トピックス


2012_ヨーロッパの日本人・・香川真司・・(2012年3月26日、月曜日)

好調を維持する香川真司。

 この試合(昨日行われたブンデスリーガ第27節、アウェーでのケルン戦・・「1-6」でドルトムントの勝利)でも、とても素敵なパフォーマンス(内容)と結果をブチかました。2ゴールに1アシストだぜ。

 でも、ドルトムントの3点目も、香川のダイレクト(ヒール)パスがあればこそのゴールだったから、彼のアシストだったと言ってもいい。まあ私にとっては、2ゴール2アシストだね・・

 でもまず、興味深かった「ゲームの流れの変容」から。

 立ち上がりは、ホームのケルンが、人数を掛けた質実剛健ディフェンスから、とても効果的なカウンターを繰り出す(ポドルスキーの才能が効果的に発揮された!)というゲーム戦術でペースを握った。

 もちろんボール保持率(ポゼッション)はドルトムントが上回っているけれど、実質的なチャンスの量と質という視点では、ケルンに軍配があがったのですよ。それだけじゃなく、ケルンが、ズバッという爆発音が聞こえてくるほど強烈なノヴァコヴィッチのヘディングシュートで先制ゴールまで挙げちゃうんだよ。

 もちろん(その後)、リードされたドルトムントのペースも上がってはくるけれど、先制ゴールによって集中力が(要は、モティベーション&意志が!)アップした強固なケルン守備ブロックを崩し切るところまでいけない。

 ドルトムントにとっては、ちょっと重苦しい流れになった。だからこそ、セットプレー。そう・・ドルトムントが、フリーキック&強烈ヘディングシュートで同点ゴールを叩き込んじゃうのです。ちょっとネガティブな「流れ」のなかからでも、セットプレーをターニングポイントにしちゃう(チーム内の勝負イメージが強力に統一されている!)。ドルトムントが内包する勝者のメンタリティー・・

 そして、同点になったところから、実質的なゲームの流れに変化が見えはじめるのです。

 攻撃に入ったときのケルンの「重心」が、ほんのちょっとだけれど、前掛かりになっていったと感じられた。要は、守備ブロックが、ちょっと「開きはじめた」ということ。それだけじゃなく、守備に入ったときのブロックも、ちょっと下がり気味になっていったと感じた。積極的にボール奪取勝負を仕掛けていくのではなく、状況を見てしまう「待ちの姿勢」が現れはじめた!?

 そうなったら、ドルトムント攻撃の「前後の動き」が活性化していくのも道理だよね。何せ、ターゲットにする「スペース」が、より明確に「見え」はじめたわけだから・・。

 ユルゲン・クロップ率いるドルトムントの真骨頂は、チャンスを「感じた」ときの3人目、4人目の分厚いサポートだからね。脇目も振らないオーバーラップと、「その後」のバランスをマネージする「タテのポジションチェンジ」がダイナミックに機能しつづける。

 ということで、微妙な感覚だけれど、先制ゴール&同点ゴールという、選手たちの内面に影響を及ぼすことでゲームの流れを変化させる「エネルギー」が存在感を発揮した時間帯だったと感じていた筆者だったのです。

 そして、ドルトムントが、本当の意味でゲームを掌握しはじめる・・

 香川真司のプレーは、相変わらず高みで安定していたね。

 ・・守備からゲームに入っていく姿勢は相変わらずハイレベル・・それも、周りのチームメイトにボールを奪い返させようというイメージに基づいた汗かきチェイス&チェックも積極的・・だからこそチームメイトに信頼される・・

 ・・攻撃でも、忠実でクレバーな「ボールがないところでの動き」を積み重ねることで、常にスペースでパスを受けられる・・そしてパスが来たら、例によってのクレバーで素早く、効果的なボールコントロール(相手のアタックを一発でかわしてしまう巧妙なトラッピング!)から、事前のイメージ作り(ルックアップからの状況把握!)も含め、瞬間的に次の効果的なプレーにつなげてしまう・・

 ・・シンプルな展開パス&ムーブ・・マークする相手を翻弄する、素早く、効果的なボールコントロールからの「タメ」の演出・・そして「そこ」からの高質なスルーパス・・

 ・・チームメイトも、香川真司のプレーイメージをしっかりと理解しているから、彼がボールを持ったときには、走る、走る・・もちろん香川真司が、突破ドリブルに入っても、その走りはつづく・・香川真司にドリブル突破のコースを開けるために・・また、最後の瞬間のラストパスを受けるために・・

 ことほど左様に、香川真司のプレー内容は、どんどん発展しつづけていると感じるわけです。頼もしいかぎりじゃありませんか。それにしても、香川真司がたたき込んだ勝ち越しゴール(後半2分に挙げたドルトムントの2点目)のボレーシュートはすごかった。堪能しました。

 最後に、この試合のテレビ中継についても一言。

 要は、ボールがないところでのドラマまでしっかりと確認できる、ブンデスリーガの素敵なカメラワーク(映像作り)のことです。スカパーも参考にして欲しいよね。このテーマについては、昨日のコラムを参照して下さい。

===============

 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

==============

 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




[ トップページ ] [ Jワンポイント ] [湯浅健二です。 ]
[ Jデータベース ] [トピックス(New)] [ 海外情報 ]