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2012_五輪U23・・組織サッカーと個人サッカーのぶつかり合い・・そして関塚ジャパンがブレイクスルーを果たす・・(U23日本代表vsモロッコ、 1-0)・・(2012年7月30日、月曜日)

その瞬間、ホントに身体が硬直しちゃったゼ・・後半ロスタイムの決定的ピンチ場面・・

 ・・相手の「スリップヘッド」で流されたボールに素早く反応したモロッコのエース、ラビアド・・彼をマークする徳永悠平の反応が、一瞬遅れた・・フリーで抜け出し、最初にボールに追いつくラビアド・・そして、決定的なフリーシュート・・

 ・・次の瞬間、飛び出してきた権田修一が身体に当ててボールをはじき返す・・フ〜〜ッ!!・・ただ、その弾かれたボールが、あろう事か、全力でサポートに上がってきていたモロッコ選手の足許へ転がってしまうんだよ・・

 ・・まさに絶体絶命・・でも、そのモロッコ選手のシュートは、必死に戻ってきた吉田麻也が、逆モーションだったにもかかわらず、身体を投げ出すように伸 ばし切った左足ではじき返すんだ・・この間、5秒・・まさに「5秒間のドラマ」・・フ〜〜ッ!!・・身体はフリーズしたまま・・フ〜〜ッ!!・・

 もちろん私は、「そんなタイプの決定的シーン」は数限りなくも体感している。観客としても、ベンチの中でも・・また、ポジティブなモノも、ネガティブなモノも・・。でも、いまだに慣れない。瞬間的に身体が硬直しちゃうんだよ。

 まさに、偶然と必然が交錯するサッカーの面目躍如・・ってなことなんだろうね。

 そして、めくるめく歓喜のタイムアップ。もちろんそれは、関塚ジャパンが、「地力で奪い取った勝利」だぜ。

 その、関塚ジャパンが「地力でもぎ取った」勝利だけれど、私は、ゲーム内容的に、日本の組織サッカーに一日「以上」の長があったと思っているのです。

 ということで、ここからテーマに入ってくわけだけれど、まあ、いつものように、ゲーム展開を追いかけたり、一つのテーマを深く掘り下げたり・・っちゅう、ランダムな文章をツギハギした構成になりまっせ。悪しからず・・

 ・・まずゲームの構図から・・もちろん「それ」は、組織サッカーと、あくまでも個のチカラを前面に押し出すサッカーとの対峙・・

 ・・組織パスコンビネーションでスペースを突くという基本的な「攻撃の流れ」を徹底する関塚ジャパン・・そんなパスサッカーを前面に押し出すからこそ (モロッコの守備が、その組織プレーを抑えるというイメージに引っ張られているからこそ!)、前半に飛び出した永井謙佑のドリブルシュートや、後半の清武 弘嗣と大津祐樹の惜しいドリブルシュートが、その危険度をアップさせた!?・・

 ・・そんな日本の、変化に富んだ攻め方に対し、ドリブル勝負を前面に押し出す(それしか攻め手がない!?)モロッコの攻撃は、守備アプローチさえ間違え なければ(安易にアタックを仕掛けるのではなく、粘り強くマークしつづけていれば)怖くない・・もちろん、たまに飛び出すワンツー攻撃は、威力満点だけれ どネ・・

・・ところで、日本が展開する、パスとフリーランニングでスペースを突いていく組織サッカー・・

 ・・その骨子は、何といっても、明確な一定のリズムを内包する人とボールの動きだよね・・だからこそ、周りの人の動きの量と質がダウンしない・・彼らは、動けばパスをもらえることを知っているんだよ・・

 ・・そんな攻撃の「当面の目標」は、スペースを攻略していくこと・・それを達成するためのプロセスには、基本的に2種類ある・・一つは、パス&フリーランニングでスペースを突いていくプロセス・・もう一つが、ドリブルで相手を抜き去ってスペースを突いていくプロセス・・

 ・・その目標とは、言うまでもなく、ある程度フリーでボールを持つ選手を作り出すことだよ・・要は「仕掛けの起点」の演出っちゅうことだね・・

 ・・繰り返しになるけれど・・日本は、相手とのフィジカルな接触をできるだけ避け、組み立ての段階から積極的にスペースを活用しようとする・・それに対 し、中盤からでも、積極的にドリブル勝負を仕掛けることで、最終勝負のキッカケを(スペースである程度フリーでボールを持つ選手を)作り出そうとするモ ロッコ・・

