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2012_UCL_準決勝の2・・サッカーは、本物の心理ゲーム!?・・(レアル・マドリーvsバイエルン・ミュンヘン)・・(2012年4月26日、木曜日)

とても微妙なニュアンスを内包する勝負マッチだった。そして最後は、両チームのスーパーGK対決(PK戦)を、ドイツ代表のマヌエル・ノイヤーが制した。フ〜〜・・

 まあ、これで、一発勝負の頂点対決へ向けた盛り上がりは必至・・っちゅうことになったわけだ。何せ、バイエルン・ミュンヘンが、自らのホームスタジアム(アリアンツ・アレーナ=もちろん決勝では、フースバル・アレーナ・ミュンヘンということになるけれどネ)で、チェルシーとのファイナルを闘うことになったんだから。このようなケースは何年ぶりなんだろう・・。

 試合だけれど、ここでは、微妙な(心理・精神的)揺動というテーマに特化しよう。その立ち上がり・・

 ゼロゼロの引き分けだったらバイエルン・ミュンヘンが勝ち上がる。だからバイエルンはちょっと硬い。対するホームのレアルは、当然攻め上がってくる。もちろん、その攻め上がりにしても、あくまでも「モウリーニョ的」なニュアンスだよ。そう、常に「次の」ディフェンスをイメージし、人数とポジショニングのバランスを取りながらの仕掛け。フムフム・・

 そんな立ち上がりの雰囲気のなかで最初の決定機を演出したのは、レアルだった。

 ・・大きなサイドチェンジ(まあ、ロングタテパス)から、レアル右サイドのディ・マリアにボールがわたる・・迷わず勝負ドリブルを仕掛けるディ・マリア・・そして見事に、まさに見事に、対峙したバイエルン左サイドバック、アラバを抜き去ってしまう・・

 ・・そして持ち込みながら、最後は、後方からスルスルッと上がり、タメにタメてフリーの状態を維持していた(その場で我慢していた!)ケディーラへラストパス・・

 ・・蛇足だけれど、「そこ」にいたケディーラは、素晴らしい「消えるプレー」を披露したよね・・誰にも気付かれず、最後の決定的スペースを感じ取って「そこ」にいた・・素晴らしい・・

 ・・そして最後は、ディ・マリアからの折り返しをダイレクトシュート!!・・残念ながらバイエルンGKマヌエル・ノイヤーの正面に飛んじゃったけれど、それは、先制ゴールになってもおかしくない決定的な最終勝負シーンではありました・・

 ところで、レアルの先制PK(クリスティアーノ・ロナウドの先制ゴール!)だけれど、それもまた、大きなサイドチェンジパスがキッカケだったんだよ。そう・・またまた、ディ・マリアへの、マルセロからのサイドチェンジパス。それって、もちろんモウリーニョの仕掛けイメージ作りの賜物(たまもの)だったということなんだろうね。

 ということで、この先制ゴールによって、今度はレアル・マドリーが決勝進出のパスポートを握ることになった。フムフム・・

 とはいっても、その先制ゴールは前半6分のことだからね、まだまだ先は長い。だから、ゲームの「心理的な構図」に大きな変化はなかった・・と思っていた。でも前半14分に、レアルが2点目を奪ったところから、バイエルンがフッ切れた・・と明確に感じた・・

 「そこから」バイエルンのサッカーが、まさに「自分たちのサッカー」になっていったのですよ。それまでは「戦術サッカー」・・そこからは「自分たちのサッカー」・・

 それに対し、レアルもまた、「自分たちのサッカー」モードに入る。要は、次の守備を明確にイメージし、人数とポジショニングのバランスをしっかり取りながら攻撃を展開するサッカー・・。

 もちろん、クリスティアーノ・ロナウドという天才を中心にした(超速ドリブル主体の!)カウンターは言わずもがなだけれど、それにしても、人数は「必要最小限」っちゅう感じ。

 また組み立てプロセスでも、とにかく必要最小限というイメージに固執する(それこそが人数とポジショニングのバランス取り!!)。もちろん相手が全体的に下がったら、レアルも全体的に上がり、人数を掛けて人とボールを動かす組織サッカーのなかに、クリスティアーノ・ロナウドやディ・マリアの勝負ドリブルをミックスするような危険な仕掛けを魅せる。でもネ・・

 フッ切れた(チーム全体が攻守に大きく動きつづける!?)組織サッカーを魅せつづけるバイエルン・ミュンヘンに対し、レアルの攻撃は、あまりにも(様々な意味合いの!?)規制があり過ぎる・・ということか・・?

 わたしは、良い(魅力的な)サッカーが内包する(隠された!?)本質は、「常にバランスが崩れる・・」とか、「常に、自ら積極的にバランスを崩していく・・」というキーワードにあると考える。

 だからこそ、スムーズに、崩れたバランスを整えられるような(直ぐにバランスを取り直せるような)優れたバランス感覚を養わなければならないと思っている。

 そんな視点でも、この試合は、とても興味深いコンテンツを内包していたと思うわけです。そう、前述した、微妙なニュアンス(心理・精神的な揺動!?)・・

 ところでこの試合。考えてみたら、両チーム合わせて、(まあ・・系という発想は抜きにして!)9人ものドイツ代表選手がプレーしていた。

 これもまた、1990年代の半ばから実際の活動がはじまった「ドイツサッカー復活プロジェクト」の賜物だったということを考えると、ちょっと感慨深い。わたしも、そのプラニングの段階から、関わっていた友人たちの仕事の流れの一端を知見させてもらっていたわけだから・・

 ということで、わたしは、バイエルン・ミュンヘンが決勝に進んだことでハッピーです。

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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