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2013_天皇杯決勝・・マリノスの完勝でした・・(マリノスvsサンフレッチェ、2-0)・・(2014年1月1日、水曜日)

私にとってのMVPは、怪我で途中交代せざるを得なかった、マリノスの小林祐三。

先制ゴールの場面だけじゃなく、マリノスの攻撃が「詰まったら」、必ずといっていいほど、小林祐三が、ドリブル勝負をブチかますことで仕掛けに「変化」をつけていた。

もちろん、中村俊輔が魅せつづけた素晴らしいリーダーぶり、ゲームメイカーぶりについては、今さら語るまでもないよね。

前半39分。

ハーフウェイライン近辺でボールを持った中村俊輔から、オーバーラップした中町公祐へ、そしてそこから、決定的スペースへ走り抜けた兵藤慎剛へ、ピタリと収まるスルーパスが出たシーン。

最後は、兵藤慎剛のシュートが、わずかに右へ外れてしまったけれど、最初に中村俊輔がボールを持った次の瞬間には、小林祐三と兵藤慎剛が、最前線へ向けて全力フリーランニングをスタートしていたんだよ。

私は、文化放送で解説していたんだけれど、そのコンビネーションを観ながら、「来る・・来る!」って叫んでいたっけ。

何たって、俊輔がボールを持った瞬間から(コントロールする前段階から!)この二人が全力スプリントをスタートしていたんだからね。

それは、中村俊輔に対する、深〜い信頼を象徴するシーンだった。

この試合、マリノスは、明確なゴールゲッターを欠いていた。

マルキーニョスが去っただけじゃなく、そのポジションを(まあまあの内容で!?)埋めていた藤田祥史も、準決勝の愚かなイエローで、決勝では出場停止になってしまったわけだからね。

私は、その準決勝のレポートで、端戸仁を入れ、攻守にわたるハードワークに長けた前線の四人が縦横無尽にポジションをチェンジしつづける、「ゼロトップ気味」にやるのがいい・・と書いた。

樋口靖洋監督も、同じようなイメージを持っていたようで、実際、グラウンド上では、そんな縦横無尽のポジションチェンジが、マリノス攻撃を活性化していたっけ。

そして、そのカルテットに、両サイドのドゥトラと「スーパーサイドバック」小林祐三、はたまた、ボランチの中町公祐といったところも、タイミングよく絡んでいく。

そりゃ、マリノス攻撃の効果レベルが高揚するのも道理だよ。

でも・・

そう、そんなふうに積極的に攻めつづけた後の「守備」。何といっても、相手は、「ザ・ヒロシマ」を使いこなすサンフレッチェだからね。

そして案の定、何度か、森崎和幸や青山敏弘といった、後方のゲームメイカーから、必殺のタテパスが送り込まれるシーンがあった。

もちろん、佐藤寿人や石原直樹は、その前段階で、マークするマリノス守備の「視線を盗んで」フリーランニングをスタートしている。目指すのは、言うまでもなく、マリノス最終ラインの後方に広がる決定的スペースだ。

でも・・

そう、マリノスは、そんな「ザ・ヒロシマ」を、ことごとく封じ込めたんだよ。

そこで、中澤佑二が魅せつづけた、必死の、そしてクレバーなディフェンスは、特筆に値する。

とにかく彼は、サンフレッチェがブチかます「ザ・ヒロシマ」カウンターを、ことごとく潰しつづけたんだよ。

もちろん「それ」には、一発ロングパスの「出所」を、マリノス中盤が、忠実に邪魔しつづけた・・というバックボーンもあった。

そんな共同作業が、殊の外うまく機能したってわけだ。

私は、そんな、一瞬のポジショニングの調整などに視線をはしらせながら、マリノス守備の「動き出しの妙」にも舌鼓を打っていたっけ。

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ところでハーフタイム。そこで、樋口靖洋監督が、「受け身の姿勢で守備に入ってはダメだ・・」と、チームに檄を飛ばしたとか。

大正解だよね。

二点リードしてからのマリノスは、何度か、サンフレッチェに押し込まれてピンチに陥ったわけだけれど、それは、たしかに、受け身の姿勢でプレーしたからに他ならなかった。

相手からボールを奪い返すプロセスの目標イメージは、基本的には「受け身にならざるを得ない」ディフェンスを、限りなくアクティブで能動的なモノへと進化させることなんだよ。

要は、下がるだけじゃなく、積極的に、相手ボールホルダーへチェイス&チェックを仕掛けていく忠実ハードワークを絶対的ベースに、次、その次と、周りの味方が、ディフェンスの包囲網を狭めていかなければならないんだ。

そう、コレクティブな守備の実効レベルを高揚させる効果的な共同作業。

それを上手く機能させることで、基本的には受け身にならざるを得ないディフェンスを、限りなく、攻撃的、能動的なモノへと進化させられるってわけさ。

ということで、後半のマリノスは、攻守にわたるハードワークが高質にバランスした素晴らしいサッカーでサンフレッチェを凌駕した・・と思う。

だから私は、マリノスの完勝・・と評価することに躊躇しない。

それにしても中村俊輔。まだまだ出来る。来年も、オレ達を楽しませてください・・ネ。

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 最後に「告知」です。

 実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。

 でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。

 そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。

 だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。

 でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。

 ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。

 一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

 そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

 とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

 ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

 もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

 まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 





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