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- 2013_親善マッチ・・後半のポジティブな「激変」の主役・・そして、これからのアジア予選へ向かううえで大事なシュートバリエーションについても・・(日本vsラトビア、3-0)・・(2013年2月6日、水曜日)
- このゲームでのメインテーマは、何といっても、前半と後半の「サッカー内容の激変」でしょ。
ザックも、そのことについて、こんなニュアンスの内容をコメントしていたよね。曰く・・
・・良いサッカーだった後半のように上手くスペースを攻略していかないと、これから(守りを固めるアジア勢との勝負マッチにおいて!?)問題が大きくなる・・
もろちん、「良いサッカー・・」とは、うまくスペースを攻略できる(だから良いカタチでシュートまでいける!)サッカーのことだよ。まあ、ザックは、サッカー内容は、前半の最後の時間帯あたりから好転していった・・とは言っていたけれど・・ネ。
とにかく、誰が観ても、前半と比べて、後半のサッカーの方が段違いにレベルアップしたということに異論をはさむ方はいないでしょ。
要は、攻撃の唯一の目的である「シュート」を打つために、いかにスペースを攻略していくのかというテーマのことです。
いつも、書いているように、「決定的なスペースの攻略・・」とは、最終勝負を仕掛けていくゾーンにおいて、ある程度フリーでボールをもつ味方プレイヤーを「作り出す」ということを意味するわけです。
そのために、ドリブルで相手をブッちぎってもいいし、決定的スペースへ入り込んだ味方へのスルーパスを決めたっていい。
あっ・・そうそう・・
この日の2点目と3点目が、その良い例じゃありませんか。
2点目は、香川真司が、ドリブルで相手に突っ掛けていったことで、相手守備ブロックの視線と意識をフリーズさせ、そして最後の瞬間に、横で「止まってラストパスを待っていた」本田圭佑へ、ピタリのラスト横パスを決めちゃう。もちろん本田圭佑のダイレクトシュートも見事。
3点目は、遠藤ヤットと前田遼一、そして香川真司が絡むダイレクトコンビネーションが、最後の瞬間に、事前にウラのスペースへ抜け出す「爆発フリーランニング」をスタートした岡崎慎司にピタリと合った。
そこじゃ、岡崎慎司の真骨頂である「決定的スペースの飛び出し」と、香川真司のダイレクトパスのイメージが、ピタリとシンクロした。先日のプレミアで、ルーニーにアシストしたようにネ。
両ゴールともに、決定的スペースを完璧にブチ破ったコンビネーションだった。本田圭佑の場合は、静(待ち)。岡崎慎司の場合は、動(ラストパスを呼び込む動き)。ホントに素晴らしい。
あっと・・この2つのゴールについては、ザッケローニにも質問したから、最後に取り扱います。
まず、冒頭で書いた、前半と後半の「サッカー内容の激変」というテーマから入らなければならなかった。スミマセン・・あっち、こっちに、テーマが飛んでしまって。
ということで「激変」。その立役者は、何といっても、遠藤保仁でした。
このことについても、異論をはさむ方はいないに違いありません。彼の、見事な、本当に見事な「後方からのゲームメイク」によって、日本代表の、人とボールの動きが、格段にレベルアップしたんだからね。量だけじゃなく、質もふくめて・・ネ。
その変化の演出は、見事の一言だった。そこで、ハタと考えた。そして、遠藤保仁のプレー(一挙手一投足)に、今さらながらに目を凝らしたんですよ。
もちろん彼は、守備からゲームに入っていく。そこで展開する汗かきのハードワークもまた、彼に対するチームメートの信頼のバックボーンなんだよね。
そして、攻撃では、とにかく、冷静沈着なプレーぶりが目立ちに目立つわけです。
スッ、スッと、忠実にスペースへ入り込み(効果的なパスレシーブの動き)ながら、味方ボールホルダー(次のパスレシーバー)のサポートに入る。
そして、パスを受ければ、見事な、本当にリラックスしたトラップで一発コントロール(もちろんボールなど見ない!)。そして、チカラの抜けた自然体でボールをキープしながら、グラウンド全体を完璧にイメージのなかに入れちゃう(俯瞰イメージ!)んだよ。
そして、ダイレクトでパスを回さない場合は、右へ、左へとリラックスしたドリブルでボールを運びながら、チカラの抜けたスムーズなキックで、相手ディフェンダーの虚を突くように、唐突な「タテパス」を出して、状況をガラリと変えてしまったりするんだ。
いや、ホント、ほれぼれする。
もちろん、例えばコンビネーション状況では、自身がそのコアとして機能するだけじゃなく、コンビネーションの「駒の一つ」としても忠実な動きを魅せつづけるんだ。
そしてボールを失った次の瞬間には、まさに電光石火の勢いでディフェンスへ急行しちゃう(もちろんチェイス&チェックからアクションに入っていくんだよ!!)。
とにかく、遠藤ヤットがグラウンドに登場してからというもの、人とボールの動きが、まさに格段にアップしたんだよ。スミマセン、繰り返しで・・。
でもサ、この「チーム全体の動きのレベルアップ」というグラウンド上の現象こそが、遠藤ヤットがイメージしていることだから、やっぱり繰り返して指摘しなきゃフェアじゃない。
ザッケローニは、清武弘嗣と細貝萌に対して、とても気を遣っていたから、前半の最後の頃から、サッカーの流れが好転していった・・清武弘嗣も細貝萌も、良いプレーをしていた・・とコメントしていたけれど、でも本当は・・
