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2012_J2・・両監督との会話・・テーマは自信とフェアな競争環境、そしてリーダーシップ・・(ヴェルディvsベルマーレ、 1-2)・・(2012年4月22日、日曜日)

今回は、両チームの監督との会話を紹介します。 もちろん記者会見でのことですよ。テーマは、自信とリーダーシップ。

 まず、ゲームの進行とともに自信とサッカー内容をアップさせつづけ、ついでの結果までもぎ取ってしまったベルマーレのチョウ・キジェ監督。彼に、こんな質問を投げた。

 「1点差に詰め寄られてからタイムアップまでの7分間、わたしは、そこでのプレー内容に、ベルマーレ進化の核心を見ていました・・選手たちは、決してバタつくことなく、またボールウォッチャーになって足を止めることもなく、あくまでも主体的にボールを奪い返しにいっていた・・要は、次のドリブル突破や勝負のパスをイメージし、しっかりと対応していたと思うのです・・」

 またまた、長〜くなってしまいそう・・。ということで、質問はつづきます。

 「チョウさんは、勝った気がしないなんて、ゲーム内容はまだまだと言っていたが、わたしは、ゲームを追うごとにベルマーレが自信を深め、プレーにも確信的なエネルギーが充ちあふれるようになっていると思っている・・要は、自信と確信のレベルがどんどんアップしているということだが、チョウさんは、そのポイントについて、どのように実感されているだろうか?」

 それに対してチョウ・キジェは、いつものように真摯に、そして豊富な語彙を駆使して、次のようなニュアンスの内容をコメントしてくれた。曰く・・

 ・・眼前のゲームに勝つことで、何が生まれてくるのかというテーマですよね・・いま湯浅さんには、1点に詰め寄られてからタイムアップまでの数分間のプレー内容がよかったとお褒めいただいたけれど、ボクは納得していないんですよ・・まだまだ課題が多いと思っているのです・・だから先ほどの、勝った気がしないなんていう表現になった・・

 ・・また、今日の試合については、私が動くのも(選手交代や戦術変更指示のこと!?)遅れたと反省しています・・最後の時間帯のディフェンスについても、前節のFC横浜戦のように、うまく時間を進ませるという発想の(余裕の)プレーができれば良かったのですが・・その意味で、守備にも課題があると言ったのです・・とにかく選手たちに、自ら考えながらプレーさせる(決断し、勇気をもって実行させる・・)というのが基本的な姿勢なのですよ・・

 まあ、自信の深化&進化についての直接的な言及はなかったけれど、彼の発言の「行間」を読み取ることにしましょう。

 ということで、チョウ・キジェとは、自信というテーマで「会話」したけれど、その質問に至ったのは、J1の「ベガルタ仙台」とベルマーレの発展イメージが重なったからです。

 昨日の、「ベガルタ仙台vsFC東京」を観戦し、今朝、高速バスで帰京した同僚の(フリーランス・ジャーナリスト)の白髭隆幸さんから、ベガルタは、手倉森監督も含めて、ものすごい自信にあふれたプレーを魅せつづけていた・・というハナシを聞いたのですよ。

 そう、「J1」でも「J2」でも、ダークホースがリーグのトップをブッちぎっている。まあ、彼ら(ベガルタとベルマーレ)をダークホースと呼ぶのは失礼かも知れないけれど、まあ・・ネ・・

 この両チームに共通するテーマ・・。それこそが、ゲームを通して進化&深化させつづけている自信と確信なのです。何か、とても共通した要素があるように感じるでしょ?

