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2012_日本フル代表・・組織プレーでも攻撃の変化でも、前半を除いて上手く機能しなかった・・(日本vsウズベキスタン、 0-1)・・(2012年2月29日、水曜日)

まあ、仕方ない・・

 とにかく、ウズベキスタンが、とても素晴らしい「闘い」を展開したことだけは、素直に認めなければいけないと思いますよ。そのことについては、ザッケローニも、ウズベキ監督アブラモフも、異口同音に表現していた。

 彼らが展開した、とても粘り強く、パワフルで忠実、そしてクレバーな守備戦術。そして、「それ」をベースに、臆することなくブチかましていく必殺カウンター。そのオーバーラップの勢いは賞賛に値すると思いますよ。

 とにかく、勝者にエールを送ろうじゃありませんか。ザッケローニ監督も、そんなニュアンスのコメントを出していた。トゥー・ビー・ア・グッド・ルーザー・・。それもまた、スポーツが与えてくれる素晴らしい(学習)機会だよね。

 いや・・格好いいこと言ったけれど、ホントは私も、とても悔しかったんですよ。終わったときは、アタマにもきていた。何せ、日本代表の(それも、ほぼベストメンバーチームの)攻撃が、(特に後半は)完璧に抑え込まれてしまったわけだからね(まあ、日本代表の攻撃にも課題が見え隠れしていた=後述=わけだけれど)・・。

 ・・ということでウズベキスタンだけれど・・メンバーには無名の若手も多かった・・そんなフレッシュなチームが、韓国でのトレーニングマッチも含め、十分な時間をかけて準備をして日本に乗り込んできた・・彼らは、グループトップで3次予選を終えるという明確な目標イメージをもち、それに向かって最高にモティベートされていた・・ウズベキ監督アブラモフにも拍手でっせ・・

 ということで日本代表。

 わたしは、前半の20分あたりから格段にペースアップした日本代表のサッカーについて、こんなメモを愛用のコンピュータに打ち込んでいた。

 ・・前半20分を過ぎたあたりから、日本の、人とボールの動き(組織サッカー)が素晴らしく軽快になっていった・・相手守備のウラを突き、スペースを攻略する・・やはり、ボールを動かすリズムと、そのリズムを明確にイメージする「人の動き」のシンクロナイズ(同期)がキーポイントなんだよ・・

 ・・それだけじゃなく、15分を過ぎたあたりからは組織プレーと個人の勝負プレーも高みでバランスするようになっていった・・

 ・・例えば・・長友佑都がブチかました、タテ方向の長い距離を「つなぐ」ドリブルと、そこからの勝負のドリブル&シュート(ゴール前のマイクへのラストパス!?)・・また、岡崎慎司も、ショートカウンターからサイドのスペースをブチ抜く勝負ドリブルを魅せる・・そして、素晴らしいコンビネーションから、岡崎慎司が、決定的な(バー直撃の)シュートをブチかました・・良い、良い・・

 この時点で、「さて・・もう時間の問題だな・・」と、誰もが感じていたはずだけれど、その後のゲーム展開は、そんな期待とは裏腹なモノになっていった。

 わたしは、日本代表が、ドツボにはまって足を止めていく(!!)ネガティブなプロセスを観ながら、こんなことを思っていた・・

 ・・ホントに、どうしちゃったんだろう・・たしかに足が止まり気味になってきている・・もちろん、何度もコンビネーションで崩されたウズベキスタン守備が、気持ちを入れ替え、よりハードに、忠実に、そしてクレバーにマークしはじめてはいるけれど・・

 ・・ちょっと藤本淳吾のプレーが消極的だな〜・・もっと自分から(爆発的な勢いで!)ボールを奪いにいったり、攻撃でも、もっと積極的にスペースへ走ってパスを要求しなくちゃならないのに・・また、ボールを持っても、自信なさげに、近くの味方を探しているし・・

 ・・そんな態度じゃ、ウズベキのディフェンダーだって、簡単に「逃げのパス」を予測しゃうでしょ・・実際、そんな消極的な逃げパスから、何度もボールを失っていた・・

 ・・そんなネガティブな現象が、ウズベキの素晴らしい守備も相まって、徐々に、日本代表の足を止めていった!?・・まあ、日本代表のペースダウン現象には、そういう背景要素もあったに違いないよね・・

 ・・サッカーは、本物のチームゲーム・・何か一つでも「自分たちの感覚的なモノと相容れないネガティブな現象」があった場合、急にアクションが萎んでしまう・・そしてチーム全体のダイナミズムが「心理的な悪魔のサイクル」にはまり込んで奈落の底へまっしぐら・・

 ・・また、その藤本淳吾に代わって登場した乾貴士にしても、最初の数分間は、爆発的なチェイス&チェックを魅せるなど、大いに期待させてくれちゃったけれど、その後は、まさに鳴かず飛ばず・・もちろん「流れに乗った」コンビネーションプレーは何度かはあったけれど・・

 ・・彼もまた、攻守にわたって、もっともっと積極的に(チームメイトを鼓舞しながら、自分がチームの闘う意志をドライブするつもりで!!)プレーしなければならなかった・・そう、遠藤保仁や長谷部誠のようにね・・

 そんなネガティブなペースダウン現象についてザッケローニ監督は、フィジカル的な背景要因にも言及していた。

 もちろん「それ」もあるでしょ。彼が言うように、国内組はシーズン前だし、ヨーロッパ組は、ハードなリーグ戦を終えてから帰国したことで、試合の前日か、2日前になってやっと合流できたわけだから・・。

 そんな様々なファクターが錯綜し、相互に(心理・精神的に!)作用しあったことで、グラウンド上の現象が(前半の最後の時間帯あたりから徐々に・・!?)ネガティブなモノへと変容していった!?

 まあ、そういうことなんだろうね。とにかく、(イレギュラーするボールを足で扱うからこそ!)不確実な要素が満載されたサッカーの場合、グラウンド上の現象の背景には、物理的、心理・精神的なファクターが、まさに複雑怪奇に錯綜し、相互に影響しあっているわけだからね。

 だからこそ、サッカーは、とても、とても奥が深〜いボールゲームなのですよ。

 ・・最後に、ザッケローニ監督の興味深い発言をご紹介しましょう・・もちろん、ニュアンス的に膨らませて・・ネ・・あははっ・・ご容赦アレ〜〜・・

 ・・日本代表の(組織的な)コンビネーションは、本当に素晴らしいし、申し分のない武器だ・・でも、相手が、その内容を(イメージ的に)完璧に理解してディフェンスに入っている場合は問題が生じることがある・・そう、今日のゲームのように・・

 ・・だから、たまには(攻撃の変化として!?)ミドルシュートをブチかましたり出来なくてはならない・・特に今日のゲームでは(相手ディフェンスが下がり気味になることで!)バイタルエリアに常にスペースが出来るじゃないか・・

 ・・そのことは選手たちにも示唆していたんだが、どうもうまく機能しなかった・・バイタルが空いているだから、そこを使わない手はない・・その最もポピュラーな仕掛けがミドルシュートなんだ・・

 ということで、今日は、こんなところです。聞くところによれば、ナデシコは、川澄奈穂美の決勝ゴールでノルウェーに逆転勝利を収めたとか。バンザ〜イッ!! 明日、帰京したらビデオで確認しレポートしまっせ・・

 それでは、オヤスミナサ〜イ・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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