もちろん、チーム全体の「動き」がレベルアップしたことについては、遠藤保仁だけじゃなく、岡崎慎司が右サイドへ回り、その代わりに、前田遼一がワン
トップに入ったことも大きかったとは思うよ。でも、やっぱり、後半の(スペース攻略という視点でのサッカー内容のポジティブな激変の!)主役は、遠藤保仁
だったと思うわけです。
でも、前言からすれば、ちょっと微妙なニュアンスだけれど、わたしも、清武弘嗣と細貝萌を擁護したいと思うわけです。
要は、この2人ともに「チームプレイヤー」であり、チーム全体のスムーズな機能性が足りない状況では、良いプレーはでき難い・・ということです。
逆に、もし彼らが、後半もグラウンドに残っていたら、前半とは、まったく別人のダイナミックなプレーを披露したことは確実だね。だから、このゲームについては、ちょっと不運だった・・というニュアンスの表現がフェアだと思うわけです。
あっと・・、ここからまた「遠藤保仁」に話題をもどすけれど、彼が入ったことで、本田圭佑のプレーが「よりシンプル」になった・・っちゅう事実も見逃せない。
要は、本田圭佑のボールを離す「リズム」が、よりシンプルに、そして高みで安定してきた・・っちゅうことです。
それは、とても、とても大事なことなんだよ。何せ、日本代表が標榜しているのは、組織サッカーという絶対的なベースに、個の才能プレーをミックスしていく・・っちゅう発想(のはず)だからね。
要は、前半は、本田圭佑のところで、ちょっとボールの動きが停滞気味になってしまうシーン「も」あった・・っちゅうことです。
誤解を避けるために、確認します。
本田圭佑のプレーは、格段に良くなっているんですよ。力強く、個の勝負でも日本のトップの一人だよね。言うまでもないけれど・・
特筆なのは、守備への「実質的な参加」の効果レベルが格段にアップしている(汗かきハードプレーの量と質がアップしている!)だけじゃなく、攻撃でも、
パスを受ける動き(攻撃でのハードワークの内容)とか、ボールをトラップしてからも、パスやドリブルといった次のプレーへ移行するタイミングも安定してき
ていること。
だからこそ、彼の勝負プレーの「危険度」も、大幅にアップしていくっちゅうわけだ。もちろん、周りの味方とのコンビネーションという意味合いでもネ。
でも、この試合の前半では、ちょっと「ボールのこねくり回し」も、比較的目立っていたと感じたんだよ。それが、遠藤保仁が入ってからの後半は、見違えた。
本田圭佑は、遠藤保仁を、とてもレスペクトしているんだろうね。そりゃ、遠藤保仁のプレー内容をみりゃ、当然だとは思うけれど、その背景には、互いのレスペクトを基盤とした相互信頼があるんだろうね。
遠藤保仁「も」、積極的に本田圭佑を「探して」パスを付けるんだよ。だからこそ、ボールをもった本田圭佑も、よりシンプルなタイミングで、スッと後方のサポートポジションに入った遠藤保仁にバックパスを回したりするんだ。
この2人の関係を、しっかりと観察したら、とても興味深い「現象」を、多く発見できるに違いないと思いますよ。観ているこちらも、良い気もちにさせられる。
互いに、相手のためになるプレーをしているからこそ、互いにレスペクトし合える。そして相互信頼が限りなくアップしていく・・っちゅうわけだ。
ちょっと疲れ気味だから、最後に、シュートの「タイプ」について簡単にまとめて終わりにしまっせ。
ということで、ザッケローニに、こんな質問を投げた。
・・2点目も3点目も、素晴らしいコンビネーションからの中央突破だった・・ただ、それ以外にも、本田圭佑や乾貴士がブチかました中距離シュートもあっ
たし、長友佑都のクロスを、岡崎慎司がヘディングで叩くといった、クロス&一発ドカンッといったチャンスもあった・・これから闘うアジア勢は、守りを固め
てくるに違いない・・そこでは、シュートのバリエーションが、とても大事になってくると思うが??・・
それに対してザッケローニは、こんなニュアンスの内容をコメントしてくれたっけネ。曰く・・
・・コンビネーションからのシュート・・クロスからの一発・・中距離シュート・・たしかに様々なバリエーションがある・・でも(日本代表の選手たちは)
ときとして、そのことを忘れてしまうことがある・・彼らは、いろいろな武器を持っているのに・・まあ、きれいにやりたがる悪い癖とでも言おうか・・ときと
して、セーフティープレーが多くなり過ぎることもあるんだよ・・そうではなく、もっと積極的にタテへ仕掛けていかなければならないシーンもあるんだ・・そ
う、乾のミドルシュートとかね・・とにかく彼らは、もっと積極的に、様々なシュートにチャレンジしていかなければならないんだ・・
フムフム・・
ということで、もう限界だから、今日のところは、ここまででご容赦アレ・・
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ところで、前回のコラムでも書いたけれど、いま、ソフト・バンクの「スマホ向け動画配信サイト」で連載を始めているんですよ。
ソフト・バンクの、「スポーツ LIFE」というサイト。そのなかの「海外サッカー」での連載のはずです。まあ、一度のぞいてみてください。
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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