな文章が入るかもしれません。

 私にとっては、どんなレベルのサッカーでも、そこには大いなる学習機会が横たわっているんですよ。あははっ・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 





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