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2012_J2_第14節・・今日も、二試合をハシゴした・・(2012年5月13日、日曜日)

今日は、本当にポイントだけをまとめます。

 まず、ヴェルディ対ファジアーノ岡山。

 この試合では、とても興味深い現象があった。要は、ファジアーノが、後半の時間が進むにつれ、自信レベルを格段に高揚させて攻め込んでいった(ゲームを支配した!?)という流れのことです。

 前半のファジアーノは、何本かカウンター的な攻撃はあったし、チャンスも作り出しはしたけれど、単発という印象はぬぐえなかった。ヴェルディの攻撃を受け止めるのに必死で、次の攻撃を組織的に仕掛けていくなんていう余裕など、まったく感じられなかったのですよ。

 また、後半の立ち上がりも同じような展開だったから、ハーフタイムの檄(げき)が効いたっちゅう感じでもなかった。それが・・

 徐々にではあるけれど、人数を掛け、人とボールを創造的に動かすハイレベルな組織サッカーを魅せはじめたのです。この「変容」が、とても興味深かった。何だったんだろうね、あの「変化」のベース(キッカケ)になった要素は・・

 前半のファジアーノの攻めは、主にカウンター。それも、ヴェルディ選手が余裕をもって受け止められるような単純な仕掛け。スペースを攻略する・・なんていうハイレベルな発想じゃなく、どちらかといったら「チカラ任せ」ってな感じだった。

 それが、後半も半分を過ぎたあたりから魅せはじめた組織サッカーでは、しっかりと人数を掛け、そのプレイヤー達が、しっかりと動きつづけながらボールも動かしちゃうのです。とてもスムーズに、素早く、広く・・。だから、決定的なスペースも攻略できるのも道理。

 それは、「あの」強いヴェルディ守備ブロックが、部分的であるにしても、完璧に「振り回される」ようなシーンもあったことを意味するんだよ。だから、余計ビックリこいた。まあ、ファジアーノ選手たちにしてみたら、当たり前の「自信と意志の高揚」だったのかもしれないけれどネ。

 もし、私が驚いたことで、ファジアーノ影山雅永監督が「カチンッ!」ときたならば、心からお詫びしますよ。そして自分の不明を恥じます。「オレ達を甘く見るなよ〜っ!?」ってか・・

 とにかく私は、時間を追うごとにダイナミズムをアップさせつづけ、そして決勝ゴールまで奪い取ってしまったファジアーノが、フェアに勝ち点3をゲットしたと評価することに躊躇しません。

 もちろん、決定的なチャンスシーンの量と質という視点も含む「タラレバ議論」では、ヴェルディに軍配が挙がるかもしれないけれど・・ネ・・

 ところで、ヴェルディが誇る才能の一人、小林祐希。久しぶりに先発しました。

 この数試合、キャプテンであるにもかかわらずベンチを温めることが多かった。そして、その彼の眼前で、創造的に、そして闊達(かったつ)におどりつづける仲間たちが、素晴らしい組織サッカーを魅せつづけた。そんな高質サッカーを見せられつづけた小林祐希の心には、忸怩(じくじ)たるモノがあったでしょうね。

 先日のゲームレポート(その日の二つ目の試合レポート)でも書いたけれど、久しぶりにチャンスを得た(交替出場した)小林祐希は、走り、闘った。でも、ハードワークの量と質は、まだまだ足りない。

 そんな彼が、この試合では、ツートップの一角として(2列目センターとして)先発したのですよ。否でも応でも頑張らざるを得ない。こちらも期待に胸膨らませる。さて・・

 最初の数分間の彼のプレーを観て、ホント、期待で胸がいっぱいになったモノです。でも、結局は、それっきり。その後は、いつもの「オレ様プレー」に終始してしまった。

 足許パス「ばかり」を要求することで、最前線の(最終勝負の流れの)フタに成り下がっちゃったり。走るにしても、自分がパスを受けられるときに「しか」アクションを起こさない。また守備にしても、苦しいチェイス&チェックは味方にお任せ・・っちゅうシーンのオンパレード。

 ハードワークに対するこんな姿勢じゃ、味方のボールホルダーが、小林祐希を「スルー」して、別の味方とコンビネーションを仕掛けて行っちゃうのも道理だよ。

 まあ、彼を腐(くさ)すのは、ここまでにしておこう。とにかく、私も含めた全ての(日本の)サッカー人は、彼の成長を心待ちにしているはずだからね。

 後は、ヴェルディのストロングハンド、川勝良一のウデに期待しましょう。皆さんもご承知の通り、いま川勝良一は、「勘違いした才能」を正しいベクトル上に戻すために、大きなリスクを背負って仕事をしている。

 わたしは、同業者として、人間の弱さと堂々と対峙する川勝良一のマネージメント姿勢に、深く共感します。ガンバレ〜・・ケツ〜〜・・

 ということで、次のベルマーレ対トリニータ戦のコラムに入るわけですが、味スタからBMWスタジアム平塚へ移動するため、ヴェルディ対ファジアーノ戦の記者会見には参加できなかった。ちょっと心残りだった。何せ、前述のような興味深いテーマがあったわけだからね。

 でも、まあ、小林祐希というテーマを本格的に取り扱うのは、少し時間を置いてからにしよう。川勝良一の仕事を邪魔しないという意味合いも含めて・・ネ。

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ということで、ベルマーレ対トリニータ戦のレポートだけれど、味の素スタジアムから平塚まで、とても込んでいる道路状況を移動したから、時間が掛かった。それだけじゃなく、例によっての「サンデイ・トラフィック」。とても疲れた。ということで、BMWスタジアム平塚に到着した頃には、既に前半も30分を過ぎてしまっていた。フ〜〜・・

