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2012_EURO(12)・・極限テンションが支配した勝負ドラマだった・・でもまず「J2」から・・(イングランドvsイタリア、 0-0, PK=4:2)・・(2012年6月25日、月曜日)

ということで、今回「も」、J2のエキサイティング勝負マッチをコラムの導入部にします。

 ジェフ対ベルマーレ。木山隆之vsチョウ・キジェ。J2トップ争いの主役である両チームともに、攻守にわたる忠実なハードワークで「J2」をリードする。

 そんな2チームのガチンコ勝負だから、ホント、ものすげ〜面白かった。最後の最後まで気を抜くことのない攻守にわたるフルパワーの仕掛け合い。誰もが手に汗握った。

 とはいっても、決してノーガードの殴り合なんていう低次元のせめぎ合いなんかじゃない。互いに、ボールを失ったら、1人の例外なく、全力でディフェンスに戻る。そして、また全力で攻め上がっていく。とてもハイレベルな仕掛け合いだった。

 私は、何か、サッカーの原点を観たような気がしていた。最後は、誰もが、責任をもって自由にプレーせざるを得ないサッカー。積極的に、リスキーでハードな(汗かきの)仕事を探しつづけなければならない。

 だから試合後の記者会見で、両監督に、ちょいと難しい質問を投げかけた。それに対し、チョウ・キジェも、木山隆之も、それは、それは立派な受け答えをしてくれた。2人とも、インテリジェンスとグッドパーソナリティーを備えた優れたプロコーチ(ストロングハンド)だよ。

 えっ!? そこでどんなハナシをしたかって? それは、他のサイトを参照してくださいな。

 まあ・・ね・・

 そこでは、常に押し上げるコンパクト守備ブロックを効果的に機能させること、そして、相手の一発ロングパスに対し、「予測ベース」で素早く戻って決定的 スペースをカバーすることという、ある意味で背反する二つの要素を、いかにバランスよく効果的に機能させるのかというテーマとか、何故こんなに面白くエキ サイティングな高質マッチになったのか・・などといったテーマが話し合われたんですよ。あははっ・・

 とにかく、J2も大きくレベルアップしている・・だから、勝負だけじゃなく、サッカーそのものも大いに楽しめるゼ・・っちゅうことが言いたかった筆者なのでした〜。

 あっと・・。日本サッカーにとってもっとも大事な要素である「日本人プロコーチ」というテーマもあった。このところ、「そこ」でも安心感が広がっている筆者なのです。

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 さて、イングランドとイタリアの勝負マッチ。

 最後の最後まで、最高テンション(緊張感)に包まれたギリギリの勝負ドラマが展開された。心から堪能した。

 ゲーム全体を通してみた場合、イタリアがイニシアチブを握ったとすることに異論をはさむ方はいないでしょ。そう、攻撃にもしっかりと人数をかける「イメチェン」のイタリアが、ゲームの流れを牛耳ったのです。

 そして彼らは、流れを支配するだけじゃなく、決定的チャンスを何度も作り出した。チャンスの量と質という視点でも、イタリアが凌駕したのですよ。

 対するイングランド。彼らは、ルーニーを中心に、カウンターやセットプレーからチャンスを狙った。でもやっぱり、彼らの強さのバックボーンは守備にあり・・だね。

 イタリアが繰り出す、一発勝負スルーパスやウラ(決定的スペース)狙いの一発ロングパス攻撃に対しても、最後の瞬間には、必ず「誰かが」いるんだよ。そ して、身体でブロックしたり、必死に伸ばし切った足でボールを引っかけたりする。イングランドの猛者連中は、常に「そこにいる」。この集中力こそが、イン グランドの伝統ということだね。素晴らしい。

 ところで最後のPK戦だけれど、イタリアが勝ったからこそ、ピルロの「チカラを抜いた」PKは伝説になる・・と思う。イタリアの遠藤保仁!? あっ、逆か。あははっ・・。とにかく、ピルロが魅せた、天賦の才が光り輝いたシーンではありました。

 ということで、このゲームのポイントだけれど、それは、前半の半ばを過ぎてから「ゲーム全体の構図」が落ち着くまでの「立ち上がりの時間帯」にあった。そこでのゲームの流れの変化、変容は、ちょっと興味深かったのです。

 キックオフからの最初の2分間は、予想どおりの展開になりかけた。イメチェンのイタリアが「人数をかけて」攻め上がり、イニシアチブを握ったのです。そ れだけじゃなく、まさに唐突に、イングランドゴールの左ポストを直撃するミドルシュートまでブチかましちゃう。デ・ロッシ・・

 でもネ、この大ピンチが、イングランドを強烈に刺激するんだよ。まず落ち着き、安定して立ち上がろう・・なんて思っていたはずのイングランドが、一発ビンタを食らい、俄然、奮い立った!?

 そして、その大ピンチの1分後には、素晴らしい組織コンビネーションから、右サイドバックのグレン・ジョンソンが、イタリアの天才GKブッフォンの眼前の数メートルからフリーシュートを放っちゃったりするんだ。

 そのシュートは、イタリアが誇る天才GKブッフォンの正面に飛んだから事なきを得たけれど、この二つの大チャンス(大ピンチ)が、ゲームの雰囲気を覚醒 させた・・っちゅうことなんだろうね、そこからゲーム内容が、ダイナミック&エキサイティングに「成長」していくんだよ。フ〜〜・・

 大幅なイメチェンを果たしたイタリアだけじゃなく、イングランドも、テクニック的に昔のイメージを払拭するような組織サッカーを魅せる。両チームともに、攻守にわたって、とてもハイレベルで積極的なサッカーを展開するのですよ。

 そんなせめぎ合いのなかで、両チームともに決定機を作り出す。

 ・・ルーニーの、身体を投げ出したダイビングヘッドがイタリアゴールを襲う・・イタリア、バロテッリがタイミングよく決定的スペースへ抜け出して決定的チャンスを得る・・イタリア、カッサーノが、続けざまに危険なミドルシュートを放つ・・フ〜〜・・

 でも、その後は、徐々に、前述した「基本的なゲームの構図」に落ち着いていった。そんなゲーム展開の変化を「司った」要素のうちで、もっとも大きかったモノは、やっぱり、局面での1対1を制する「個のチカラ」と、チーム戦術(コンセプト)の徹底度だったんだろうね。

 とにかく、いつ、どちらがゴールを決めてもおかしくないという最高テンション(最高の緊迫度)のエキサイティング勝負マッチではありました。繰り返しになるけれど、ホント、心から堪能した。

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 





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