湯浅健二の「J」ワンポイント


2001年J-リーグ・ファーストステージの各ラウンドレビュー


第2節(2001年3月17日、土曜日)

「実力の差」が、そのまま結果につながった試合でした・・サンフレッチェvsジュビロ(1-4)

レビュー

 優勝候補のジュビロ。開幕戦では、ジェフに対し、危なげない「1-4」の勝利を収めました。対するホームのサンフレッチェは、アントラーズに善戦したとはいえ、まだ僅差が目に見える・・という内容で、最後は「1-2」で競り負けてしまいました。さて第二節は・・

 立ち上がり。内容で、ジュビロが明確に上まわっていることを感じます。右サイドの藤田が、センタリング、シュートと、どんどんと攻撃の最終シーンへからんでくるのです。それも、名波の「グラウンド全体を俯瞰」する鋭いイメージがベース。彼が、左サイドで奥や中山、はたまた高原とショートパスをつなぎ、サンフレッチェ守備ブロックを十分に引きつけた瞬間に、逆サイドへ「勝負ゾーンを瞬間的に移動」させてしまうサイドチェンジパスを飛ばすのです。そしてそのゾーンには、藤田がしっかりと押し上げている・・。そんなところにも、ジュビロ選手たちの、「チームとしての攻め方」のイメージが、明確にシンクロ(同期)していると感じます。

 やはりジュビロは強い・・

 対するサンフレッチェは、開幕戦のアントラーズ戦同様、「チーム」としてまとまりあるサッカーを魅せはしますが(共感は覚えるのですが・・)、どうしても「最後の仕掛け」では、パスミスや敵対プレーでのミス、また、決定的スペースを攻略するための「イメージのシンクロ」についての課題を感じてしまって・・。サンフレッチェは、ジュビロの右サイド、藤田がかなり上がり気味ということで、新人の梅田や、最前線の久保などが、しきりに左サイド(ジュビロの右サイド)を崩そうとはします。ただそれも、ジュビロの守備ブロックにとっては計画済み。フラットスリーの右サイド、鈴木、またボランチの福西、服部などが、タイミング良く「寄せる」ことで、スペースを塞いでしまうのです。

 またサンフレッチェの場合、守備にしても、「ここにパスがくる!」と、ジュビロの次の仕掛けを予測した(読んだ)守備での動きが鈍く、どんどんと「攻撃の起点」を作り出されてしまうのです。それも、ジュビロの中盤でのボールの動きが活発だから・・。ショート&ショートから、ドン!と長いパスがスペースへ通ります。そしてそこには、その「ドカン!パス」を明確にイメージしている二列目、三列目の選手が押し上げている・・フム・・

 そして徐々に、ゲームの主導権が、目に見えてジュビロのモノになっていく・・。実力の差・・!? まあそういうことなのですが、サンフレッチェにしても、決して個人能力で「大きく」劣っているわけではないですから、これはもう、攻守にわたる「(戦術的な)発想の差」としか表現しようがありません。サンフレッチェがくり返していたミスパスや、ミスコントロールにしても、「周りの味方」の動きが「有機的にリンク」していないことの証明・・、つまり、選手同士の「次のプレー(次にどのような展開になるのか・・)」に関するイメージが、うまく同期していないことの証明だと感じるのです。

 そして前半の22分、「実質的なゲーム展開」どおり・・と表現しても差し支えないような先制ゴールが決まってしまいます。

 決めたのは、ジュビロの藤田。左サイドから、(上記したような展開で)フリーになった服部が、完璧にルックアップした余裕のある状態から、「ファーポスト側スペース」へ向けて「美しい意図」が込められたセンタリングを送り込みます。サンフレッチェGK、下田もよく反応しますが、そこには、ジュビロの「スペースの王様」、中山が、後方からピタリのタイミングで走り込んでいました。走り込んでいるから、下田よりも高くジャンプできるのも当然。逆に、無理して後方へバックステップしながらジャンプした下田は、ボールに触ることさえできません。そして中山のヘディングシュートがバーに当たって跳ね返ったこぼれ球を、「忠実」に詰めていた(そこには奥も、詰めていました)藤田が、ドカン!と先制ゴールを決めたというわけです。

 続く25分。高原の素晴らしいドリブル突破が成功し、PK!

