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2012_EURO(5)・・フ〜、オランダはクビの皮一枚か・・でもまず「J2」から・・(横浜FCvsトリニータ)そして(オランダvsドイツ、 1-2)・・(2012年6月14日、木曜日)

昨日、ニッパツ三ツ沢球技場でおこなわれた横浜FC対トリニータ(大分)のリーグ戦をスタジアム観戦してきました。

 湯浅健二のHPをフォローされている方々はご存じのように、今回の「EURO」と日本代表の勝負マッチ(オーストラリア戦)は、様々な事情でテレビ観戦ということになってしまったのですよ。だから、昨日のスタジアム観戦は、新鮮な感覚で楽しめた。やっぱりスタジアム観戦が最高だね。

 試合は、山口素弘によって、とても良くなっている横浜FCがゲーム内容的には凌駕したけれど、結局は、田坂和昭が率いる大分トリニータの、粘りの組織サッカーが果実をモノにすることになった(トリニータが0-1で勝利)。

 「あの」チームを「ここまで」高みで安定させている田坂和昭のプロコーチとしてのウデは賞賛に値する。彼は、山口素弘と同じ大学(東海大学)の先輩と後輩の関係なんだってね。田坂和昭が一年生のとき(彼は一年の時からレギュラーで出場していたそうな・・)山口素弘は四年生でチームの中心だったということです。フ〜ン・・

 とにかくここでは、一つのテーマに絞り込みます。横浜FCのカイオ。

 これまでのプレーぶりからは想像できないのだけれど、カイオが、素晴らしい「汗かき」のプレーも披露したんですよ。攻撃においても、守備においても。だから山口素弘さんに質問した。「何かキッカケがあったんですか・・?」

 それに対し山口素弘さんは、こんなニュアンスのコトをコメントしてくれた。曰く・・

 ・・彼も試合に出たかったんでしょうね・・トレーニングで、よく頑張っているんですよ・・そうですね〜、目に見えて良くなってきたのは、この2週間くらいですかね・・とにかくプレーのスピードが上がったんですよ・・もちろん、先ほども言った、ボールの受け方も含めてネ・・

 フムフム・・。要は、山口素弘によって、フェアな競争環境が、とても上手くマネージされているっちゅうことだね。誰でも、山口素弘が言う戦術的なコンセプトに基づいて全力を尽くせばゲームに出られる・・。その「事実」を、チーム全体が、しっかりと理解している。

 また山口素弘さんは、カイオについて、ボールをしっかりと動かすこと、そのためも含めた(!?)ボールの受け方に大きな進歩の跡があると言っていた。まあ「そのメカニズム」のことを「プレースピード」と表現していたんだろうね。ナルホド〜・・。良いね。

 ・・ホンモノの組織サッカーを機能させる・・だからこそ(カイオのような)個の才能が、本当の意味で活かされる・・才能に恵まれていればいるほど、しっかりと組織プレーにも精進しなければならない・・「それ」があってはじめてホンモノの「良いプレイヤー」になれる・・そして「そのこと」を、カイオ自身がしっかりと理解しはじめた・・

 カイオの「良いサッカーに対するイメージ的なブレイクスルー」だけれど、それって、日本代表の本田圭佑にも当てはまる。それも、この2週間だってサ。もちろんこの「2週間」という期間については、カイオと本田圭佑の「プレーイメージ的なブレイクスルー」に関する実際の軌跡を事細かにカバーできていない筆者の、独断と偏見だぜ。あははっ・・

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 ちょっと前段が長くなった。さて、オランダ対ドイツ。この試合については、ポイントを絞り込んで、短くまとめることにします。

 その集約されたポイントは、才能という諸刃の剣・・

 個の才能レベルからすれば、明らかにオランダに軍配が挙がる。ロッベン、ファン・ペルジー、アフェライ、そして、スナイデルにファン・ボメル等など。

 そんなだから、オランダの最終勝負が、個の勝負プレー(まあ・・勝負ドリブル)を限りなく前面に押し出してくるのも無理ないところなのかもしれないね。ただ「それ」は、最終勝負プロセスにおける人とボールの動きを「不活性化」させてしまうという負の側面も持ちあわせている。

