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2018_WM雑感の5・・西野ジャパン(西野朗)に対する敬意と感謝・・そして、カウンターピンチへの正しい対処というテーマへ・・(2018年7月3日、火曜日)

素晴らしい内容のサッカーで、世界を、「へ〜〜っ!!」と言わせてくれた西野ジャパン。

ところで・・

この、「素晴らしい」という形容詞のコノテーション(言外に含蓄される意味)は!?

それは、もちろん、極限の闘う意志ベースの全力スプリントを大前提にした、攻守ハードワークとリスクチャレンジの凝縮した攻撃的サッカーというニュアンスに他ならない。

受けて立つのではなく、常に、自らが積極的に仕掛けていくサッカー。

たしかに西野ジャパンは終戦を迎えたが、そこで西野朗が明確に指し示してくれた、日本サッカーが進むべき正しいベクトルには、殊の外、深く、広い「価値」があったと思うのである。

そして・・

そんな、積極的に仕掛けていくチャレンジサッカーだからこそ・・

より高い確率で「果実」をもたらすために重要となってくる、とても微妙な、物理的、心理的ファクターにも焦点を当てなければならないとも思った。

ということで・・

ここでは、カウンターピンチの「危険度」を、できる限り抑制するために大事になってくる戦術&心理ファクターに触れたいと思ったわけだ。

ピックアップした、カウンターピンチシーンは、二つ・・

一つは、(たぶん)西野朗に「他力本願」を決断させた、とても切実な背景要因だったはずの、ポーランド戦、後半28分にブチかまされた決定的カウンターシーン。

そしてもう一つが、言うまでもなく、西野ジャパンを「終戦」に追いやった、昨日のベルギー戦、後半ロスタイムの決勝ゴールシーンだ。

積極的にリスクチャレンジをブチかます(西野朗の意志としての!?)攻撃サッカー。

だからこそ、そんなカウンターピンチに対する「冷静なリスクヘッジ」への前向きな戦術的姿勢も必要だ・・というディスカッションに「も」トライしようと思ったわけさ。

リスクヘッジとは、もともと金融界で使われていた「危険回避」という意味合いの用語。

要は、リスクへチャレンジしていく積極的な姿勢をバックアップするという意味でも、チームメイトが後ろ髪を引かれることのない「心理環境」を整備しよう・・という意図だ。

そう、その危険性をできるかぎり抑えることで、リスクチャレンジへのモティベーションを高みで安定させようという意味合いだ。

でも、この「心理環境の整備」が、ものすごく難しい。

もし監督が、少しでも、リスクマネージメントを強調し過ぎたら、直ぐにでもチームには、「必要以上」の、安全・安心を志向するマインドが「はびこって」しまうモノなのだよ。

そして誰もリスクへチャレンジしていかない「停滞サッカー」という、心理的な悪魔のサイクルに、とっ捕まってしまう。

そう、攻守ハードワーク&リスクチャレンジという攻撃的な姿勢を、高みで安定させる作業は、とても難しいのだ。

そして、だからこそ私は、ストロングハンド西野朗の、優れた心理マネージメントのウデを、深い敬意をもって観察しているのさ。

さて・・

相手カウンターに翻弄された西野ジャパン。

最初のポーランド戦でも、昨日のベルギー戦でも、共通した「ピンチの端緒」があった。

それは、人数とポジショニングバランスが「前」へ偏っていたこと、そして攻守の切り替えが、一瞬、遅れたことだ。

また、もっと言えば、カウンターを抑えに入った状況で、相手ボールホルダーを気にし過ぎていたことも「端緒」として挙げられるだろう。

私は、「勝負は、ボールがないところで決まる・・」っちゅうコンセプトを提議したことがある。そのタイトルで本も上梓した。

そう、たしかに相手ボールホルダーを自由にさせちゃいけないけれど、それと同時に「抑制」しなければいけないのが、ボールから離れたところで、決定的スペースへ全力スプリントで抜け出していく相手を、効果的に「捕まえる」ことなんだよ。

この二つのカウンターシーンでは、そんな、キモになるカウンターの流れを抑制する効果的イメージが(そして強い意志が!?)、十分ではなかった・・と思う。

だから、ポーランド戦では、長友佑都が上がったことで空いていた(ポーランドの)右サイドを、フリーでオーバーラッパーしていたグロシツキーにうまく使われ、最後はレバンドフスキーの、倒れ込みフリーシュートまでつながれてしまった。

そのピンチが失点にならなかったのは、まさにツキに恵まれたこと以外の何ものでもなかった。

またベルギー戦では、コーナーキックをキャッチしたベルギーGKクルトワからボールを受け、そのままドリブルで突進していくデ・ブライネを抑えにいき「過ぎた」ことで、右サイドを全力疾走するムニエと、最後のシュートを決めたシャドリを完璧にフリーにしてしまった。

たしかに、二つとも見事なカウンターだったし、世界のどのチームでも、効果的に抑えるのは容易ではなかったに違いない。

でも、やはり、「次につなげる学習機会・・」という視点で、十分に分析し、次のイメージトレーニング素材として存分に活用すべきだと思うのである。

もちろん「ここ」では、数秒間ごとに変化するカウンタープロセスに対する個々の判断や決断(勝負イメージングのプロセス内容)、はたまた実際アクション等に対する分析や評価は、やらない。

そうではなく・・

相手のカウンターに対して、全神経を集中し、全精力のディフェンスアクションを効果的に実行していくコトほど「キツイ守備アクション」はない・・ということ「も」言いたかったさ。

そう・・

だからこそ、完璧なイメージトレーニングと、実効アクションのトレーニングが、とても重要な意味をもってくるというわけだ。

ということで・・

サッカー守備において、もっとも難しく、そしてキツい、相手カウンターへの効果的な対処という、とても難しいディスカッションに「も」触れようと思った筆者だったのであ〜る。

へへっ・・


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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、新規に、連載をはじめています。

一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 





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