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2013_ドイツ便り(その3)・・唐突ですが・・長谷部誠、田坂祐介、そして岡崎慎司について・・(2013年7月21日、日曜日)

どうも皆さん・・

 ちょっと(ドイツでの)骨休めが高じて、モティベーションがダウン気味という体たらくの(!?)筆者です。

 そんなところに、昨日、東アジアカップを取材中のジャーナリスト仲間から、安藤梢がスーパーなシュートを決め、なでしこが中国を「2-0」で破ったという連絡が入った。

 そして先ほど、日本代表が、逆転でリードを奪った「3-1」から、結局は中国代表に「3-3」に追いつかれてしまったというニュースも入ってきた。フ〜〜・・

 国内組にとっては「サバイバルの大会」だからね、追い込まれた方が、逆にフッ切れ、良いプレーが出てくると思いますよ。いいネ・・とてもエキサイティングな学習機会・・

 そしてこちらは、「そちら」も、とても楽しそうだな〜・・なんて・・ね。

 わたしは・・といえば。今週から動きはじめているのですが、どうも、うまくタイミングが合わない。

 最初に訪れたヴォルフスブルクでは、帰独まもないということで、長谷部誠は「初期のコンディショントレーニング」に集中している。

 こちらは、トップチームのスケジュールをネットで確認して動いているわけですが、長谷部誠は、その日(火曜日)に予定されていた地元のアマチュア選抜 チームとの親善マッチに出場しなかっただけではなく(別の場所でコンディショントレーニングをした後に、トップチームとともに、試合会場に観戦に来たけれ ど・・)、翌水曜日のトレーニングでも、トップチーム全体練習の前に、インターバルトレーニングに励んだだけでした。

 わたしは、全体練習の30分前にはグラウンドに到着していたから、そのインターバルトレーニング(ダッシュと流しを繰り返すランニング)は観察はできたけれど・・

 あっと・・。そこには、(これまた帰独間もない!?)ク・ジャチョルも、1人で軽いランニングに励んでいたっけね。

 ということで長谷部誠については、ボール絡みの(グループ&チーム戦術的な学習ができる)トレーニングはまったく観察できなかった。

 でも、ヴォルフスブルクの全体練習では、ちょっと興味深い現象を体感できましたよ。

 その日の全体練習では、ラッキーなことに、15分四本の紅白マッチをやったのですが、そこで、監督のヘッキングが練習を止めて強烈な刺激を飛ばし、それからしばらくして、何らかの不満がたまっていたジエゴが、大声で不満を飛ばしたんだよ。それも英語で・・

 まず、ヘッキングの「刺激」・・

 「どうして、ヒールパスなんかするんだ・・相手に狙われているのはわかり切っているじゃないか・・ヒールパスなんかせずに、そのまま勝負したら、シュートまで行けたかもしれないのに・・とにかくチャンスになったら、勇気をもって勝負しろっ!!」

 グラウンド全体に、ヘッキングの声が響きわたる。

 そのヒールパス状況は二回あったんだけれど、その二回ともに相手ディフェンスに「読まれ」てインターセプトされてしまったんだ。

 ヘッキングは、そのミスを受けて、勝負をせずにパスしようとする「消極的なプレー姿勢」に対して強烈な文句をブチかましたんですよ。

 その「檄(げき)」によって、もちろん雰囲気がちょっと締まった。でも今度は、うまくプレー出来ないヴォルフスブルクのエース、ブラジル代表でもあるジエゴが、爆発した。それも英語で(なかなか流暢な英語だった)・・

 「どうするんだよ・・プレッシングをするなら、もっと徹底しなきゃダメでしょ・・どうするんですか?・・プレッシングをするんでしょ!!・・」

 それに対して、ヘッキングが一言。「オーケー・・」

 それからのジエゴはすごかったよ。

 やっぱり文句を言った手前、まず自分から率先してチェイシングと協力プレスのアクションを繰り返さなければカッコがつかないからね。

 もちろん、自分が必死にやっているのだから、仲間のサボリは許さない。もちろん周りの味方も、エースが「行き」つづけているんだから、行かざるを得ない。

 それからは、攻撃「も」、大幅にテンポアップしたっけね。やっぱり、ディフェンスこそが全てのスタートラインなんだよ。

 「それ」が、活性化し、うまく回りはじめたら、攻撃でも、ボールがないところでの動きの量と質がアップし、コンビネーションの機能性も、大幅にアップする。

 この「心理的&物理的なメカニズム」については、いつも書いている通りです。

 そして、ジエゴのボール奪取から、カウンター気味に「ワン・ツー・スリー・フォー」なんていう素晴らしいコンビネーションが決まったりする。

 もちろんヘッキングも、「それだ〜〜っ!!・・それだよ・・!!」ってな具合に選手たちを鼓舞する。

 やっぱり、何らかの「刺激」こそが、人間の「心(意志)」を活性化させる・・っちゅうことだね。フムフム・・

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 そんなこんなで、長谷部誠は観察できなかったけれど、自分自身のイメージトレーニングは十分にできたと満足してホテルへ向かった次第でした。

 その翌日の木曜日は、エッセンの友人宅にお世話になる予定だったので、移動の途中で、現在はブンデスリーガ2部に所属するVfLボーフムのトレーニングを観察することにしました。

 そこでは、昨シーズンから、フロンターレに所属していた田坂祐介が活躍している。また、監督のペーター・ノイルーラーは、Aライセンスのコーチングスクールの仲間だった。もちろん30年以上前のことだから、覚えちゃいないだろうけれどネ・・あははっ・・