 その前半は、とても興味深い展開だったそうな。要は、アウェーの大分トリニータが、ゲームのイニシアチブを握ったということだったらしい。

 トリニータ、田坂和昭監督の弁だけれど、お互いにスリーバックということで、完璧なミラーリング(要は、完全に選手の基本ポジショニングが同じで向き合うこと)を避けるため、守備的ハーフを一人にしたとのこと(要は、アンカーを一人にし、その前のハーフ陣の密度をアップさせた)。

 そのことに因るプレーイメージの変化は、推して知るべしでしょ。でもサッカーは、決して、数字の羅列によって実際のグラウンド上の現象を推し量れるモノじゃないからネ。

 もしかしたら、トリニータが、いつもの基本ポジショニングとは違ったことで、ベルマーレ選手が(特に、永木亮太とハン・グギョンが!?)ちょっと相手との距離感にとまどったということかもしれない。でもサ、だとしても、そのことで「自分たちのサッカー」が乱されるのだとしたら、イメージトレーニングが足りない。とにかく、「攻守の目的」には、まったく変わりはないわけだから・・

 ということで私は、ペースを握ったトリニータの先制ゴールシーンを見逃した。残念・・

 多分、守備の面で、うまく調子を上げられないベルマーレの虚を(自信の揺らぎによるポジショニングのズレなどを!?)突いたということなんだろうね。右サイドからのクロスを上手くコントロールした西弘則がベルマーレゴールに突き刺したというコトだったけれど・・

 でも、私が観はじめてからは、両チーム互角のゲーム展開ということになっていた。その流れは、後半も変わらず。最後は、まあ順当な引き分けというのがフェアな評価というゲーム内容に「落ち着いて」いた。

 ということで、ここから今日のテーマに入ります。

 それは、結果に見放されつづけるベルマーレ・・。そのことについて、チョウ・キジェ監督がこんなニュアンスの内容をコメントしていた。曰く・・

 ・・たしかに、リーグ開幕から勝ちつづけたけれど、決してそれは、相手を圧倒して勝利したという内容ではなかった・・逆に、このところ四試合も勝てていないわけだが、それにしても、4連敗という結果だってあり得たと思っている・・それほど、各チームのチカラが拮抗している・・

 そこで聞いた。

 「いまチョウさんは、チャレンジのミスと集中力が欠如したミスは、まったく別物だと言われた・・また、勝ちつづけることで自信は深まったが、逆に、負けること(失敗)を恐れる気持ちも芽生えてきたと言われた・・要は、リスクへチャレンジしていく意志が減退し、逆に、守りの気持ちが強くなってきているということだろうと思う・・」

 私の質問はつづきまっせ・・あははっ・・

 「リスクをもいとわないチャレンジ精神と、失敗やミスを恐れて守りに入ってしまう後ろ向きの心理のせめぎ合いがサッカーだということだが、そのギャップをどのように克服していくおつもりだろうか・・??」

 ホント、質問が長くて、それも二つも・・スミマセン・・

 そんな私の問いかけに対し、例によって真摯に、そして豊富な語彙(ごい)を駆使してダイナミックに、こんなニュアンスの内容をコメントしてくれた。曰く・・

 ・・チャレンジ精神が大事なコトは、トレーニングでも常々言っている・・ただ選手は、肌で感じることが大事・・一生懸命にチャレンジした・・でも結果がついてこない・・そして失敗体感が積み重なってしまう・・選手たちは、成功体感も必要としている・・そして、その成功体感は、リスクへチャレンジしていかなければ決して得ることが出来ないモノだ・・

 ・・ギャップを、どのように縮めていくのかというテーマだが・・やはり、まず自分たちのことをしっかりと見つめ、現実を再認識する必要があると思う・・これまで我々は、実力差で勝つのではなく、ギリギリの僅差を勝利に結びつけてきた・・その原点にもどることが大事なのだと思う・・

 ・・だからこそ、原点に戻って、湘南のサッカーを見つめ直すことが大事なのだ・・そして(リスクチャレンジに溢れた!?)湘南のサッカーを、もっと積み重ねていく・・いまの我々には、湘南のサッカーを「やり抜いた」という確信が重要なんだろうと思う・・

 いいでしょ、チョウ・キジェ。

 とにかく、チョウ・キジェは、いまの「悪い流れ」を断ち切るためにも、初心に戻ることが大事だと言っている。これまで得られたモノへの「こだわり」を捨てることは、難しいけれど、決定的に重要な意味を内包しているわけだからね。

 得られたモノが大きければ、今度は、それを失うことに対する恐怖と闘うことになる。そうではなく、その瞬間、瞬間で、自分たちが何をしているのか(どんな価値を生み出しつづけているのか・・)と自問自答しつづけることこそが大事なんでしょ。それこそが初心に戻るという表現の意味合いなんだと思うよ。

 企業経営でも、過去の栄光を捨て去ることから新しい道が開けてくる・・と、よく言われる。とにかく、いまのベルマーレが「守りに入ったら」、大変なコトになる。彼らは、常に、不安500%でリーグ開幕を迎えたときのマインドを、常に思い起こさなければならないよね。

 とにかく、ベルマーレのストロングハンド、優れたプロコーチのチョウ・キジェにも、大いに期待しよう。

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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