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2015_日本代表・・いくつかの興味深いテーマをピックアップしましたよ・・(日本vsカンボジア、3-0)・・(2015年9月3日、木曜日)

・・あまりにも早いタイミングで、タテのスペースへ「入り込みすぎて」しまったから、逆に次の最終勝負のパスコンビネーションが「詰まってしまう」ケースも多かった・・

・・それに対してクロス攻撃は、かなりの数は仕掛けていけた・・

・・ただ、それが、チャンスにつながるような実効を発揮できたシーンは、(その総数からすれば!)多くはなかった・・それは、ラストクロスの受け手の動き(ポジショニング)に課題があるからだ・・

ハリルホジッチ監督が、最終勝負(コンビネーション)プロセスやクロス攻撃について、そんなコメントを残していた。

まさに、その通り。

要は、決定的なクロスボールを送り込めるところ「まで」は演出できるけれど、そこから決定的チャンスを作り出すことがままならなかった・・という意味でっせ。

たしかに、酒井宏樹からの「戻り気味グラウンダークロス」を長谷部誠がブッ叩いたシーンとか、先制ゴール直後に、香川真司がダイレクトで合わせたシーン、はたまた岡崎慎司や武藤嘉紀がヘッドで合わせたシーンなど、惜しい場面は、いくつかあった。

でも、前述したように、クロス攻撃からの仕掛けプロセスの「頻度」からすれば、もっと、もっと多くの決定的チャンスを作り出さなきゃいけいなかったと思うワケなのですよ。

もちろん、そんな「非効率なサイド攻撃」という現象については、カンボジア守備が、素晴らしい連動性を魅せつづけたから・・というポイントも無視できない。

とにかく彼らは、よくトレーニングされていた。

彼らは、次、その次の「決定的パスを止める」というイメージで守備に就いていたんだよ。

もちろん、本田圭佑とか酒井宏樹といった右サイドの仕掛け人たちがボールをもったら、「そこ」は、集中してしっかりと抑える。

でも、その周りでは、ニアポストスペースに走り込んだり、ファーポストスペースへ抜け出したりする日本人選手を、まさにガチガチにマークしつづけるんだ。

要は、彼らは、日本が得意とする(ボールがないところで勝負を決めてしまう!!)コンビネーションを、明確にイメージして守備に就いていたっちゅうわけだ。

カンボジアの韓国人プロコーチ、イ・デフン監督に、拍手です。

そう、「人数をかけたディフェンス」の効用を、限界まで活用し切っていたカンボジアなんだよ。

普通だったら、守備ブロックに人数が多い場合、互いに譲り合ったり、集中力を切らしてしまうなど、連動コンビネーションに問題が生じるモノだよね。

でも、このカンボジア代表は、シンがボールと同様に、その人数の多さを、究極の「実効性」で、効果的に活用し切っちゃう・・っちゅうわけだ。いいね・・

ということで最初にピックアップしたテーマは、ハリル・ジャパンの、サイドからの仕掛けということでした。

とにかく、ニアポストやファーポストという決定的スペースを、いかに効果的に活用するのか・・というテーマは、とても深く、興味深い。

だからこそ、ハリルホジッチが言うように、トレーニングにおいて、サイド攻撃での仕掛けイメージを、ハイレベルにシンクロさせなければいけないというわけだ。

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ということで、二つ目のテーマ。

それは、シンガポールやカンボジアのように、人数をかけて守備を固めるだけじゃなく、そこでの人数の多さを、とても効果的に、そして連動して活用し切れるだけの「インテリジェンス」をも備えているチームと対峙したときの「戦術的な手段」ということになる。

皆さんも観られたとおり、先制ゴールと追加ゴールは、ミドルシュートだった。

もちろんハリルも、よく分かっているから、選手たちに対して、積極的にミドルをブチかますように指示していたという。

そんな「ミドルシュート」に積極的にチャレンジしたのは、本田圭佑、長谷部誠や吉田麻也だけじゃなく、山口螢もその一人だった。

彼のディフェンス内容が、まさに「スーパーレベル」にあったことは、誰の目にも明らかだったでしょ。そんなハードワークがあったからこそ、ハリルが言っていたように、素早く、そして効率的にカンボジアからボールを奪い返せた。

