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2013_ドイツ便り(その5)・・日常に深く浸透している「マイチーム」という存在・・(2013年7月28日、日曜日)

「うぉ〜〜っ!!」

 そのとき、一緒にテレビを観ていた友人の二人が、まさに野生・・っちゅう雄叫びを爆発させた。

 その迫力に圧倒され、思わず身体が縮こまってしまったぜ。二人とも、普段は一流ビジネスマンという雰囲気を振りまいている冷静なヤツらだからサ。

 また、その雄叫びに反応した、ガーデンテラスで会話を楽しんでいた彼らの奥さん二人も、「何だ、何だ!?」って、テレビが置いてある居間に飛び込んでくる。

 「それで!? いまスコアはどうなっているの??」・・ってさ、そちらも、大迫力の勢いで質問をブチかましてくるんだ。

 そんなシーンを見ながら、やっぱりサッカーは・・というか、自分たちがサポートするチームへの強い「思い入れ」が、彼らの日常に、様々な意味合いを内包する「花」を添えているんだな〜・・って再認識していた筆者でした。

 これでヤツらも、来週からの仕事に張りが出るんでしょ。フムフム・・

 それは、日本でいう、ゼロックス・スーパーサッカー。ブンデスリーガ開幕を知らせる風物詩的なイヴェントなんだよね。

 そう、リーグ覇者とカップ覇者が対戦するブンデスリーガ・スーパーカップ。それも今年は、バイエルンと、彼らが国内二冠を達成したことで、リーグ2位だったドルトムントが対戦するという、昨シーズンUEFAチャンピオンズリーグ決勝と同じカードになったんだよ。

 この2チームは、ここ数年ブンデスリーガでも覇権を争っているから、周囲の注目度はうなぎ上り。観戦する側がヒートアップするのも当たり前だったんですよ。

 もちろん一緒に観戦していた二人のビジネスマンは、地元ドルトムントをサポートしている。また彼らは、バイエルンを極端に嫌っている。彼らのヒートアップの度合いが天井知らずになるのも道理だよね。

 そんな「社会現象」を体感しながら、ビッグクラブが果たしている様々な「機能性の価値とマイナス要素」についても、(どちらのチームにも加担していないことで!?)冷静に思いをめぐらせていた筆者だったのでした〜〜。

 あっと・・その「現象」の末端が、冒頭の「うぉ〜〜っ!!」だったこと、そしてドルトムントのゴールだったことは言うまでもないよね。

 ホント、楽しめたよ。テレビ観戦だったけれどネ・・

 私は、もう何度も書いたように、「日本人の観察」ということで、シャルケ対アル・サッド(カタール)の方を観にいくことにしたんだ。そう、シャルケの内田篤人。

 この2つのゲーム。たしかに時間的には、続けて2つをスタジアム観戦することは可能だったけれど(ゲルゼンキルヒェンとドルトムントだから隣町なんですよ)、どうも、そこまでエネルギーがつづかなかった。

 あっと・・ブンデスリーガ・スーパーカップの開催地。背景はよく分からないけれど、そのゲームは、ドルトムントのホームスタジアムで開催されました。

 だから、ドルトムントで行われたスーパーカップ同様にスタジアムが満杯にふくれ上がったシャルケの試合を観戦した後、友人宅へとって返し、ドルトムント 対バイエルン戦をテレビ観戦したっちゅう次第。そこで、彼らの生活文化の一部とも言えそうな「雄叫び」と遭遇したのでした。

 両ゲームの経過については、他のサイトを参照して下さいネ。ちなみに、シャルケは、アル・サッドを「9-0」で粉砕し、スーパーカップは、ドルトムントが「4-2」で制した。

 ということで、この2つの試合から抽出するテーマは、生活に深く浸透しているサッカー・・ということになりますかね。掲載した写真は、すべてシャルケで撮影したものです。

 ちなみにシャルケ04だけれど、サポーターの「当事者意識・参加意識」の高さも特筆モノです。様々な調査機関のデータが示しているように、サポーターの忠誠心の強さは世界のトップレベルなんですよ。

 これまでシャルケ04が獲得したタイトルは、本当に目立たない。もちろん1930年代はドイツを代表するクラブだったけれどね。でも60年代に入ってからは、一度もリーグを制したことがない。いくつかのカップ戦では優勝したけれど・・

 でも、サポーターの当事者意識・参加意識は、群を抜いている。タイトルに見放されているにもかかわらず、クラブに対する忠誠心は天井知らずなんですよ。

 このフレンドリーマッチは、リーグ開幕を知らせる恒例イヴェントなんだけれど、たぶん今回は、スーパーカップに=ドルトムント=に対抗して開催されたという意味合いもあるんだろうね。

 もう1つ。ここ数年のシャルケ躍進に大きく貢献したラウール・ゴンサレスに対する「感謝マッチ」という意味合いもある。彼は、以前レアル・マドリーとスペイン代表のエースとして活躍したことは言うまでもありませんよね。

 いまラウールは、カタールのアル・サッドでキャリアの最後を送っているのですが、そのことで「風物詩マッチ」の対戦相手が、アル・サッドになったということです。

 そのラウールは、前半はアル・サッドでプレーし、後半はシャルケでプレーした。

 前半からシャルケが圧倒するゲームの中でフラストレーションが溜まっていたに違いないラウールは、後半に入ると、持ち前の「ボールがないところでの動きの量と質」で圧倒的な存在感を発揮し、2ゴールを叩き込んだっけね。

 また、後半だけ出場した内田篤人だけれど(全とっかえになった後半のチームが多分ファーストチョイス!?)、なかなか堅実なプレーを展開した。1度な ど、相手のミスパスをインターセプトしたシーンで、ボールを止めずに、ワントップのフンテラールに、鋭く正確なダイレクト(グラウンダー)パスを、ビシッ と決めたっけ。

 でも、攻撃については、前半出場した右サイドハーフのファルファンとの「イメージ・シンクロ」の方がいいね。というか、後半に右サイドハーフに入った「ミシェル・バストス」とは、まだまだコンビシーションイメージが合っていない。

 いくら内田篤人がオーバーラップしても、パスが出てこない。バストスは、ボールをこねくり回して横パスを出したりする。まあ、右サイドの「タテのコン ビ」が誰になるのか、まだ決まってはいないけれど、期待されて今シーズンから移籍してきたミシェル・バストスだから、内田篤人には、少し「耐える期間」が 出てくるかもしれない。

 この試合でのアル・サッドは、まったくといっていいほど「やる気」をみせなかった。それは、攻守にわたる「ボールがないところでの動きの量と質」に如実 に現れてくる。何度彼らのディフェンスが、マークを「やり続けなかった」ことで、素早いパスコンビネーションで、ウラの決定的スペースを攻略されてしまっ たことか。

 そんなアル・サッドが相手だったから、シャルケの「フォーム」を見極めることは出来なかった。まあ優秀な監督イェンス・ケラーのことだから、しっかりとチームを上昇基調に乗せるでしょ。

 さて、これから、ドイツ(プロ)サッカーコーチ連盟(BDFL)が主催するサッカーコーチ国際会議に出席するため、ブレーメンへ出発します。

 機会があれば、そちらもレボーとしますよ。ではまた・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 





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