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2012_EURO(4)・・二つの強豪チームが開幕マッチで対峙したときの典型的な構図・・(フランスvsイングランド、 1-1)・・(2012年6月12日、火曜日)

こりゃ、両チームともに、ミドルシュートやセットプレーしか攻め手がないよな・・

 互いに(全体ムーブメントを活性化するといった・・)リスクを冒そうとせずにディフェンスを固める両チームの「注意深いサッカー」を観ながら、そんなことを考えていたんですよ。でも、その矢先、まさに唐突に、イングランドが決定機を作り出してしまう。前半15分のこと。

 決定的スペースへ飛び出したミルナーへのスルーパスが見事にきまったのです。でも、GKまで外し、まったくフリーで、後はボールをゴールへ流し込むだけだったミルナーの「腰」が回らず、打たれたシュートは、フランスゴールのサイドネットへ。ちょっと情けなかったね。

 とはいっても、それまで前後のアクティブなムーブメント(リスキーな仕掛け)が出てこなかったゲーム内容だったから、その決定的チャンスには、「刺激」という意味合いで大いに期待したモノです。でもその後は、またまた探り合いの展開へと落ち込んでしまう。フ〜〜・・

 よく私は、動的な均衡・・なんていう表現を使うけれど、それは、人数を掛けて攻め上がるリスクチャレンジを両チームともにブチかますだけじゃなく、次のディフェンスも(素早い攻守の切り替えと、クレバーな前後のポジショニングバランス整備などをベースに)しっかりとマネージさせている状態のこと。

 それに対してこの試合は、まあ、静的な(ゲーム構図の)平衡状態。イニシアチブを取るフランスが「注意深く」攻め上がり、守備ブロックを強固に組織するイングランドが必殺カウンターを狙う・・

 でも、そんな展開に、やっと「変化」が訪れるのです。そう、イングランドの先制ゴール。それは、案の定、フリーキックから。そしてゲームが激しく動きはじめる。フランスが、両サイドバックのオーバーラップや、3列目の攻撃参加など、攻勢に打って出たのです。

 そうそう、これだよ・・

 それに対し、守備ブロックをより一層固めるイングランド。屈強なディフェンスブロック。攻勢に出たフランスが、まったくといっていいほど決定的スペースを攻略できないのも道理だったね。

 フランスは、両サイドバックをもっともっと活用して(攻撃を広く!)サイドゾーンから攻め込み、イングランド守備を「開かせる」べきだった。そして「そこ」から、ロビングのクロスじゃなく、ニアポストゾーンへの鋭いクロス(ラストパス)をどんどんブチかましていく。そんな「変化」があれば、彼らのミドルシュートだって、もっと実効ある結果を生んだはずだよ。

 要は、ボールはしっかりと動かせるフランスだけれど、いかんせん、最終勝負のプロセスにおいて、決定的スペースへ飛び出していく「3人目、4人目」の動きが活性化しないっちゅうことだね。それでは、ゲームを支配し、しっかりとボールを動かせているのに、イングランドの「懐に入っていけない」のも道理・・

 もちろん、「一発のウラ突きスルーパス」は仕掛けるし、単純なワンツーコンビネーションも繰り出していく。でも、そんなアクションのほとんどで、パサーと、一人のフリーニング選手しか絡まない。これじゃ、イングランド守備にとっても、まったく怖くない。ホントの勝負は、ボールがないところでの複合的な動きで決まるのに・・

 ということで、イングランドの先制ゴールという刺激によって、ゲームの内容自体は大きく活性化したけれど、どうも、流れのなかからチャンスを作り出せないフランス・・っちゅう構図が続くのです。でも・・

 そう、イングランド先制ゴールの9分後、フランスが(これまた唐突な!?)同点ゴールを奪ったのですよ。案の定、ナスリのミドルシュート。見事なミドル弾だったけれど、結局攻め手は(その同点ゴールの1分前にディアッラの惜しいヘディングシュートが炸裂した!)セットプレーとミドルシュートくらいしかない。これでは・・

 ということで、同点になった後は、後半も含め、ゴールが入る前の静的な(ゲーム構図の)平衡状態に戻ってしまった。

 まあ、ビッグトーナメントの開幕マッチで、二つの強豪チームが対峙したときの、典型的なゲームの構図だったっちゅうことですかね。もちろん、そのことには、このグループの残り2チームが、力の劣る(!?)ホストカントリーのウクライナとスウェーデン・・ということもあるしね。

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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