 一人をかわし、どんどんとペナルティーエリア内までドリブルで突き進む高原。ゴール前には、「もちろん」中山が、名波が走り込んでいます。だから、ドリブルをする高原のマークについて上村のカバーに入る者は誰もいません。この状況で高原は、「ここだ!」と、そのままドリブル突破にチャレンジし、完璧なカタチで抜け出したところを、どうしようもなくなった上村に引っかけられたというわけです。高原の、素晴らしいドリブル突破チャレンジではありました。

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 後半、サンフレッチェが、チーム戦術を変更します。トゥーリオ、上村、そして桑原によるスリーバックにし、沢田を左に移動させ、右に、服部公太に変わった(タテへの突破力のある)川島が入ります。ボランチには、昨シーズンの新人王、森崎が下がり、コリカが少し基本ポジションを上げます。そして最前線には、中央に久保、両サイドを、藤本に代わって出場した高橋泰と梅田が務めます。そして、この「3-4-2-1」という、どちらかといえば中盤を「濃く」したチーム戦術によって、サンフレッチェのサッカーがダイナミックに変身します。その要因は、もちろん「中盤の支配」。要は、中盤での守備が、よりダイナミックに「実効」あるモノへ変身したということです。

 それに対しジュビロは、チョット「中休み」気味。ということで、サンフレッチェがゲームのペースを握ります。

 とはいっても、そこはジュビロ。やはり守備ブロックは「堅牢」そのものです。「もっと早く逆サイドへボールを動かせよ!」。サンフレッチェの、型にはまった攻撃に、何度、そんなことを叫びそうになったことか。中盤でのボール奪取、そしてそこからの「攻撃の初期段階」でのボールの動きはいい・・。それでも、肝心の「攻撃の最終段階」でのイメージが、まだまだ稚拙・・。

 もう何度も書いている通り、それも、「最終段階における攻撃の変化」を演出できる選手がいないことに起因しているのでしょう。たしかにコリカも、ある程度の能力は示しますが、それでも・・。

 「仕掛けのボールの動き」にしても、たぶんジュビロ守備ブロックは、「二つ前」くらいのステップから、「ヤツら、最後はココにくる・・」と読めていたに違いない・・そんなことまで感じてしまいます。

 そしてジュビロは、そんな読みベースの安定守備から、空き気味になっているサンフレッチェ守備ブロックの両サイドスペースをどんどんと突くような、危険な「カウンター」を仕掛けてくる。ゲームの終盤、「やはり、チーム力が違うな・・」、そんなことを感じたものでした。

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 後半、まず藤田のフリーキックが決まって「3-0」。次にサンフレッチェの高橋が、お返しのフリーキックを決めて「3-1」。でも最後は、これまたカウンター気味の攻撃から、センタリングに高原が飛び込み、終わってみれば、ジュビロの「4-1」という圧勝でした。

 サンフレッチェにとっては、開幕戦の対アントラーズとのゲーム同様、実力の差(=ここでは戦術的な発想の差という風に表現したいですね・・)が、そのまま結果に現れたといった結果ではありました。

 それにしてもジュビロ。強いですね。彼らの場合、両サイドに、藤田、奥を入れています。ただ、この試合でボランチに入った福西、服部のコンビだけではなく、スリーバックの両サイド、鈴木、大岩のクリエイティブな対応によって、この二人(藤田と奥)が、限りなく「サイドアタッカー」的な雰囲気をかもし出しているんですよ。

 とはいっても、藤田、奥、そしてチームリーダーである名波の守備意識も、抜群に高いですから、中盤から最終ラインにかけての「守備バランス」は、本当に、「崩れかける雰囲気」さえ感じません。いや強い・・

 まあこれも、「チームとして確立しているプレーイメージ」のなせるワザ。彼らの場合は、攻守にわたって「グラウンド全体を俯瞰」するような「映像」が、いつも脳内ディスプレーに映し出されていることを感じます。

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 さて、湯浅は、来週土曜日の「日本代表対フランス代表」の試合を見るために、また、諸々の案件を、ドイツサッカー協会やサッカー関係者と話すために、はたまた私のビジネスアレンジメントのために、ヨーロッパへ飛びます。

 何か、面白いことがあれば、フランス戦だけではなくレポートする予定。ご期待アレ・・



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