 要は、オランダの最終勝負が、かなり「個の仕掛け」に偏りがちになっている・・っちゅうことです。だから、勝負最終プロセスでの(特に3人目、4人目の!)人の動きだけじゃなく、ボールの創造的な動き(守備のイメージのウラを突いてしまうようなボールの動き)も出にくくなる。そして、だから、単発のワンツーは除く、相手守備をキリキリ舞いさせてしまうような「複合的コンビネーション」も演出できない。

 それに対してドイツは、まず組織プレー。何といっても「複合的」コンビネーション。

 それがあるからこそ、たまに飛び出す、ルーカス・ポドルスキーやトーマス・ミュラー、はたまたエジルといった個の才能による個人勝負が、抜群の効果を発揮する。

 また、守備的ハーフの二人(シュヴァインシュタイガーとケディーラ)のプレーも、とても素晴らしい。

 守備でのリーダーシップ(守備の起点マネージメント等)は言わずもがなだけれど、攻撃でも、二人が交替で、ゲームメイカー、リンクマン、チャンスメイカー、ミドルシューター、そしてタテのポジションチェンジの演出家などととして、抜群の存在感を発揮するんだよ。

 この試合でドイツが挙げた二つのゴールにしても、シュヴァインシュタイガーとマリオ・ゴメスの「イメージ・シンクロ」によって生み出されたわけだからね。

 もちろん、マリオ・ゴメスの決定力や、その最後のコンビネーションが成就する前プロセスでのメスト・エジルやトーマス・ミュラー、はたまたルーカス・ポドルスキー等が展開した「組織プレー」もあったわけだけれど・・

 まあ、ボールがないところで勝負を決めちゃう(それがチームのコンセプトとして深く浸透している!?)ドイツの「スーパー組織サッカー」が炸裂した・・っちゅうことですかね。

 ハナシは変わるけれど、それにしてもドイツの守備は強い。本当に強い。もちろん、マニュエル・ノイヤーというスーパーGKも含めてね。

 前回のコラムでピックアップしたセンターバックコンビ、両サイドバック、前述したダブルボランチ、そして最前線から攻守にわたって「複合的な汗かきプレー」をつづける攻撃的ハーフのトリオ(ルーカス・ポドルスキー、メスト・エジル、トーマス・ミュラー)といった強者どもが(また、たまにはワントップのマリオ・ゴメスも!!)、ボールを取られたら、瞬間的に攻守を切り替え、最高の集中力で『汗かきの仕事を探しつづける』のですよ。

 「それ」こそが、もっとも優れた「自己主張」なんだな。自分から汗かきの仕事を探しつづけるプレー姿勢・・

 ドイツの強いところは、そんな汗かき仕事を「率先して探すこと」こそが、社会からレスペクトされるパーソナリティー(自己主張)だと、深く理解されているところにあるんだね。

 ところで、このチームの中核を為すプレイヤーたちは、1990年代の半ばから始まった「ドイツサッカー再生プログラム」によって成長してきた強者です。

 当時、そのプログラムの青写真を描いたドイツの友人達と、そのプログラムについて、何度も、深くディスカッションしたことがある筆者は、この強いドイツ代表チームを観ながら、感慨に耽(ふけ)っているわけです。あははっ・・

 でもサ・・、一度落ち込んだドイツサッカーを再生させた「その」プログラムの本質的なトコロを深く知見できたことは、いまの私のアクティビティーの根幹を為しているわけだから、その機会を与えてくれたドイツサッカーには、感謝だよな〜・・

 さてグループB。ポルトガルがデンマークに勝ったから、オランダは「クビの皮一枚」残った。

 グループリーグの最終戦で、ドイツが、これまた素晴らしい組織サッカーを魅せるデンマークを振り切り、オランダが、ある程度の点差でポルトガルを粉砕すれば、オランダの決勝トーナメント進出が決まる。わたしは、そのことを一番望んでいる。何せ、諸刃の剣とは言っても、やっぱりオランダのサッカーは高質だし、魅力的だからね。

 最終節では、何といってもオランダ対ポルトガル戦が見所。いまから楽しみです。

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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