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2012_J1昇格プレーオフ決勝・・両チーム監督の素敵なコメント・・(ジェフ千葉vs大分トリニータ、0-1)・・(2012年11月23日、金曜日)

「そうですね〜・・」

 ちょっと考えたジェフユナイテッド千葉の木山隆之監督が、静かに話しはじめた。

 「内容としては上回っていたにもかかわらず、結局は、相手の一発に沈んでしまった・・まあ、サッカーではよくあることだけれど、いま、改めて問われたとき、この現象を、どのように表現されるでしょうか?」

 そんな私の質問に対し、木山隆之監督が、こんなニュアンスの内容をコメントしてくれた。(例によって行間ニュアンスも含めて!)曰く・・

 ・・まあ、サッカーだから、こんなこと(内容と結果の大きな乖離!?)は日常茶飯事ですよね・・だから、この一つのゲーム内容から、より深いコトをどう のこうのと語るわけにいいきません・・それより、このゲームで我々がベストマッチを披露したということだけではなく、最後まで諦めずに最善を尽くしたとい うことの方が大切なコトだと思いますよ・・

 ・・ということで、ご質問の内容を噛み砕いていくわけですが、そこでは、我々がこの一年間、何をやってきたのか・・我々がどんなサッカーを志向し、どこまで到達できたのか・・というテーマに行き着くんでしょうね・・

 ・・今シーズンのジェフは、22チームのなかで、もっとも失点が少ないチームでした・・そう、守備は安定させることが出来たんです・・でも、攻撃では、 まだまだ課題は残されていました・・そんな、ちょっとアンバランスな部分が、一年間を通したリーグ戦に現れたということなのかもしれません・・勝たなけれ ばならなかった試合に引き分けたり、負けたりといった具合にネ・・

 ・・要は(サッカーの内容からすれば!?)少し負けすぎたということです・・それが、ジェフが自動昇格の順位に届かなかったことの背景にあると思うので す・・もちろん、いま話したコトは「タラレバ」でもありますが・・とにかく来年は、この経験も踏まえて、しっかりと頑張って欲しい・・今は、一生懸命に (一緒に)歩を進めてくれた選手たちへの感謝しかありません・・

 フムフム・・

 逆に、トリニータの田坂和昭監督は、同じようなニュアンスの質問(もちろん、内容や実質的なチャンスの量と質でもジェフに軍配があがるという事実も、しっかりと質問のなかで言いましたよ・・)に対し、こんなニュアンスの内容をコメントしてくれた。

 (例によって行間ニュアンスも含めて!)曰く・・

 ・・サッカーでは、ポゼッション率の高さが唯一の勝利のファクターじゃないですよね・・そんなサッカーのメカニズムについては、選手たちに常々語りかけ ているんです・・だから、決して諦めるな・・諦めずにチャレンジをつづけていれば、必ずいつかは何かを起こすことが出来る・・それが、サッカーの、サッ カーたる所以なんだってね・・

 ・・たしかにこの試合では、客観的に観ても、我々の方が内容に乏しかったと思いますよ(・・と、ジェフにイニシアチブを握られていたことを素直に認めながら・・)・・それでも、ゲームの行方がどうなるのかなんて、誰にも分からない・・

 ・・たしかにこのゲームでも、ジェフにゲームをコントロールされた部分はあるでしょうが、それでも選手たちは、勝敗がどうなるかなんて最後まで分からないと確信していたはず・・

 ・・ここで言いたいのは、最後まで諦めずにチャレンジをつづけたことにこそ本物のチカラが宿っていたということです・・私が常日頃、選手たちに強調しつづけたようにネ・・そんな不断の努力が、この日の結果につながったと思っているんです・・

 いいね・・

 また、田坂和昭監督は、この二年間のチーム作りについて、こんなニュアンスの内容もコメントしていたっけネ。そこには、ホント、ものすごく興味深く、そして素敵なコンテンツが満載だったぜ。(例によって行間ニュアンスも含めて!)曰く・・

 ・・この二年間??・・選手たちは本当に努力したと思いますよ・・彼らの多くは、他のチームでは芽の出なかった選手なんです・・なかには、あからさまに(監督に嫌われて!?)レギュラーコースから外された選手もいた・・

