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2012_U22_・・彼らは、極限テンションの闘いが続くという最高の(学習)機会を得た・・(シリアvsU22日本代表、 2-1)・・(2012年2月5日、日曜日)

フ〜〜ッ! これ(奈落の落胆!?)もまたサッカーの一部ということか。

 得失点差では並んでいるけれど、総ゴール数でシリアの後塵を拝することになった日本オリンピック代表チーム。この結果を受け、シリアと同勝ち点のグループ二位に後退した。

 残り2試合。まずアウェーのマレーシア戦。そして最終戦では、日本でバーレーンを迎え撃つ。

 対するライバルのシリアは、まずアウェーでバーレーンとぶつかり、最後は、ホームでマレーレアと対峙する。

 たぶん最後は、得失点差の争いになる。もう日本オリンピック代表は、フッ切れて、積極的にゴールを奪いにいくしかなくなった。

 それは、限りなく積極的に仕掛けつづけなければならないという意味合いも含め、とてもポジティブな状況ともいえる。もちろん、そんな積極的な(フッ切れた)仕掛けを心理・精神的に支援する「冷静なバックアップの優れた機能性」という視点も含めて。

 要は、山口螢や扇原貴宏といった冷静沈着な守備的ハーフの役割が、とても重要になってくるということです。彼らは、常に、ゲームの流れを(俯瞰的に)把握しながら、ボールを相手に奪われた後の効果的な対処(ディフェンス)に備えていなければならないわけだから。

 あっと・・。フッ切れてゴールを奪いにいくという「プレー姿勢」の絶対的バックボーンは、言うまでもなく、より積極的にボールを奪いにいく(爆発的なプレッシング守備をブチかます)コトに対する強烈な意志だよ。

 いつも書いている通り、守備こそが全てのスタートライン・・なのです。

 一人の例外なく、ボールを失った次の瞬間から繰り出していく爆発的なチェイス&チェック。そんな積極ディフェンスに正確にリンクしつづける、忠実でクレバーなインターセプト(≒相手トラップの瞬間を狙ったアタック!)や協力プレスなどなど・・。

 そう、強烈な意志に支えられた究極の「連動ディフェンス」。まあ、書くまでもないことだけれど・・

 とにかく、日本の若武者たちは、「世界トップサッカー」へつながるかもしれない本当の意味のブレイクスルーを、自分主体で積み重ねていく貴重な(学習)機会を得たのですよ。

 それって、とても、とても、ポジティブな状況でしょ。

 私は、ホントに、若武者たちの将来を考えれば、「あの」シリアの決勝ゴールは、願ってもない神様のイタズラだったのかもしれない・・とまで感じる。そこでのテンション(緊張感)は、シリアに勝ち点3の差をつけた状態で残り2試合に臨むのとはワケが違うよね。

 ここで書いた内容は、決して「奇をてらった」ものなんかじゃありません。わたしがヨーロッパや日本の現場で積み重ねてきた体感から、心底そう思っているのです。

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 ここからは、簡単にゲームを振り返りましょう。

 まず、何といっても悪コンディションのピッチ。それは、言うまでもなく、個人勝負(ドリブルで仕掛けていくイメージ)の方がマジョリティーのチームにとって有利でしょ。

 逆に、攻守にわたる組織サッカーを標榜する日本にとっては、もちろん不利。ボールを見てコントロールする瞬間が長くならざるを得ないワケだからね。だから、素早くボールを動かしたり、ダイレクト(パス)コンビネーションを仕掛けていくのもままならない。

 そして自信と確信レベルが減退していくなかで、より安全なプレーを志向するようになる。そう、縮こまった安定(固着)サッカー・・

 これじゃ、リスクを冒して前方のスペースへ飛び出していくような3人目、4人目のフリーランニングが出てこなくなるのも道理。そして日本が得意とする、人とボールの、素早く、広い動きをベースにした組織コンビネーションが影を潜めてしまう・・

 そんなだから、シリアの前への勢い(例によってエネルギッシュなプレッシング守備と、個人勝負を前面に押し出す爆発的な仕掛けアクションなど!?)に押し込まれる展開になってしまうのも道理。そんな前半だったね。

 でもネ、(シリアの先制ゴールも含め!)ちょっと後ろ向きのゲーム展開になってしまっていたからこそ、前半終了間際に生まれた「あの」ワンチャンスの同点ゴールシーンじゃ、ホント、エネルギーが迸(ほとばし)るような全身全霊のガッツポーズが出たゼ。

 永井謙佑の決定的フリーランニングと大迫勇也のベストタイミング&コース&強さのスルーパスが、美しくコラボレート(協働)し結実した同点ゴールだった。ところで、永井謙佑のシュートだけれど、それは、まさに「コレゾ真の決定力!!」っちゅう趣だったネ。恐れ入りました。

 そんな日本の若武者だったけれど、後半は徐々に本来の調子を取り戻していった。

 多分ハーフタイムでは、関塚隆監督からの的確な指示もあったと思う。とにかく、守備(ボールを奪いかえすプロセスプレー)が積極的になった(闘う意志の高揚!)。また、シンプルな一発ロングパスからのカウンターも繰り出すようになった。

 そして、これが大事なポイントなんだけれど、そんなサッカーのやり方の「変化」こそが、日本の若武者たちが「自分たちのサッカー」を取り戻すキッカケになったのですよ。

 実際、その後の(守備での積極的な闘いと、攻撃でのシンプルな仕掛けで自信を取り戻しはじめた!?)若武者たちは、徐々に、人とボールを、より活発に動かしはじめたからね。そして、有機的なコンビネーションも繰り出せるようになっていった。

 前半とは違い、徐々に、彼らがイメージするカタチでのチャンスメイク(シリア守備ブロックのウラスペースを攻略していく組織コンビネーション!)を演出できるようになっていったのですよ。

 もちろん「そんなゲームの流れの変化現象」には、シリアの(守備での!?)エネルギーが減退していったという背景要因もあるでしょ。また、日本が、悪ピッチでのプレーに慣れていったというポイントもあるだろうね。

 これもまた、見方&分析のバランス感覚の問題になると思うけれど、わたしは、どちらかといったら、サッカーのやり方を「積極的に変化」させた日本チームが、限りなく主体的にゲームのペースを逆流させていったと考える。フムフム・・

 だからこそ、シリアにブチかまされた、「あの」決勝ゴールが悔しくてたまらない。

 あっ・・と、それは、日本の若武者たちにとって、とてもポジティブな学習機会を与えてくれた神様のイタズラだったっけ!? でも感情的にはサ・・あははっ・・

 とにかく、極限テンションの勝負がつづくことは、特に若い世代のプロにとって、とてもポジティブな学習機会なんだよ・・フムフム・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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