そんな、あり余るエネルギーを爆発させつづける山口螢だけれど、彼は、守備だけではなく、攻撃でも、とても効果的なプレーを展開するんだよ。

組み立てプロセスでの「つなぎ」だけじゃなく、どんどんと、実効レベルの高い(勝負の!?)タテパスも供給しちゃうんだ。その内容は、長谷部誠に優るとも劣らなかった。でも・・

そう、彼がブチかました(2本か3本あったかな・・)ミドルシュート「だけ」は、お粗末・・という印象を拭えなかったんだよ。

何せ、フリーであるにもかかわらず、そのすべてを、大きく「ふかして」しまったんだからね。

でも、多分ハリルは、山口螢のトライを賞賛すると思うね。たぶん、こんな風に・・

・・ホタル・・素晴らしいチャレンジだった・・でも、自分でも分かっている通り、結果は、好ましいモノじゃなかったよな・・

・・でも、だからこそ素晴らしい学習機会だったという見方もできる・・その失敗の体感こそが、次につながるんだよ・・そう、脅威と機会は表裏一体なんだ・・さて、それじゃ、練習しよう・・

・・なんてネ。へへっ・・

あっと、相手の「強化守備ブロック」に対抗していく手段というテーマだった。

それには、サイドからの崩し(効果的なイメージシンクロクロス!)、素早いコンビネーションなど、いろいろあるけれど、そんな「ロジカルな戦術手段」だけ ではなく、たまには、サイドから、敗目のタイミングでアバウトな「放り込み」を送り込んだり、ミドルシュートをブチかましたり・・なんていうやり方も、と ても効果的だよね。

それによって、相手守備ブロックの「イメージ」が乱され、彼らの組織バランスが崩れるかもしれないっちゅうわけだ。

まあ、でも、強烈な守備意識と闘う意志に支えられたカンボジアの場合は、「アバウトな放り込み」は、ほとんど効果なしだったけれどサ。

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ということで最後のテーマ。

それは、攻撃の「変化」の演出。

ここでは、ハリルホジッチ監督がブチかました「采配」っちゅう見方をしましょう。

そう、言わずもがなだけれど、途中から投入した「ホンモノのドリブラー」、宇佐美貴史と原口元気のことだよ。

いつも書いているように、本田圭佑と香川真司は、「ホンモノのドリブラー」じゃないからね。この「ホンモノのドリブラー」というテーマについては、これまでの私のコラムに散りばめて書いたから、そちらもご参照アレ。

まあ、興梠慎三については、ポスト役や潰れ役、そして「粘りのフィニッシャー」という役どころは、岡崎慎司に通じるからね。

でも、前述の二人は、チト違う。

皆さんもご覧になった通り、この二人の「ドリブル突貫小僧」がグラウンドに登場してから、日本代表の「最終勝負の仕掛けコンテンツ」に、かなり異なった「雰囲気」がミックスされるようになったんだよ。

特に宇佐美貴史。

彼は、ドリブルで、カンボジア守備ブロックの「バランス」を崩すだけじゃなく、そこから、爆発的なコンビネーションをスターさせられるし、目の覚めるような危険なラストパスも供給できる。

私は、彼のドリブル突破能力だけじゃなく、そのパス能力やコンビネーションスターターとしての能力についても大いに注目しているんですよ。

彼については、こんな「メモ」が残っている・・

・・宇佐美貴史・・希代の才能だ・・

・・二度、三度と、「それまでなかったタイプとリズム」のラストパスを通してしまう・・アウトサイドやヒール、はたまたドリブルからの股抜きスルーパス等など・・

・・また、単独のドリブルシュートだけじゃなく、コンビネーションから抜け出したドリブルシュートも強烈で、素晴らしく危険・・

・・そんな、宇佐美貴史が演出する「最終勝負の変化」も、攻撃にとって、根源的に重要なファクターだ・・

まあ・・、今日は、こんなところですかね。

ということで、次のアフガニスタン戦も、様々な視点で注視しましょう。

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 最後に「告知」です。

 実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。

 でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。

 そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。

 だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。

 でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。

 ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。

 一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

 そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

 とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

 ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

 もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

 まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 





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