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2012_日本フル代表_・・前半と後半のサッカー内容の「差異」について考える・・(日本vsアイスランド、 3-1)・・(2012年2月24日、金曜日)

「サッカーの内容ですが、前半と比べて、後半の方がとても良くなったと思います・・そこで質問ですが、その背景となる要因のなかでもっとも重要なモノは何だったのでしょうか?」

 ザッケローニ監督に、そんな質問を投げかけた。そしたら・・

 「それは(内容が好転したことは!?)、後半の30分くらいまでのことを言ってるんだよな?」

 「そうです・・」

 「まあ、2点目、3点目を取ってからは、相手にイニシアチブを取られすぎたという見方も出来るんだけれどな・・」

 「エッ・・!?」

 そこで、わたしの質疑応答の流れがプツンと途切れてしまった。ちょっと呆気(あっけ)にとられた。(個人パフォーマンスに関する論評では一般論に終始する!?)ザッケローニ監督に、うまく「はぐらか」された!? まあ、そういうことなんだろうな〜・・

 わたしが聞きたかったことは、皆さんもご覧になった通り、前半の組織サッカーの出来が、かなり沈滞気味だったからなんですよ。それに対して、牛若丸(中村憲剛)と田中順也が登場した後半は、人とボールの動きが格段に好転し、牛若丸を中心にした見事な組織コンビネーションから2点目も奪った(藤本淳吾のスーパーゴール)。

 たしかに、そう簡単には、堅牢なアイスランド守備ブロックのウラ(決定的スペース)を突いていけなかったことも確かな課題として残ったけれど、それでも、「組織サッカーのクオリティー」という視点では、前半とは比べものにならないほど好転したと思っている筆者なのです。

 まあ確かに、(ザッケローニ監督も言っていたように)2点目、3点目が入ってからは、(失うモノがなくなったことで!?)フッ切れて攻め上がってきたアイスランドの攻撃を、うまくコントロールし切れなかったという時間帯もあったわけだけれど・・

 ということで、わたしが言いたかったコトの(ザッケローニ監督への質問に込めたバックグラウンドニュアンスの)骨子だけれど、それは、先発した柏木陽介と大久保嘉人が、攻守にわたって、うまく機能できていなかった・・ということです。

 攻守にわたる、ボールがないところでのプレーの量と質に(特に3人目、4人目のフリーランニングといった重要なコンビネーション要素に)大きな課題が見えていたのですよ。

 まあ、柏木陽介については、(彼にとっては生命線となる!!)周りとのパスコンビネーションや、ポジショニング&タスク交換のイメージを醸成する(特に遠藤保仁との協力プレーイメージをシェアする!!)時間が足りなかった・・とか、アイスランド選手とのフィジカルの差(特にスピードとパワー)に四苦八苦してしまったという面は否めないよね。

 だからこそ柏木陽介は、しっかりと人とボールを動かして相手とのフィジカルな接触を避けることで、「スピードやパワーの差」が明確に見えてしまう状況を避けなければならなかったということです。でも実際は・・

 また、大久保嘉人だけれど、やっぱりクラブチームでのクセが抜け切れていないっちゅうことなんだろうかネ。

 そう、攻守にわたるボールがないところでのハードワークの量と質に大きな課題が見えていたのです。だから、彼のところでボールの動きが止まってしまうシーンが頻発した。これでは、周りの「人の動き」も止まり気味になってしまうのも道理。

 確かに先制ゴールシーンでは、ボールをキープしている自分を追い越していく(オーバーラップしていく)左サイドバック槙野智章へ、ベストタイミングのタテパスを決めたけれど、それ以降は、どうも彼のところでボールの動きが停滞気味になってしまっていた(チーム全体の、人の動きの活性化を阻害する要因になっていた!?)。

 それだけではなく、中盤で意味のないドリブルをしたり(ボールの動きの停滞を招いた!)・・そして複数の相手に追い込まれてボールを奪われてしまったり・・。フムフム・・

 ということで、ここで、前日のザッケローニ監督のコメントを引用させてもらうことにします。彼は、こんなニュアンスのコメントを出したらしいのだけれど・・

 「明日のゲームでは、組織(プレー)的な視点ではなく、個の能力を見極めるという視点で(も!?)見てみようと思う・・」

 個の能力ね〜〜・・

 それって、ドリブル突破に代表される個人勝負プレーのことを言っていたんじゃないでしょ!?

 だって日本チームの場合、「世界」をキリキリ舞いさせられるだけの個人勝負能力(天才的なドリブラー!?)は、まだ十分には育っていないよね。

 もちろん組織コンビネーションのなかで、流れに乗るように仕掛けていくドリブル勝負だったら、香川真司とか岡崎慎司、はたまた本田圭佑だって遠藤保仁や牛若丸だって、抜群に効果的な突破ドリブルをブチかませるでしょ。

 私が言っているのは、相手と「正対」してボールを持った状況でも、どんどん自分から仕掛けていくことで、チェックする相手をキリキリ舞いさせちゃうような「世界のドリブル勝負」のことだよ。

 あっと・・ちょっと話題が逸れた。

 とにかく、ザッケローニ監督が言う「個人の能力」とは、あくまでも組織サッカーを高揚させていくプロセスに貢献するという意味で、自分自身で考え、決断し、(タイミングの良いリスキーな突破ドリブルも含めて!)勇気をもってリスクにもチャレンジしていけるようなインテリジェンスと強い意志をもっているかどうか・・ということでしょ。

 今回は、ちょっと話題がアットランダムに過ぎてしまったかも。心斎橋のホテルで、ハイボールを飲みながら書き綴っていた筆者でした〜〜。あははっ・・まあ・・ご容赦アレ〜・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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