 ・・両チームの(攻撃)チーム戦術には、そんな基本的な差異があるということが言いたかった・・そんな「差異」は、彼らのディフェンスイメージにも少なからず影響を与える・・

 ・・要は、たしかに局面での1対1には無類の強さを発揮するモロッコだけれど、3人目、4人目の、ボールがないところでの動きに対する「守備イメージ」については、課題が見え隠れしていたんだ・・

 ・・たしかに、優秀な(皆さんご存じの!?)ピム・ファーベーク監督に指導されることで、日本の組織サッカーにも、ある程度は対処できていた・・それでも、何度かは、日本の3人目のフリーランニングで(そこにパスを送りこまれたことで)決定的なピンチに陥った・・

 ・・そんな両チームの攻撃がぶつかり合うことで、ダイナミックな均衡状態がつづく・・ドリブル勝負とミドルシュートで(あっと、セットプレーも危険だっ た!)日本ゴールを脅かすモロッコ・・それに対して、(勇気をもって!)人数を掛けた組織パスコンビネーションで仕掛けていく関塚ジャパン・・

 ・・前述したように、日本は、そんな組織コンビネーションをベースに、「ココゾッ!」のタイミングで、爆発的なドリブルシュートに代表される個人勝負プレー「も」ブチかますんだよ・・

 ・・「組織プレー」と「個人プレー」が、うまくバランスする関塚ジャパン・・ってな感じだね・・

 ・・そんな動的な均衡状態がつづいていたけれど、時間の経過とともに(モロッコが疲れてきたこともあって!?)、関塚ジャパンが、ゲームのイニシアチブを握るようになっていく・・

 ・・後半は、日本の組織サッカーが、俄然、勢いを増幅させていったんだよ・・個人プレーで何とかしようとするモロッコだけれど、日本がブチかます組織 サッカーの勢いを抑制できない・・ということで、ゲームのイニシアチブを握りつづけ、組織コンビネーションで危険なチャンスを演出しつづける関塚ジャパ ン・・ってな展開に、ゲーム内容が変容していった・・

 ・・そんな流れのなかで、(前述した)清武弘嗣や大津祐樹の爆発的なドリブルシュートが飛び出したり、素晴らしいカウンターの流れから決定的スペースへ飛び出した山口螢がフリーシュートを放つといった決定的シーンが演出されるんだ・・

・・そして後半38分、そんなドミネーション(支配)の流れに乗るかのように、相手守備ラインのウラに広がる決定的スペースへのロビングパスが決まる・・

 ・・パスを出したのは清武弘嗣・・そして、まさに「ブガッティ・ヴェイロン」のような爆発的加速力で相手マークを振り切った永井謙佑が、飛び出してきた相手GKの鼻先で「チョンッ!」と、ロビングシュートを決めた・・

 ・・ブガッティ・ヴェイロンについちゃ、いろいろ異論はあるでしょうが、まあ、ご容赦・・あははっ・・

 ・・その瞬間、ガッツボーズと小躍りが止まらなかった・・そう、そんなエモーションを自然に爆発させられることもまた、サッカーの本質的な価値の一つなんだよ・・あははっ・・

 ところでスペイン。ホンジュラスにも、うっちゃられてしまった。ビックリ・・

 その試合では、両チームあわせて「13枚」ものイエローが出たんだって。またシュート数では、スペインの「24本」に対し、ホンジュラスは「7本」だけ。

 とにかく、ものすごく激しい試合だったんだろうね。ということで、「あの」強いスペインの予選リーグ敗退が決まってしまった。フ〜〜・・

 「これ」で、関塚ジャパンは、最後のホンジュラス戦を引き分けさえすれば、グループを首位で抜け出せる。グループ首位で準々決勝に臨むのは、本当に「マスト」だよ。何せ、二位通過だったら、「あの」ブラジルと当たる可能性が高いわけだからね。

 とにかく、関塚ジャパンには、世界トップへつながる「本物のブレイクスルー」を期待しまっせ。

 ストロングハンド、関塚隆については、「このコラム」も参照してください。では、ホンジュラス戦を楽しみに・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 





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