 田坂祐介。昨シーズンは、背番号「6」でプレーしたけれど、今シーズンからは、背番号「10」をつけるとのこと。

 トレーニングでも、よくボールに触っていた。とても才能ある選手だからこそボールに触ることこそが大事。もちろん、だからこそ、全力で、ディフェンスからプレーに入っていかなければならないのですよ。

 まあ、今日(21日の日曜日に)ウニオン・ベルリンと、アウェーで対峙する開幕ゲーム前の練習だから、軽めに押さえたということなんだろうね、1時間ほどゲーム形式の(最終調整的な雰囲気が支配するなかで)トレーニングをやっただけだった。

 そのゲームだけれど、(先ほど)ボーフムは、アウェーゲームを制して開幕マッチを飾った。田坂祐介も、後半の84分までプレーしましたよ。残念ながらベルリンまでは足を伸ばせなかったけれど、今後の彼の活躍も注目しましょう。

 ところで監督のペーター・ノイルーラー。

 木曜日のトレーニングの時、練習グラウンドに入るところで、ちょっとだけ目が合った。「あっ・・オレ・・このアジア人をどこかで知っているかも・・」なんていう怪訝(けげん)な表情を作り、ちょっとだけ、ジッと見つめられたっけね。

 トレーニング前だからね、もちろん私の方から声を掛けるなんて邪魔はしなかった。あははっ・・

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 最後になりましたが、今シーズンから「マインツ05」に移籍した岡崎慎司のハナシに移りましょう。

 このタイミングでは、シーズン前の親善大会や、スーパーカップなどが目白押し。いろいろと目移りはするけれど、やっぱり大好きな岡崎慎司のコトが気になるんですよ。

 ということで、昨日の土曜日に、マインツ05と、プレミアリーグの雄、ウエストハムユナイテッドの親善マッチを観てきました。

 結果は「4-1」でマインツの勝利。内容的にも圧勝といえますかね。

 とにかくマインツは、とても、とても良いサッカーを展開した。組織サッカーをベースに、要所で、岡崎慎司も含めた「個の勝負」をぶちかましていくんだよ。

 この試合でのマインツは、前半と後半で「メンバー全とっかえ」というやり方だったね。それに対してウエストハムユナイテッドは、後半になってから、6-7人の選手を段階的に交替させていた。

 その前半のメンバーは、ほぼ8割方レギュラーチームということになる。もちろん岡崎慎司も、そのなかに含まれている。

 岡崎慎司のプレーぶりは、立派だった。とにかく、組織プレーと個人勝負プレーの「メリハリ」が素晴らしい。もちろん、忠実でダイナミックなディフェンスについては、書くまでもないでしょ。

 その攻撃・・

 シンプルにボールを回す状況では、「ダイレクトパス&ムーブ」という、コンビネーションを誘発するような組織アクションを忠実に繰り返す。そして、前が空いた状況でボールを持って振り向いたら、まったく脇目など振らずにドリブル勝負をブチかましていく。

 立ち上がりの時間帯にも、そのドリブル勝負シーンが2度あった。その度に、観客も大いに沸いている。彼らも、岡崎慎司のコトを、知っているっちゅうことでしょ。

 とはいっても、我々にとっては常識になっている、岡崎慎司の「メリハリプレー」は、マインツのチームメイトたちに、どこまで浸透しているんだろうね・・

 そのポイントに特に注目してゲームを観察していました。そして思った。

 ・・そうね〜・・岡崎慎司のボールがないところでの動きの量と質とタイミングのイメージ共有については、まだちょっと時間が掛かるかもしれない・・

 とにかく、「めげない」岡崎慎司は、チャンスがあるごとに、本当に忠実に、決定的スペースへ飛び出していくんだよ。でも、その動きに反応して(事前にイメージして)パスを出そうとするチームメイトは、まだ少ない。フムフム・・

 もちろんチームメイトも、岡崎慎司の特長はしっかりとイメージできているだろうから(シュツットガルト時代も、そんな彼のプレーぶりこそが高く評価されていたわけだから・・)、これからは、どんどんと良くなっていくに違いない。

 前半のメンバーで、岡崎慎司と2列目トリオを組んだのは、7番のデンマーク人ジムリングと27番のニコライ・ミュラー。とても素晴らしい「個の才能」。でも彼らもまた、組織プレーと個人勝負プレーのメリハリが素晴らしい「良い」選手なんだ。

 また、前半ワントップに入ったダニ・シャヒーンも高い才能に恵まれたプレイヤーだね。

 ダブルボランチだけれど、前半は、8番のクリストフ・モリッツと5番のサラーがコンビを組んだ。まあ、悪くはなかったけれど、後半に守備的ハーフを務めた14番のオーストリア人ユリアン・バウムガルトリンガーも、捨てがたいプレーを魅せていたね。

 そして、忘れてはならないのが、長いあいだケガで戦列を離れていた10番のカメルーン代表エリック・モーティング(ドイツとの二重国籍・・でもカメルーン代表として既に19試合を戦っている)。とにかく、レベルを超えた才能に恵まれた、天才肌プレイヤーだね。

 でも、彼もまた、攻守にわたって、しっかりと組織プレーにも汗をかくんだよ。

 とにかく、このチームに関しては、岡崎慎司の能力を高く評価してマインツに引っ張ったこと、天才肌の選手が、攻守にわたってしっかりと汗かきにも精進していることも含め、監督のトーマス・トゥッヘルの「ストロング・ハンド」が象徴ということなんだろうね。

 岡崎慎司は、とても良い監督の下でプレーができる。だからこそ、これからの岡崎慎司の発展が、とても楽しみなんですよ。

 ということで、次の水曜日には、スイスのバーゼルまで足を伸ばし、マインツ05のトレーニングマッチを観戦するつもりです。

 では、また・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 





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