湯浅健二の「J」ワンポイント


2001年J-リーグ・ファーストステージの各ラウンドレビュー


第12節(2001年6月23日、土曜日)

やっと小野が「本物」になった・・浦和レッズvsコンサドーレ札幌(2-0)

レビュー

 レッズが、素晴らしく内容のあるゲームを展開し、コンサドーレに勝利しました。ここでいう「素晴らしい」の意味には、大きく分けて「二つ」あると思っている湯浅です。さて・・

 一つ目は、何といっても「守備ブロックの安定」。路木がセンターに入ったことで、また、石井、土橋の守備的ハーフコンビの忠実&ダイナミックなディフェンスがあったことで、井原の「読み」能力が存分に発揮されるようになったと思うのです。(聞いたところによると、この前の試合では、池田学も非常にステディーなプレーを展開したとのことです・・ということは選択肢も増えた!)

 また、両サイドの山田、内舘も(実効ある攻撃参加も含め)ステディーなプレーを展開していましたし、小野伸二も(彼については後述!)守備での抜群の機能性を魅せていましたからネ。

 井原ですが、彼の場合は、(皆さんご存じの通り!?)「一対一での弱み」を抱えています。ただこの試合では、素晴らしいプレーバランスを魅せつづけるパートナー連中を得たことで、水を得た魚のように、微妙なポジショニングからの、クリエイティブなカバーリングやパスカット(危急状況での火消し役!)を披露しました。

 これで、レッズの「守備ブロック」は、「守備のやり方(守備のチーム戦術)」についての「感覚的な合意(守備におけるイメージシンクロ)」を確立した・・といっても過言ではなさそうです。もちろん「相手」にもよりますがネ・・。

 その守備ブロックの安定に大きく寄与したうちの一人、石井ですが、ボールを奪い返せば「ミッドフィールダー」として機能し、守備に入れば、路木とならんで「忠実でハードなストッパー」として機能します。そしてその前で、土橋が縦横に走り回って「穴埋め」をするという具合・・。いや、本当にうまく機能していました。

 また土橋ですが、何度も「相手二列目プレーヤーの決定的な飛び出し」に対し、最後まで、味方の最終ラインを追い越してまでもマークをつづけるというシーンを目撃しました。この、忠実な「勝負所でのマンマーク」があればこそ、最終ラインも「落ち着いて(余裕をもって)相手の攻撃を受け止められるというわけです。何といっても、「正面から全力でダッシュしてくる相手」を、そのスピードに合わせて確実にマークすることほど難しいことはありませんからネ。

 久しぶりに見たレッズ。まず、その守備ブロックの「高い安定性」に強い印象を受けた湯浅でした(もちろん何度か、不安定なポジショニングミスによってコンサドーレにシュートを打たれた場面はありましたが・・)。つまりレッズの全体的な「戦術イメージ」は、堅牢な守備ブロックをベースに、素早い攻撃を仕掛ける(より高い位置でボールを奪い返す!)というものだということです。まあ、カウンター気味のチーム戦術といえないこともありませんが、どちらかといえば、最終ラインと中盤守備ラインとの連携を強化することで、小野、ツゥット、そして抜群に調子を上げている永井の「才能」を活かす・・という発想なのでしょう。

 このゲーム二得点の永井、トゥット、彼らを操る小野。いや、魅惑的なオフェンスではありしまた。

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 さて「素晴らしい・・」の、二つ目のファクター・・。もう言うまでもないでしょうが、それは「小野伸二」です。

 一月半くらい前、「イサイズ 2002クラブ」で(トップページにリンクボタンあり!)、「ゲームを楽しみはじめた小野伸二・・」というコラムを発表したのですが、とにかく彼は、この二〜三ヶ月間で、驚きのイメチェンを果たしました。もちろん、攻守にわたって・・

 これが彼本来のチカラなんでしょうが、私は、その「過激なパフォーマンスアップ」を、喜びあふれる驚きをもって見つめていたのです。要因は、彼のアタマの良さ!? 要は、彼の「インテリジェンス・レベル」が高いということです。

