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2012_XEROX・・見所豊富な勝負マッチだった・・(FC東京vsレイソル、 1-2)・・(2012年3月3日、土曜日)

いや、ホント、とても面白くエキサイティングな勝負マッチでした。

 私は、FC東京が同点ゴールを叩き込んで延長へ突入して欲しい・・なんてことまで思っていた。スミマセンね、ネルシーニョさん。

 それほど、負けたFC東京が展開したサッカーがインプレッシブだったのですよ。全体的には、FC東京の方が、ゲームを支配していた。もちろん「勝負」という視点じゃ、経験豊富なネルシーニョ監督に率いられたレイソルに一日の長があったとは思うけれど・・ね。

 とにかく、FC東京がブチかましたダイナミックな組織サッカーが、強烈な存在感を放散したことだけは確かな事実でっせ。

 全員が、しっかりと連動しながら(組織的なハードワークを積み重ねることで!)ボールを奪いかえそうとしていたし、素早く広い人とボールの動きをベースに、効果的コンビネーションを積み重ねていく攻撃でも、ボールがないところでのアクションに強い意志を感じた。フムフム・・

 それに刺激されたこともあったんだろうね、記者会見でランコ・ポポヴィッチ監督に質問したとき、その冒頭で、思わずドイツ語で、「色々な意味で、祝福するよ・・アナタは、色々な意味合いという表現の含むところは分かっているよね・・」なんていう言葉が口をついていしまった。ちょっと「イヤミ」だったかも・・スミマセン・・

 とにかく、ことほど左様に、FC東京が展開したダイナミックなサッカーに対して期待に胸が膨らんだ筆者だったのですよ。それは、今シーズンの彼らが、リーグの覇権争いでも重要な役どころを演じるに違いないという確信を深めるに十分なパフォーマンスだった。だから聞いた・・

 「いまポポヴィッチさんは、(FC東京が)何をやりたいかは、観ている皆さんにも感じていただいたはずだと述べていた・・たしかに東京は良いサッカーを展開している・・その、もっとも良くなっているポイントを挙げるとしたら、どのようなことだろうか?」

 「その質問は、昨シーズンのFC東京と比べて・・というニュアンスか?」

 「まあ・・そうだね・・」

 「そのことに言及するのは、昨シーズンのFC東京を率いた方々に対して礼を欠くことになる(受け取り方によっては、そう捉えられてしまう!?)ケースもあると思う・・だから、コメントは差し控えさせていただく・・」

 「では質問のニュアンスを変えることにします・・チーム作りのプロセスで、もっとも大事にしているポイントは何ですか?」

 「そのプロセスでは、ピッチ外も含めて、選手たちの真のパフォーマンス(心理&物理的な動態!?)を、しっかりと観察することが、まずもっとも大事になってくる・・要は、選手の内実を正確に把握するということだが、そのためにも、先発の選手だけではなく、それ以外の選手たちも、チームにとって重要な存在であると常に感じられるようにマネージしていかなければならないと思っている・・いまの時点でもっとも大事なことは、その一点に絞り込まれる・・」

 たしかに、ランコの言うことは分かる。こちらも、決して大熊清監督と比べようとしていたわけじゃない。大熊清監督は、とても立派な仕事を遂行していくなかで素晴らしいチームを作り上げたし、天皇杯にも優勝するなど結果も出した。

 だから、この議論については、あくまでも「今シーズンの・・」というニュアンスで捉えて欲しい。

 とにかく、ランコ・ポポヴィッチのFC東京では、軽快なタッチでパスが回るなど、人とボールの『動きのリズム』が、本当に、とてもいい。

 だからこそ、周りのチームメイトによるパスレシーブの動きも活発になる。「動けば、高い確率でパスをもらえる・・だからオレも、その次のパスを考えながら(味方の意図をイメージしながら!)スペースへ動こう・・」なんて、ネ。

 もちろん、そんな攻撃の絶対的なベース(スタートライン)であるディフェンスも、相手ボールホルダーを追い込んでいくチェイス&チェック(ハードワーク)が効果的に重なり合うなど、とてもダイナミック。

 そんなFC東京の効果的(プレッシング)組織ディフェンスがハイレベルに機能していたことで、レイソルはとても苦労した。

 ネルシーニョ監督も、「(ジョルジ・ワグネルの先制スーパーキャノンシュートが決まるまでは!?)レイソルに押し込まれ、守備にまわる頻度が高くなってしまった・・攻撃に移っても、すぐにボールを奪われてしまうことで、(FC東京に)連続的に攻撃されてしまうシーンがつづいた・・」といったニュアンスのことを述べていた。

 そのネルシーニョ監督が、ハーフタイムに、「ボールをうまくつなげられないときは、無理につなぐ必要はない・・」という、とても興味深い指示を出したとか。だから質問した・・

 「その指示は、ゲームの状況を正確に把握した実践的な対処イメージだったと思うが・・?」

 「そういうことだ・・FC東京の守備がよく、押し込まれる状態がつづいた・・そんな状況で、ショートパスをつなごうとするのでは、連続的にボールを奪われて攻め込まれてしまうのも道理・・だから選手には、押し上げてくる相手ディフェンスブロックのアタマを越すようなロングボールも使えるぞ・・といったニュアンスのヒントを出した・・その意味で後半は、スペースをうまく攻略していく時間帯もあったし、効果的なカウンターも繰り出していけたと思う・・」

 フムフム・・さすがに曲者ネルシーニョじゃありませんか。とにかく、様々な視点で、とても興味深く、エキサイティングな勝負マッチだったということです。ア〜、面白かった。

 ところでFC東京。これからも、攻守にわたってハイレベルに機能する組織サッカーを志向していくでしょ。

 そのプロセスでは、ランコのことだから、攻守にわたるハードワークを怠る(集中を切らす)ことは御法度という雰囲気が、選手たちの方から自発的に生まれ、醸成されるように「うまく」心理マネージしちゃうに違いない。

 そう、だからこそ、前述したように、チーム全員に「常に」チャンスがある・・という雰囲気(フェアな競争環境!)も同時に高揚させていかなければならない。

 FC東京には、梶山陽平、石川直宏、田邉草民、新加入の長谷川アーリアジャスール、河野広貴、渡辺千真などといった、そうそうたる連中がそろっている。

 そんな、日本サッカー期待の星が、ランコ・ポポヴィッチという「ストロング・ハンド」によって、組織ハードワークと個人勝負プレーが高みでバランスするような、本当の意味の「ブレイク・スルー」を果たしちゃうかもしれないんだよ。

 まだ顕在化していない秘めたる才能が、持てるチカラを存分に発揮できるようになるまでの「発展プロセス」ほどエキサイティングな現象はないからね。

 否が応でも、ランコ・ポポヴィッチ率いるFC東京に対する期待が天井知らずになるっちゅうもんじゃありませんか。フムフム・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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