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2013_ナビスコ・・とても内容のある勝負マッチでした・・(FC東京vsアルビレックス、 2-1)・・(2013年5月15日、水曜日)

「FC東京が仕掛けてくる最終勝負のカタチで、特に注意していたヤツがあったんですよ・・でも、注意していたにもかかわらず、それでやられちゃった・・そのことは、とても悔しかった・・」

 アルビレックスの柳下正明監督が、ホントに悔しそうに、そんなことを言っていた。フムフム・・

 ところでアルビレックス。柳下正明さんは、とても良い仕事をしていると思うよ。昨シーズンから、攻守にわたって、とても粘り強い「チーム連動プレー」を魅せている。

 相手にゲームの流れを牛耳られても、攻め込まれても、決してめげることなく、まさに、質実剛健と呼ぶに相応しい(強い意志を絶対的ベースにした!!)立派なサッカーを展開していると思うのですよ。

 この試合でも、全体的にはFC東京にイニシアチブを握られていながら、決して後ろ向きの心理になることなく、あくまでも我慢強いサッカー(柳下正明さんの表現)を魅せつづけた。

 そして、そんな我慢強いプレー姿勢が、見事な同点ゴールとなって実をむすぶんだよ。

 ここでは、首尾一貫した「意志のサッカー」という視点では、アルビレックスも決して劣っていなかったということが言いたかった。

 まあ、とはいっても、実際に作りだされたチャンスの量と質という視点では、FC東京に一日以上の長があったことも確かな事実だったよね。

 そしてFC東京が、柳下正明さんがケアーしていた、まさに「そのカタチ」でゴールを叩き込んじゃうんだよ。先制ゴールにしても、決勝ゴールにしても。

 先制ゴールは、左サイドの決定的スペースへ、ダイナミック&クレバーに入り込んだ東慶悟からのグラウンダークロスを、石川直宏が、目の覚めるようなダイレクトシュートを、新潟ゴール左隅へ叩き込んだ。

 また決勝ゴールは、徳永悠平の、これまた見事な(今度は右サイドの決定的スペースへの!)抜け出しから送り込まれたグラウンダークロスを、交替したばかりの三田啓貴が、左足インサイドで、うまく流し込んだ。

 それだけじゃなく、先制ゴールが入る数分前には、右サイドを切り裂くようにオーバーラップした徳永悠平が、ゴールライン寸前までボールを持ち込んでから、決定的なグラウンダークロスを返したんだ。

 そのグラウンダーのラストクロスをダイレクトで叩いたのは、まったくフリーだった東慶悟。その決定的シュートは、不運にもGKに弾かれてしまった(!?)けれど、それもまた、アルビレックスの粘りの守備ブロックを完璧に崩した決定的チャンスだった。

 そう、アルビレックスの柳下正明さんは、サイドを崩され、そこからの「戻り気味」のグラウンダークロス(ラストパス)をダイレクトで叩かれる・・というピンチを警戒していたんだよ。

 でも、まさに「そのカタチ」で、FC東京にやられちゃった。そりゃ、悔しいでしょ。

 でも、優秀な柳下正明さんのことだから、脅威と機会は表裏一体・・という普遍的コンセプトを、効果的に踏襲するはず。

 そのピンチのカタチを、ビデオなどの映像素材を使って、選手たちに繰り返し再確認させることで、効果的なイメージトレーニングにしちゃうに違いないということです。

 最後にFC東京の「チャンスメイクのカタチ」だけれど・・

 それは、サイドゾーンを崩してボールをゴールライン際まで持ち込み、そこからグラウンダークロスを送り込んでダイレクトで叩く・・っていうタイプばかりじゃない。

 それ以外にも彼らは・・

 ・・徳永悠平や石川直宏に代表される『勝負ドリブル&ミドルシュート』・・っちゅうカタチがある・・

 ・・また、3人目、4人目のオーバーラップからの決定的な追い越しフリーランニング&コンビネーションもある・・後半では高橋秀人のオーバーラップからのシュートが、とても美しく目立っていた・・

 ・・そして、そんな「攻撃の変化」があるからこそ、個のドリブル勝負や、オーソドックスなコンビネーションも「より」効果的に繰り出すことができる・・っちゅうわけさ。

 最後に、ランコ・ポポヴィッチに、こんな質問を投げた・・

 ・・わたしは、素晴らしい才能に恵まれた河野広貴と田邉草民に、ものすごく期待しているのですが、どうも見ているところ、彼らは、まったく伸びていないと思う・・彼らのような、若い才能を伸ばすためには、何が必要だと思うか?・・

 そんな、わたしの質問を、例によって、優秀なファシリテイター(コミュニケーター)塚田貴志さんが、軽快に翻訳してくれるんですよ。

 そのとき、ハッと思った。「まったく伸びていない・・」という表現は、ちょっと刺激的に過ぎるよな〜・・。だから、「スミマセン、塚田さん・・(期待したほど)あまり伸びていない・・っちゅう表現に変えてくれませんか〜!?」なんてね。

 ということで、ランコ・ポポヴィッチが、その質問に応えて、こんなニュアンスの内容をコメントしてくれた。曰く・・

 ・・サッカーのプレーには目的がある・・何のためにパスを出すのか?・・何のためにドリブルするのか?・・何のために走るのか?・・そう、選手たちは、 常に考えつづけ、強い意志をもってプレーしなければいけないんだよ・・また、ボールを愛し「過ぎる」ようなボールプレイヤーは、(モダンサッカーで は!!)もう誰も評価しない・・オレは、毎日、毎日、そのことを伝えようとしているんだよ・・とにかくしつこく・・ネ・・オレは、決してあきらめない・・

 いいでしょ、ランコ・ポポヴィッチ。

 ちなみに、ボールプレイヤーとは、サッカーの効果的な流れに逆行するような無為なボールキープ(ボールのこねくり回し)が好きな選手なんていう感じですかネ。まあ、組織プレーの流れを停滞させてしまうような無為なボール保持・・なんていう言い方も出来るかな・・

 ランコ・ポポヴィッチ。彼もまた、20周年を迎えた「J」と日本サッカーに、とても大事な価値をもたらしてくれる優れたプロコーチだよね。

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 





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