 私は、フットボールネーションにおいて、多くの「才能」たちが(もちろん彼らのほとんどは中盤の選手たちですヨ)、サッカーにおける「使い・使われる」というメカニズムや、「自ら仕事を探しつづける」というアクティブな姿勢、はたまた「自分を中心にボールを動かしてやるゾ!」というアグレッシブな姿勢などに欠けることで、結局は「才能の墓場」へ陥ってしまったという「悲しい現実」を目撃しつづけてきました。

 私は、小野を本当に心配していました。だからこそ、繰り返し、彼のプレー(姿勢)に対し、攻撃的なコラムを書きつづけたのです。もちろん彼の、「覚醒のベース」になる「インテリジェンス」を信じて・・

 そして、レッズでのプレー内容に「復活」を予感し、コンフェデカップでの「スケールアップ」を目撃したというわけです。もちろん、フランスとのコンフェデ決勝「後半」でのプレー内容も(ご存じのように、二列目の中央に入った途端のパフォーマンスダウンによってフィリップに交代させられてしまって・・)、確実に「自身のステップアップの糧(学習機会)」になったと確信している湯浅です。

 後で見返してみたところ、試合メモのうち、70%は小野に関するモノでした。以前の「アリバイ守備」などではなく、忠実でクリエイティブな「実効あるディフェンス」(オレがボールを奪い返してやる・・という強い意志が前面に押し出されている!)。運動量の豊富さ(動き回ることで、ボールにたくさん触っている・・チームメイトも動いているパスターゲットの方が見えやすい!)。シンプルな展開パスの後の、素早い「次のスペースへの動き」。例によっての「才能ベースの(ダイレクト)ラストパス」やダイナミックで忠実なフリーランニング。そして何といっても、積極的なドリブル勝負(このドリブル突破チャレンジが、彼のプレーの幅=変化の幅=を格段に広げた! 願わくば、もっと積極的にシュートにチャレンジを!!)。いや、素晴らしい。これだったら、歩いたり止まったりしていても、「次のアクティブプレーへ向けたタメ」だと思えますよネ。

 拾い出しただけでも、15シーンはありましたかネ。もちろんシュートシーンを演出する「派手なパス」や、ドリブル突破チャレンジばかりではなく、泥臭いチェイシングや「ボールのないところ」でのマーキング、味方を「前へ送りだした」後のカバーリング、はたまた、激しいスライディングタックルからのボール奪取などなど。

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 小野は、フェイエノールトへ行くことになるんでしょうネ。今の彼のパフォーマンスを見ていて、正直、「今が絶好のタイミングだ・・」と思います。

 本場のプロたちは、グラウンド上での「現実」だけしか評価しません。もし、運動量が少なく、自分勝手な「カッコつけプレー」が目立つようなヤツだったら、すぐに、チームメイトたちによって、グラウンド上で「抹殺」されてしまうのです。そして、「ボールをつけてくれないんだヨ(パスを出してくれない)・・」とか、「走ってくれないからパスの出しどころがないんだヨ・・」などの「自分勝手な不満」を積み重ねるなかで「心理的な悪魔のサイクル」に陥り、そして自然淘汰されていってしまう・・。厳しい世界です。

 そこで評価されるのは、前述した「メカニズム」をしっかりと(忠実に)体現するような『ダイナミックな自己主張プレー』だけ。中田ヒデに対するグラウンド上の評価のコアも、もちろんそこにあるというわけです。その意味で、いま小野が魅せつづけている「プレー内容」は、最低でも「厳しい競争のスタートライン」につけるレベルにあると確信しているのです。だから「今がベストタイミング」。そして、「世界スタンダードの、本当の良い選手」へステップアップしていく・・

 彼の、攻守にわたるダイナミックプレーを見ていたら、心から、「中田ヒデにつづく、日本サッカーの宝物になるに違いない・・」と思えてきます。本当に、楽しみが一つ増えたじゃありませんか。彼がどこまで発展するのかを見届けるという楽しみが・・

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 さて、湯浅は、明日(6月24日)の日曜日、午後1830時からはじまる(一時間!)、テレビ埼玉の「レッズナビ」という番組に出演します。

 もしそこで、このコラムと同じ内容を語っていたら、ほくそ笑んでくださいネ。では・・



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