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2013_ドイツ便り(その2)・・環境こそが人を育てる・・だからこそ、まず心理環境の整備にチカラを傾注しなければ・・(2013年7月10日、水曜日)

どうも皆さん・・

 ドイツで、ちょっと骨休めの筆者です。

 先週末の「J」では、アルディージャとレッズの勝ち点差が「3」まで縮まったとのこと。またレッズは、サッカーの内容でも、とても良かったと聞きました。

 帰国して、彼らのサッカーを観るのが楽しみじゃありませんか。もちろん、FC東京、マリノス、フロンターレ、レイソル、ベルマーレ、ヴェルディ、横浜FCなどなどもね。

 ということで、週末には、リーグのレポートを期待された(!?)多くの方々が、わたしのHPにアクセスされました。

 でも、いまは、骨休め。スミマセン、ご容赦・・

 1週間もしたら、ドイツの友人たちと会って情報交換をしたり、ブンデスリーガクラブの、シーズン前トレーニングや練習マッチの観察など、徐々に活動をはじめようとは思っていますが、とにかく、今は骨休め。あははっ・・

 あっと・・。月末には、ドイツ(プロ)サッカーコーチ連盟が主催する国際会議にも出席します。

 ということで今は、親友が住む、ドイツ最北端(デンマークとの国境)にあるフレンスブルクという美しい町に滞在しています。

 以前にも紹介しましたが、ここ、ドイツ最北端の「シュレスヴィッヒホルシュタイン州」は、ドイツ人の誰もが憧れる、森や田園、運河や湖といった美しい自然にかこまれた地方です。

 そこには、山がありません。とにかく平坦。だから「フラットランド」とも呼ばれる。まあ、変化に乏しいとも言えるけれど、「平板」だからこそ・・という視点もあるんですよ。

 いくつかの写真を掲載しますが、至るところに運河が張りめぐらされ、そこにヨットが係留されていたり、フェリーを使ってクルマが対岸へ渡ったりと、とにかく独特な雰囲気がある。

 田園や湖、森などを縫うように整備されている道路にしても、まさに「ワインディング」と呼ぶに相応しい、変化に富んだ「網の目ロード」だからね、単車のツーリング族には堪(こた)えられない。

 写真のなかに、そんなワインディングの雰囲気を感じられる一枚があるでしょ。

 わたしも、友人のオートバイを拝借して走り回りましたよ。もちろん夏の、それも天気の良い日だけだけれど、とにかく爽快。でも、牛の糞(フン)を踏んだら簡単にスリップしちゃうから、もちろん慎重なライディングが求められるけれどね。

 そして、ヨットハーバーの洒落(しゃれ)たキャフェのベランダテーブルで、コーヒーを飲みながら読書に勤しむ・・なんてね。まあ、とにかく、英気を養うには最高の環境っちゅうわけです。

 ちなみに私は、ドイツへ出張するたびに、時間をつくっては、「フラットランド」を訪れるようにしています。最高の癒(いや)しを求めて・・

 あっと・・。ここからコラムの本題に入ります。日本サッカーに欠けているモノ・・

 「本当に、日本代表チームは、美しい組織サッカーを魅せてくれたよな・・負けはしたけれど、特にイタリア戦やメキシコ戦では、彼らの良さが詰め込まれていたと思う・・でも・・」

 「でも、何だよ・・」

 「いや・・オマエも分かっているはずだけれど、日本は、ボールを展開すること(ボールを動かしてスペースを攻略すること!?)にかけては、疑いなく世界レベルにあるとは思うけれど、最後の勝負所でのプレーが、あまりにも淡泊だし、怖さがないんだよ・・」

 親友の家に集まってくれた友人たちが、異口同音に、日本代表チームが展開した素晴らしい組織サッカーを称賛する。

 もちろん彼らは、若いときにはサッカーをやっていた。だから、「ツボを見る目」をもっている。もちろん、表現は様々だけれど・・。

 彼らは、私との関係もあって、コンフェデレーションズカップを(特に、ドイツで目立っているプロ選手が多い日本チームを!)テレビ中継で追いかけていたということだった。そんな彼らが、日本の弱みをズバリと突いてくるんですよ。

 「ブラジルやイタリア、またメキシコにしても、ゴール前までいったときの怖さは、日本の何倍にも膨れ上がるっちゅうイメージだよな・・最後はパスで崩そ うとする日本に対して、ヤツらは、たとえ追い詰められても、最後はドリブルで突破しちゃう・・というか、ドリブルで突破してやるっちゅう気持ちを爆発させ るように突進していくとかサ・・」

 そこで、その発言をした彼が、ジェスチャーと擬音を交えながら、何か、得体の知れない「パワフルなオブジェクト」が壁を突き破って突進していく「イメージ」を表現するんだよ。

 そう、友人たちは、そんなフットボールネーションの強者たちと比べて、最後のシュートへ至るプロセスで、日本は、あまりにも怖さや迫力に欠けていた・・と言っているんですよ。

 皆さんもご存じのように、シュートを打つためには、パス(コンビネーション)とドリブルを柔軟に組み合わせて仕掛けていくよね。

 もちろん、パス主体のプロセスに偏るチームもあれば、逆に、個のドリブル突破の方が目立つチームもある。

 でも、世界のトップチームは、やっぱり、組織パス(コンビネーション)とドリブルを柔軟に組み合わせて仕掛けていくんだよ。そう、仕掛けの変化。それが、うまく機能してはじめて、相手ディフェンスを惑わせ、振り回せる。

 あっと、もちろん、あくまでも組織パス(コンビネーション)が絶対的なベースだよ。そのなかに、個人勝負も効果的にミックスしていくっちゅうイメージだよね。

 それにフットボールネーションの強者たちには、強烈なミドル(ロング)シュートや、放り込みのハイボール・・なんていう攻め手もある。

 要は、相手ディフェンスに、勝負所を「絞り込ませない」っちゅうことですね。

 友人たちは、それに対して日本の「攻め手」はあまりにも限られていたから怖くなかった・・っていうことが言いたかったんでしょうね。

 「その後」にインタビューされた日本代表の選手たちも、異口同音に、「これからは、個のチカラをアップさせていかなければ・・」といったニュアンスの発言をしていたっけね。

 そう、個のチカラ・・

 それには、フィジカルやテクニックを鍛えるだけじゃなく、選手個々の「考えるチカラ」や「意志のパワー」も、同時に高揚させていかなければなりません。

 そして、「その要素」は、生活文化と切っても切れない関係にある。だから、難しい・・

 この「環境」というテーマについては、先日アップした、沢田啓明さんとの「The 対談」記事でも書いたよね。

 ただ、難しい、難しい・・といって、そのテーマに真剣に取り組まないようでは、もちろん何もはじまらない。

 とにかく、サッカーに関わる全員が、そのテーマを「常に」意識しつづけることで、「それを心理的な環境」にしてしまうことが大事だということなんだろうね。

 ドイツでの、友人たちとの楽しい語らいのなかで、環境こそが人を育てる・・という普遍的なテーマについて「も」思いを馳せていた筆者なのでした。

 あっと・・もちろん、緑濃い素敵な自然環境のなかでね・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 





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