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2012_J2・・山口素弘との対話・・いいネ・・(ヴェルディvs横浜FC、 0-1)・・(2012年11月4日、日曜日)

「笑われても構わない・・とにかく、いくら小さなモノであったとしても、可能性があるのに、初めから=それ=を否定するような愚か者にはなりたくなかった・・」

 試合後の、横浜FC山口素弘監督の、もっとも印象深かったコメントでした。

 彼が言う「それ」とは、もちろんリーグ優勝のことだよ。

 この会見では、二つの質問を投げかけたのだけれど、実際の底流テーマは、まあ、一つに集約できますかね。

 チームの確信レベル(モティベーションレベル)を極限まで高揚させる優れた心理マネージメント・・

 例によって、山口素弘さんのコメントについては、その骨子内容を、独断と偏見で(私なりに行間のニュアンスも含めて!)編集しちゃいます。いいでしょ!?

 ということで、会見冒頭の山口さんの総括コメントに続き、まず私が、「いまの状況は、最終節の結果によっては、2位クラブとして直接J1へ昇格というこ とになるわけですが、監督に就任した当時、正直、そこまで行けると思っていましたか?」なんていう質問を投げたわけです。

 それに対して山口素弘さんは、こんなニュアンスの内容をコメントしてくれた。曰く・・

 ・・就任した当時、チームでは、後ろ向きのプレー姿勢(雰囲気)が目立っていた・・だから、まず、前を向いて積極的にチャレンジしていく態度を、日常から植え付けていくことにトライした・・

 ・・そして、ある程度のプロセスを経るなかで、(こうなったら!?)一番上を目指すぞっていう覚悟を選手たちに伝えたんですよ・・もちろん最初は、オッ サン、何を血迷ってんだ・・なんていう雰囲気だったけれど、私のマネージメント姿勢は、まったくブレなかったと思っています・・

 そんなコメントのなかで、冒頭の発言が出てきたっちゅうわけです。いいでしょ。そして・・

 ・・そして、試合を重ねていくなかで、選手たちも、そのことについて徐々に確信レベルを高めていったと思うのですよ・・もちろん、サッカー内容が充実し ていったことが、その絶対的なバックボーンにあったわけですが、私は、指揮官として、選手たちが深めつつあった自信を、トレーニングやミーティングなどを 通して、確信へと変容させていく努力をつづけたつもりでした・・

 そう、優れた心理マネージメント。

 聞くところによると、山口監督は、攻守にわたる個々のプレーについて、とても的確な助言をするのだとか。選手たちも、その「実効あるアドバイス」によって、山口素弘監督に対する信頼感を醸成させていったんだろうね。

 もちろん、監督は、「人間の弱さ」とも対峙しなくちゃいけないけれど、そこでの「ぶつかり合いプロセス」をポジティブにリードできるバックボーンの一つとして、実際のグラウンド上のプレーに対する的確アドバイスがあれば、それはそれで、とても重要な成功要因になるよね。

 選手はエゴイスティックなものだし、出来れば「楽して金を稼ぎたい・・」って思うものだからね。でも、彼らはディエゴ・マラドーナじゃない。だから、攻守にわたって、しっかりと、汗かき「にも」精進しなければ、決して果実を得ることは出来ない。

 良いチームでは、不満「も」、そこそこは蓄積されていなければならない。いや、もっと言えば、優れたチームは、そんな「不満の塊」と言えるかもしれない。

 だからこそ、優れた監督は、選手との「パーソナリティーのぶつかり合い」を、上手くマネージできるものなんだよ。山口素弘という優れたパーソナリティーも、チームのために、そんな「ネガティブなエゴ」と、様々な意味合いで「闘った」んだろうね。

 そこのところを、山口素弘さんは、こんなニュアンスのコメントに込めていた。曰く・・

 ・・選手たちの(物理的&心理・精神的な!)たくましさは、就任当初から比べれば、様々な意味合いで、ポジティブに変化してきていると思います・・そんな選手たちですが、彼らは、頂点を目指すという私の覚悟に揺らぎがないこと「も」実感していたはず・・

 ・・まあ、正直なところ、このオッサン、ホントに諦めが悪いな・・なんて思っていたかもしれない・・でも、呆れかえりながらも、最後まで付いてきてくれた・・

 ・・僕自身も、新米の監督だし、まだまだチカラが足りないことを承知しています・・トレーニングや戦術プランなどでも、色々と失敗したりする・・そのな かで、自分も成長しなければ、選手に追い付かれてしまうという不安もあった・・だからこそ、日々の精進を怠らない・・まあその意味では、選手と、成長の競 争をしていたと言えるかもしれません・・

 このポイントが大事なんだよね。

 たぶん山口素弘さんのコーチング姿勢は、こんな感じなんじゃないのかな〜・・。そして、その真摯なコーチング姿勢が、選手たちに深く受け容れられ、レスペクトされた!?

 ・・(事実に即して!)自分は、これからキャリアを積んでいく新米のプロコーチ・・でも、実効あるプレー内容だけではなく、サッカー(チーム戦術!?) の正しい方向性についても確信をもっているつもりだ・・そのことについては、監督の義務として、決してブレずに、責任感をもってチームを引っ張っていく覚 悟だ・・

 ・・もちろん失敗することもあるだろう・・そのときは素直に反省することで事象のファクターを見直し、より良い方向へ進むために(選手とも話し合うなかで!?)工夫し、努力していく・・等など・・

 もちろん、人間の弱さとの「真摯な闘い」という意味合いも含めて・・ネ。

 とにかく、この一年、とても良い仕事をやり遂げた山口素弘さんが、「プロコーチとしての難しいファーストステップ」を成功裏に踏み出したことが嬉しくて仕方ない筆者なのでした。

 日本は、多くの優れたプロコーチを必要としているんですよ・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 





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