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2012_CWC_三決と決勝・・(決勝としては!)とてもエキサイティングで面白い勝負マッチへと成長していった・・(2012年12月16日、日曜日)

へ〜っ!・・「あの」チェルシーでも、こうなっちゃうんだ〜っ・・

 後半のゲーム展開を観ながら、そんなことを考えていました。要は、前半と比べたら大きくダイナミズム(力強さ)や運動量がダウンしたということです。

 まあ・・ネ、何せ、先週末にプレミアのハードマッチをこなしてから来日し、クラブワールドカップの準決勝も、コリンチャンスの準決勝の翌日ということで、回復のための時間でも、丸1日のハンディキャップを背負うことになったわけだからね。

 いくら世界選抜の猛者チームとはいっても、そこは・・

 そんな後半に対して前半のチェルシーは、素晴らしいサッカーを展開し、多くの決定的チャンスも作り出した。

 ・・セットプレーからのこぼれ球をフリーシュートしたシーン(相手GKの真正面に蹴ってしまった!)・・カウンターの流れで、アザールからのサイドチェンジパスを全くフリーで受けたモーゼスのシュートシーン(相手GKが奇跡的なセーブ!!)・・

 ・・また、ランパートからの一発ロングパスをスパッと止め、そのまま右足でボールを流し込もうとしたフェルナンド・トーレスの決定的シュートシーン(これまた相手GKの真正面に飛んでしまった)・・それ以外にも、何本か、決定的ミドルシュートのシーンもあった・・

 それに対してコリンチャンスは、チカラまかせのドリブルシュートから、それがゴールを外れていった逆サイドのエメルソンが、ダイレクトで叩いたシーン(サイドネットへ直接サイドネットへ・・)くらいだったですかね、チャンスらしいチャンスは。

 とにかく前半は、チームとしてのチカラの差がアリアリと感じられたんだよ。それが・・

 ところでコリンチャンス・・

 彼らは、キックオフ当初から、ビックリするくらい積極的に攻め上がっていったよね。ということで、私のゲーム展開予測は見事に外れた。要は、コリンチャンスが、守備ブロックを固めたカウンター狙いを徹底する・・なんて思っていたんだよ。それが・・

 たぶん、賞金をチーム全体で「山分けする」という取り決めや、ブラジルから駆けつけた(なかには家を売り払って資金を捻出した人もいる・・なんていう、まことしやかなウワサも飛び交うほどのパワーを秘めた!?)大応援団に後押しされたこともあったんだろうね。

 そんなレベルを超えたエネルギーには、後半になってより増幅した・・なんて印象まで植え付けられるほどの勢いが備わっていた。逆に、チェルシーの「フィジカル」は、時間を追うごと、目に見えて減退していった。フムフム・・

 まあ、そんなこともあって(!?)、ゲーム自体は、互いに攻め合う、とてもエキサイティングで面白い勝負マッチへと成長していったんだろうね。

 でもサ、逆から見れば、ゲーム内容がそんな風に変容していったからこそ、誰もが、チェルシーが秘める実力の奥深さを実感していたに違いないとも思っていた。

 後半のコリンチャンスだけれど、冒頭で示唆したように、その押し上げが風雲急を告げはじめ、「あの」強力なチェルシー守備ブロックを振り回すシーンまでも作りはじめてしまうんだよ。

 でもサ、だからこそ、チェルシーの地力が垣間見えたんだよ・・

 本当に、チェルシーの守備ブロックは(特に最終勝負シーンで!)強かったんだ。たしかに押し込まれてはいたけれど、最後のところで、決して決定的シュートは打たせない。

 最後のシュートの瞬間には、必ず誰かが「身を挺す」んだ。身体を投げ出してコリンチャンスのシュートをブロックしたり、ダイナミックなスライディングで、コリンチャンスが上げようとするクロスを抑えちゃったり。

 そんなチェルシー守備の、ギリギリのところでの「危機管理能力」には、本当に舌を巻いた。そして思っていた。これこそが世界トップの粘りディフェンスだ・・

 その強烈なチェルシー守備ブロックの絶対的コアが、タテのブラジル人コンビ、最終ラインのダビド・ルイスと、中盤の底で縦横無尽の活躍を魅せたラミレスだった。

 何かサ、ギリギリのせめぎ合いシーンじゃ、「コリンチャンスのブラジル人」対「チェルシーのブラジル人」ってな構図が見え隠れしていたことで、何か奇妙な感覚に包まれたっけネ。

 そして思っていた。やっぱり、ブラジルは世界のサッカー王国なんだよ・・攻撃ばかりに注目されるけれど、攻撃の天才連中がいるからこそ、それを抑えなければならない守備でも才能が大きく開花するんだ・・

 以前にも何度か書いたけれど、世界トップリーグで活躍するブラジル人では、何といってもディフェンダーの方が目立っているよね!? そう思いませんか?