 これからも、両チームを通して、このテーマを突き詰めましょう。何せ、イレギュラーするボールを足で扱うという不確実この上ないサッカーは、まさに本物の心理ゲームだからネ。

 あっと・・ベルマーレについては、もう一つ興味深いテーマがあった。それは、チーム内でのフェアな競争環境の整備。

 そのテーマじゃ、もちろん監督のストロングハンド(優れたパーソナリティーに支えられた心理マネージメントのウデ!)が試される。

 別な方からの質問で、これまで起用されていなかった選手が良いプレーを披露したことについて聞かれたチョウ・キジェが、こんなニュアンスの内容をコメントしていた。曰く・・

 ・・選手の「層」がアップしている?・・このチームにゃ、スターはいませんからネ・・とにかく、全員にチャンスがあるんですよ・・先週のトレーニングプロセスのなかで、今日は「このチーム」で試合に臨むことになりました・・もちろん突貫工事的な準備はやらなければならなかったけれど、まあ、うまくいったですかネ・・その意味で、選手たちにはアタマが下がる・・とにかく、たまたま、それまで出ていなかった選手が活躍したというだけです・・

 ・・もちろん彼らも、ゲームで実際にプレーするなかで発展を遂げたということなんですが、そのことで(この試合に先発した新しい選手たちが活躍したという事実がチーム内に浸透していくことで!?)、チーム内の誰にでも平等にチャンスがあるということが認識されたことには、とても大事な意味合いが内包されていると思うんですよ・・

 ・・とにかく、フェアな競争が大事・・その環境をこれからも整備していくつもりです・・

 いいね、チョウ・キジェ。これからもウォッチしていきまっせ。

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 さて、ということで、次はヴェルディの川勝良一監督。

 彼が、記者会見の冒頭で、こんなニュアンスの内容をコメントしたのです。曰く・・

 ・・多少、硬くなったかもしれない・・とはいっても、大きく崩されるカタチはなかったし、全体的には、我々の方が良いパフォーマンスを魅せられたと思っている・・ただ、このチームは、まだまだ落ち着きに欠ける・・だから、内容では優っていても勝ち切れないというゲームがつづいてしまう・・

 ・・このチームは、何かあると過敏に反応してしまう傾向がある・・この試合でも、PKを取られ失点してからは、少しの間だったけれど、まるで満塁ホームランを打たれたかのように落ち着きを失ってしまった・・また、そんなネガティブな状況からスムーズに回復させられないという課題もある・・その意味で、まだまだ強さが足りないということなのだが・・

 だから、こんなニュアンスの質問を投げかけてみた。

 「いまの川勝さんの発言に乗るのですが・・失点というネガティブな刺激でチームが落ち着きを失った・・そして、そんな心理状態から回復するのに少し時間が掛かったことで失点を重ねてしまった・・と言われた・・要は、そこでチームに落ち着きを取り戻させられるパーソナリティーが・・要は、チームのリーダーがいないということなんでしょうか?」

 川勝良一監督、曰く・・

 ・・そう、まだ十分なリーダーシップを備えられていない(優れたリーダーシップを備えた選手がいない!?)と思う・・もちろん、西紀寛とか巻誠一郎がしっかりとチームにフィットしてくれば、それ相応のリーダーシップが期待できるようになるとは思うのだが・・もちろん、そこでは年齢は関係ないけれどネ・・とにかく、今のヴェルディには(より強力な!?)心理的なリーダーが必要なんだ・・

 フムフム・・。川勝さんは、19歳のキャプテン、小林祐希をイメージして「年齢には関係ない・・」という発言をしたのかもしれないね。その小林祐希のプレーぶりをを観ている限り、彼には、十分な能力(リーダーシップのバックボーン!?)が備わっているように感じるけれど・・。

 何か、彼のリーダーシップを活性化する特別な心理マネージメントとか、具体的な目的をもったイメージトレーニングなどを実行してみたら、どうだろうか? まあ、いらんお世話か・・

 とにかく、川勝良一監督が、とても良い仕事を積み重ねていることだけは確かな事実だよね。優秀だからこそ、チームが抱える様々な課題を的確に抽出し、それを、プライオリティー順に全力で解決しようと日々努力しているっちゅうことなんでしょう。

 これからも、できる限りヴェルディを(も)フォローしていこう。

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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