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2012_U23(トゥーロン)・・組織と個がうまくバランスする関塚ジャパン・・(U23日本代表vsオランダ、 3-2)・・(2012年5月26日、土曜日)

各国のU23代表チームが集うトゥーロン大会。

 まあ、それぞれのオリンピック代表チームにとって、選手選考やチーム戦術の浸透度などを確認する「機会」という意味合いが強いトーナメントだね。だから、なか1日というハードスケジュールや暑い気候条件も相まって、クルクルと選手が入れ替わる。

 初戦となったトルコ戦では、オリンピック出場を逃したトルコが、まさに意地のダイナズムをブチかましてきた。その「勢い」に圧され、時間の経過とともに劣勢傾向が目立つようになっていった関塚ジャパン。

 要は、チェイス&チェックの量と質や、局面(球際)での激しさなど、守備でのハードワークが、そのままゲーム内容に反映されていったということです。そして、その強烈な意志(!?)がカタチになったという表現がピタリと当てはまるような意地の2ゴールを奪われ負けてしまった。

 まあ、仕方ない。とはいっても「貴重な機会」を無為に逃す手はない。このまま、第二戦のオランダにも負けてしまったら、トーナメント敗退が決まっちゃうわけだからね。とにかく彼らは、グループ戦を突破して準決勝まで駒を進めたかった・・

 ということで、先発メンバーをガラリと変えて臨んだオランダ戦。とても優れた闘いを展開し、逆転勝利まで「もぎ取った」。

 強豪のオランダを相手に、スマートで、ダイナミズム(強烈な意志)にもあふれた互角以上の組織サッカーを展開した関塚ジャパン。とても頼もしかったね。

 その「頼もしさ」の中心にいたのは、攻守にわたるハードワークと効果的なドリブル勝負プレーで存在感を魅せた高木善朗、局面での才能プレーを光らせた宇佐美貴史、また日本人離れした特徴をもつ指宿洋史、交替出場した大津祐樹といった海外組。やはり、環境こそが人を育てる・・ということなんだろうね。

 とはいっても、そんななかで「国内組」の齋藤学(マリノス)も気を吐いていた。

 マリノスでも、「突貫小僧」的なダイナミズムエネルギーを放散することでチームに勇気を与えつづける齋藤学。彼の良さのバックボーンは、何といっても「強烈な意志」だよね。もちろんスピードやテクニックも素晴らしいけれど、意志によって、それらのフィジカル&技術の要素が、何倍にも増幅していると感じる。

 守備でのチェイス&チェックにしても、攻撃でのフリーランニングや「ココゾ!」のドリブル勝負にしても、とにかく彼のプレーからは、「意志」が放散されていると体感させられるんだよ。意志があるからこそ、内包する能力が100%以上の実効を発揮するということだね。そう・・意志さえあれば、おのずと「道」は見えてくる・・のです。

 ここで、唐突に宇佐美貴史のハナシになる・・

 バイエルン・ミュンヘンという強烈な(競争)環境に刺激されつづけることで、徐々に良くなっている宇佐美貴史だけれど、もし彼が、齋藤学ほどの「意志」をもち、それをグラウンド上で表現できれば(攻守にわたる、ボールがないところでのハードワークの量と質を、いま以上にアップさせられれば!?)、すぐにでも『世界のトップクラス』が見えてくるのに・・

 最後に、二つのポイントを・・

 まず、後半33分に決勝ゴールを挙げた後の、タイムアップまでの10分間、日本代表が、落ち着いたディフェンスをベースに、しっかりと勝ち切ったというポイント。

 決して下がりすぎることなく、中盤も含め、優れたポジショニングバランスを保ちながら守備ブロックを効果的に機能させた。

 そう、決して「安易に飛び込んだりしない」忠実で効果的なチェイス&チェックと、その周りで展開された(忠実マークや協力プレス、はたまたインターセプト狙いといった)有機的なイメージ連鎖ディフェンス。

 良かったですよ。自分たちが主体になって着実に勝利をもぎ取ったわけだからね(逃げ切ったという表現はふさわしくない!)、自信の深化につながる。

 そしてもう一つのポイントが、オランダが有する優れた個のチカラ・・。

 17番のルコキとか、交替出場した8番のファン・ハーレンや9番のバラジテなどなど、やはり個人のチカラでは日本の上をいく。これは、確かな事実だよね。

 特に、右サイドから仕掛けつづけ、オランダの二つのゴールをお膳立てした17番のルコキ。日本代表は、彼のスピードを抑えるのに四苦八苦していた。まあ、アレも「世界」ということだね。それを体感できたことは貴重な学習機会だった。

 まあ・・だからこそ日本は、個の才能(ドリブル勝負など)を効果的に表現していくためにも(!)究極の組織サッカーを志向しなければいけないということだね。

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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