 あっと・・ちょっとハナシが逸れた。ということで、コリンチャンスの決勝ゴール。

 皆さんも観られたとおり、それは、どちらかといったら「偶発性の高いゴール」だった。要は、最高の「ツキ」に恵まれたコリンチャンスのゲレーロっちゅうわけさ。偶然と必然が、グチャグチャに交錯するサッカーの面目躍如!?

 サッカー内容的にチェルシーに肩入れしていたから、そのゴールには、ちょっと落胆しきりの筆者だったのですよ。フ〜〜・・

 まあ、とはいっても、後半のコリンチャンスが魅せつづけた「闘う意志のレベル」は素晴らしいの一言だったから、それは、まさに自分たちで(自らのハードワークで!)奪い取ったフェアなゴール(勝利)だったとするのが正当な評価だろうね。

 いや、ホント、久しぶりに「世界のギリギリの勝負マッチ」を心から堪能させてもらった。

 それにしても「ブラジル」。やっぱりスゴいね。ということで、来年のコンフェデレーションズカップが楽しみになってきました。

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 最後に、簡単に三位決定戦も振り返りまっせ・・

 シュート数じゃ、最終的にはアル・アハリが凌駕したけれど、そりゃ、リードされていたことでフッ切れて攻め上がるしかなかったんだから、まあ当然の成りゆきではありました。

 とはいっても私は、あれほどシュートを打たれたモンテレイが魅せた、「したたか」なサッカーに舌鼓を打っていましたよ。

 前半は、へスス・コロナの先制ゴールの後、モンテレイは落ち着いたサッカーを魅せた。もちろんアル・アハリは積極的に攻め上がっていく。でも、本当の意味でのチャンスは作り出せない。

 そんな展開を観ながら、やはり、これが地力の差なんだろうな〜・・なんて思っていた。

 要は、ボールは支配するアル・アハリだけれど、肝心のチャンスメイクの流れは、あまりに稚拙だったんだよ。

 要は、モンテレイ守備には、アル・アハリの次の仕掛けが明確に「見えていた」ということです。経験ベースの「予測能力」というか、足許パスばかりのアル・アハリの仕掛けが稚拙というか・・

 でも、予想に反し、時間を追うごとにアル・アハリが仕掛ける攻撃の実効レベルが上がっていったんだ。その、ゲーム内容の変化には、とても興味を惹かれた。

 私は、アル・アハリの攻めの実効レベルはアップしていかない・・と踏んでいたんだよ。

 それが、時間の経過とともにポジティブに変化し、実際に何度も、モンテレイ守備ブロックのウラを突くような(モンテレイ守備を振り回すような!)チャンスを作り出しはじめたんだ。

 そんなゲーム展開の変化だけれど、私は、モンテレイ守備の機能性がダウンしたのではなく、アル・アハリの仕掛けの危険度がアップしたことが、そのバックボーンだと思っていた。

 そう、要は、彼らの仕掛けプロセスでの「ボールがないところでの動きの量と質」がアップしたということです。だからこそ、彼らの足許パスが、スペースパスへと、ポジティブな変容を魅せるようになっていった・・!?

 この足許パスとスペースパスについては、以前の「バルセロナ・コラム」を参照してくださいね。

 でも、そんなアル・アハリだったけれど、結局はモンテレイの「粘りのディフェンス」を崩し切るところまでは到達できなかった。まあ、だから地力の差・・

 その他にも、モンテレイが魅せた、特徴ある「ショート&ショート&勝負」という攻撃プロセスというテーマもある。

 そのキーポイントは、人とボールの動きのリズムなのだけれど、そこでは、ショート&ショートというパスの組み立てによって相手ディフェンスを意図的に 「あるゾーン」に引き寄せ、そして唐突なテンポアップで「勝負のコンビネーション」を仕掛けていくという発想がベースになっている。

 でも、ちょっとアタマの回転が鈍ってきたから、今日は、こんなところにします。

 とにかく、今年のクラブワールドカップでは、それぞれのクラブが、それぞれに特徴あるサッカーを展開したことで、とても興味深い「グラウンド上の現象」をいくつも発見できたし、脳内のイメージタンクにも収めることが出来た。

 ということで、とても満足して帰路についた筆者なのでした。

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 





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