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2010_WM(6)・・抜群に実効レベルの高いディフェンスを魅せたウルグアイ・・稚拙な組織プレーばかりが目立っていた南ア・・(南アフリカvsウルグアイ、0-3)・・(2010年6月16日、水曜日)

この試合でのウルグアイは、本当に強かったネ。もちろん、総合力に限界がある南アフリカが相手だから、彼らの良さが際立ったとも言えるけれど・・

 それにしても、個のチカラでは相当なモノを備えている南アの、まさに稚拙な組織プレーには閉口させられた。何度・・「なんで今パスしないんだよ・・どうしてバス&ムーブしないの・・どうしてスペースへ走り抜けないの??」とか、「どうして、そこでドリブル勝負しちゃうの?」なんていう頓狂な声が出たことか。

 そうなんですよ。彼らは、組織プレーが中途半端だから、個人の才能も十分に発揮させられなかったのです。

 初戦のメキシコ戦では、相手がイニシアチブを取って攻め上がってきたから、必殺カウンターも、うまくツボにはまった(最後は決め切れなかったけれど・・ネ)。そして、そのことで、素晴らしい世界デビューを果たし、南アフリカ全土に波及する、大いなる希望の「うねり」を巻き起こした。

 でも、試合巧者のウルグアイが相手になった途端、彼らの応用力のなさ(柔軟性の欠如)という悪い側面ばかりが目立ってしまった。

 試合巧者のウルグアイは、とにかく、守備が抜群に強く、巧い。局面でのボール奪取の競り合いでも、組織的なコンビネーションディフェンスでも。確かにそれは、ウルグアイの伝統だったっけ。

 そんな強いウルグアイ守備に対し、南アは、ほとんどといっていいほど、自分たちがイメージする組織的な仕掛けプロセスを形作れなかった。それだけじゃなく、南アが得意とする「蜂の一刺しカウンター」にしても、忠実でテクニカル、そしてダイナミズムにあふれたウルグアイ守備に、ことごとく芽を潰されまくっていた。

 そんなウルグアイ守備ブロックは、攻撃に入っても、あくまでも、前後左右の人数バランスとポジショニングバランスを意識しながら(注意深く!?)攻めに参加していく。そして、南アが全体的に下がったことを確認して押し上げていく。フムフム・・巧い・・

 そして、そんな強く安定した守備ブロックを基盤に、強烈な前線の個性たちが(個の才能たちが)、自由奔放に最終勝負を仕掛けていく。フォルラン、スアレス、カバーニ、アルバロ・ペレイラといった面々が、前後左右にポジションを入れ替えながら、時には勝負ドリブルで突っ掛けたり、時には、ワンツー・スリーといった素敵なコンビネーションを仕掛けていったりするのです。

 もちろん、インターセプトでボールを奪ったディフェンダーも、後ろ髪を引かれることなく攻め上がっていくわけだけれど、それは、彼らのなかで、守備意識とその実行力に対する確固たる相互信頼関係が成りたっていることの証明でもありました。フムフム・・

 ところで、フォルラン。

 攻守にわたって、本当に目の覚めるような素晴らしい組織プレーと個人プレーを披露した。スタートはサイドハーフ的なイメージなんだろうけれど、試合がはじまってしまえば、(シャドー)ストライカーとしてだけじゃなく、守備でも抜群の実効プレーを魅せたり、たまには、リンクマンやチャンスメーカーになったりと、マルチタレントぶりを発揮するのですよ。ホントに、見ていて、楽しいこと、この上ありませんでした。

 ということで、「3-0」という完勝を収めたウルグアイは、決勝トーナメントへのチケットを手にする可能性が、とても大きくなった。逆に南アフリカは、三失点という取り返しのつかないマイナスを背負ってしまうことになった。

 まあ、最終戦がフランスだから、 誰が考えても、南アフリカチームのグループリーグ突破は、とても難しくなったということになるよね。このまま彼らは、ワールドカップ史上で最初の、決勝トーナメントへ駒を進められなかったホストカントリーということになってしまうのだろうか。まあ、この状況では、それも仕方のないことかもしれない・・ね。

 ところで、もし南ア代表がグループリーグ敗退という憂き目を見た場合、大会の運営にとってそのことが、とても大きなネガティブ要素になることは言うまでもないよね。

 まず、南アフリカ社会の、ワールドカップに対する興味が大きく減退し、雰囲気がまったく盛り上がらなくなってしまうということ。また、ワールドカップが、社会的なネガティブ・エネルギーの受け皿として機能しなくなることで、犯罪が激増するかもしれないという不安もある。フ〜〜・・

 日本のジャーナリスト仲間が、南アのジャーナリストに、こんなことを言われたらしい。

 「これからは、抑えられていた犯罪が増える心配があるよな・・彼らのターゲットは、ジャーナリストなんだよ・・それも東洋系・・彼らはよく知っているんだ・・あなた方が裕福であることと、狙いを定めやすいことをね・・とにかく、くれぐれも気をつけてくれよ・・」

 ワールドカップに対する社会的な雰囲気が盛り下がっていく・・そして、ワールドカップという巨大な刺激によって抑え込まれていた犯罪への欲望が、再び燃え上がる・・それも、ターゲットは、東洋系のジャーナリスト・・

 あまり考えたくないことだよね。とにかく、気をつけよう。でもサ、いくら気をつけたって、これだけはネ〜〜。何せ、こちらでは持つことが合法のピストルを突きつけられた、もうどうしようもないわけだから・・。フ〜〜・・

 そんなことも含む日常の話題については、これから追い追い取りあげていくようにしますので・・

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。

 4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。

 出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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