 ・・彼らのなかには、そんな不遇の時代を(以前のチームを)見返してやるという意識もあったと思います・・だから、このチーム(トリニータ)で結果を出したいという意欲が殊の外強かったんです・・

 ・・とはいっても、他のチームでは十分にプレー出来ていなかったことで、経験とか闘う意志とか、実戦的なスキルとか、さまざまな要素が中途半端になってしまっていた・・

 ・・昨年のシーズンですが、そんな事情もあって、当初は、選手たちに逃げのプレー姿勢が目立っていたんです・・それが、試合を重ねるごとに・・まあ、失 敗を重ねるごとにとも言えますし、その失敗を、心理・精神的にも乗り越えていくたびに・・とも言えそうですが・・とにかく彼らは、そんな体感を通して、ど んどんと逞しくなっていったんです・・

 ・・この試合での勝利は、二年間に培った逞しさが呼び込んだと言えるかもしれませんね・・ゲームの最後の時間帯には、チームメイトのミスを積極的にカ バーするといった自己犠牲のプレー姿勢も明確に観られましたからね・・それは、本当の意味で優れたプレーだったと思います・・本当に選手たちは逞しくなっ た・・

 このコラムでは、両監督の、(行間ニュアンスも含む!)有意義なコンテンツに注目することにしました。

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 最後に、今年からスタートした「J1昇格プレーオフ」というシステムについて。

 それは、2部リーグ(J2)上位チームのなかで(1位と2位は自動昇格!)、「最後の3位のイス」を争う勝負マッチです。

 わたしは、まだ現場の人間だと思っているから、心情的には、一年間を通した成績「のみ」をベースに、降格・昇格は自動的に決まるべきだと思っています。

 その方が、様々なファクターがより明確になるという意味でもフェアだと思うのですよ。何せ、一年間を通した戦績という「数字」には、とても確かな根拠が内包されているわけだからね。

 とはいっても、ビジネス的にも、サッカーのプロモーション(普及)ツールとしても、「昇格プレーオフ」が、とても効果的なイヴェントになり得ること「も」否定できない。

 また、そこでは、「互いの持てるチカラを出し切る!」最高の闘いが展開されるという意味で、その内容が、日常のリーグ戦にも影響を与えるでしょ。そう、「今後の」最高パフォーマンスの絶対的なスタンダード(指標)としてね。

 各チームの監督さんだって、選手をモティベートするための効果的な心理ツールとしても活用できるはずだよね。フムフム・・

 とはいっても、そのプレーオフに参加するチーム同士の年間リーグ成績が(勝ち点が)あまりにも離れすぎていた場合は、「フェア度」に大きな疑問符がつくよね。

 例えば、今回だと、3位から6位までのチーム内における年間勝ち点に「10」以上の差があった場合・・とかね。

 また、一発勝負の決勝を、どのスタジアムで行うか・・というテーマも残る。

 今回は、どのチームも「ホームスタジアム」としていない日本サッカーの聖地、国立競技場で行われたから、それは、それでよかったんだろうけれど、もし国立競技場で決勝を戦うことによって、一方のチームに著しい不利益が生じるってなことになったら難しいよね。

 今回でも、千葉と大分じゃ、あまりにも移動距離に差があり過ぎるしネ・・さて〜・・

 まあ、一部昇格プレーオフというイヴェントに、既に25年の歴史がある(そして毎年、ものすごい集客力を魅せる)イングランドの場合は、ロンドンにある絶対的なサッカーの聖地、ウェンブリーで行われるから、誰も異論は唱えないだろうけれど・・
 
 また、今回のプレーオフ勝者が(J1へ昇格するチームが)、参加した4チームのなかでは最も下の6位だったトリニータという事実にも、何らかの考察要素が内包されているのかもしれないネ・・さて〜〜・・

 それ以外にも、ホームチームとアウェーチームの「アドバンテージ・レギュレーション」もある。

 総合的にみたら、「使えるイヴェント」ということなんだろうけれど、もしそこに、誰もがアンフェアだと「感じる何か」が生じた場合に、問題が「雪だる ま」になっちゃう可能性も否定できない。まあ、そのときは、協会のマネージメント能力が問われるっちゅうことなんだろうけれど・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 





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