湯浅健二の「J」ワンポイント


2002年J-リーグ・ファーストステージの各ラウンドレビュー


第2節(2002年3月9日、土曜日)

エキサイティングマッチは「唐突」な一発で・・鹿島アントラーズvs清水エスパルス(0-1、延長Vゴール!)・・レッズ対FC東京(0-1)についてもショートコメント

レビュー

 先日のゼロックススーパーサッカーと同じ顔合わせになった第二節。期待に胸ふくらませて、鹿島までオートバイを飛ばしてきました。ちょっと、ここのところアントラーズに対する厳しいコメントが多かったから・・。それも、彼らの「発展」に対して大いなる興味を抱いているからです。とにかく彼らの「個人的なキャパの総体」がビッグであることは疑いのない事実ですからネ。ということで、彼らの「ポジティブ変化」に大いなる期待をもって、オートバイのアクセルを絞っていたというわけです。

 この試合では、アントラーズの中田浩二(開幕戦は出ていません)、そしてエスパルス中盤のジェネレーター、戸田に注目しようと思っていました。2001年に大ブレークした戸田は、守備だけではなく、近頃では、中盤の組み立てにおける「クリエイティビティー発電器」としても機能しています。エスパルスばかりではなく、日本代表でも・・。いや、素晴らしい。

 あっと・・中田浩二についても同様で、まだうまく機能していないアントラーズ中盤で、どのくらい彼がリーダーシップを発揮できるのか・・注目していたのです。

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 さて試合。前半については、まあほとんどコメントなしですかネ。本山が、ドリブルからの中距離シュートを放ったり、ヘディングアシストからダイレクト中距離シュートを放ったりします。また、意図のあるバックパスから、後方から押し上げた中田浩二が、ドカン!と、絶妙コントロールのロングシュートを見舞いました。でも、基本的には中盤のせめぎ合いだけが目立つ・・という展開。

 注目の戸田と中田浩二にしても、とにかく前半は堅く・・と意識したプレーに終始します。それでも、ホームのアントラーズに「全体的な流れ」が傾いていました。エスパルスには、アレックスの爆発的な突破シーンが一回だけと、ほとんどチャンスらしいチャンスなし。まあ彼らの場合、森岡、斉藤、伊東という主力が欠けていることを考慮しなければなりませんがネ・・

 またアントラーズの攻めでは、相変わらずミッドフィールドが鈍重で、両サイドの攻め上がりも目立ちません。要は、上がり目のミッドフィールダーたちに、両サイドを押し上げさせる・・という明確な「発想」が見えてこないということです。彼らが、「それなりの意図」をみせるプレーをすれば、両サイドだって「後ろ髪を引かれる」ことなく、吹っ切れた攻撃参加ができるのに・・。それが明確に見えてこないから、いつも「前の四人」だけで攻めるようになってしまう。フ〜〜

 私は、アントラーズの、改善や発展の「香り」を感じたくて鹿島まで来ているのに・・なんて、ちょっとガッカリしていました。以前はあったじゃないですか、「前の四人」が、それこそ渦巻きのように縦横無尽にポジションチェンジし、そこに、タイミングよく両サイドも絡んでくるような「厚く、創造的な攻め」が・・。

 まあ前半は、両チームともに、とにかく「堅く(あまり大きなリスクを冒す仕掛けは控える)」という、定石通りのゲーム戦術だったということでしょう。

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 それでも後半は、(期待したとおり)エキサイティングな展開になります。両チームともに、選手とボールの動きがスムーズで広角になり、それにともなって、一人ひとりのリスクチャレンジマインドもアクティブになっていったと感じます。

 まずエスパルス。後半立ち上がり2分に、左サイドからのサイドチェンジパス(ラストセンタリング)が、右サイドの「大外」にいたバロンへ通ってフリーシュート・・。惜しくもバーを越えていきます。

 エスパルス両サイドの押し上げが目立つようになってきている・・と感じていました。もちろん、吉田と戸田のカバーリングもうまく機能しているということです。スリーバックのエスパルスだから、とにかく両サイドは、攻撃の生命線ですからね。

 その後の6分。今度はアントラーズが、素晴らしい攻撃を仕掛けます。その直前の、鈴木が抜け出した決定的チャンスも素晴らしかったのですが、この攻めは、エスパルス守備ブロックを完全に崩したという意味で、チームに自信を与えたに違いありません。右サイドから、本山と柳沢によるパス交換を経て、最後はフリーの小笠原が決定的シュートチャンスを得ます。一度切り換えしてシュートを放つ小笠原。それでも、左へわずかに外れてしまって・・。

 今度は17分のエスパルス。この試合でもっとも美しく、危険な攻撃が成就しかけます。演出家は、言わずと知れたアレックス。左サイドから、二人を抜き去る大迫力のドリブルで中央へ切り込み、平松とのワンツーで抜け出してフリーシュートまでいったのです。それでも角度がなかったことから、最後の瞬間に、ラストパスに切り替えたのでしょう。これしかないという「ラスト・トラバースパス」が、アントラーズゴール前の決定的スペースを切り裂きます。それでも、最後の数センチとどかなかった澤登とバロンの足。いや、本当にエキサイティングなシーンでした。前半の、名良橋をブッちぎったドリブル突破なども含め、やっぱりアレックスの突破力は凄い。その背景にあるのは、もちろん彼の「狩猟民族のアグレッシブな血」なんでしょうね。

 そんな押しつ、押されつという展開だったゲームも、20分前後からは、アントラーズが主導権を握り、どんどんと攻めを活性化していきます。本山と名良橋のコンビネーションから、名良橋がフリーで走り抜けたシーン。25分の、エスパルス守備ブロックを振り回し、最後は本山がフリーでの中距離シュートを放ったシーン。35分の、右サイドを上がった本山からの「山越えセンタリング」の折り返しを、柳沢が、ゴール前3メートルからシュートしたシーン(バーを越えてしまう!)。36分の平瀬のフリーヘディングシュートシーン。

 とはいっても、そんなアントラーズの勢いにもたじろがす、ガンガン押し返すエスパルスの意志の強さもインプレッシブそのもの。二度、三度と決定的チャンスを迎えます。そして、チャンスとピンチが交錯する、「これぞサッカー!」というダイナミックゲームになっていっていきました。ただ結局はノーゴールで延長へ・・。

 後半は、本山の動きと「ゲームの流れへの絡み方」も改善されました(もちろんまだまだではありますが・・)。とにかく彼の場合は、どんどんと、ボールホルダーへ「寄る」ことでたくさんボールに触らなければなりません。そして、シンプルなパスの後の「ボールのないところでの爆発フリーランニング」から、最終勝負でのドリブルチャレンジ。もちろん、そんな「動きのあるプレー」に、バランスをとるポジショニングなどの「静」のプレーも織り交ぜるのです。そんなメリハリさえついてくれば、彼の特徴も、もっと活きるに違いありません。

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 延長に入り、アントラーズは、熊谷に変えて長谷川まで投入します(小笠原が守備的ハーフの位置まで下がる)。より攻撃色が鮮明に・・。

 後半81分には、柳沢と交代して、ディフェンダーの池内が入ったことで、既にスリーバックになっています。その意図は、もちろん両サイドバックのオーバーラップを活性化しようというもの。とにかく勝負をかけたアントラーズといった具合。そして、この攻撃的な布陣が素晴らしく機能します。両サイドの名良橋とアウグストによる積極的な押し上げによって、サイドからの崩しが、より危険な匂いを放ちはじめたのです。

 そんな「変化」を見ていて、アントラーズは、スリーバックの方が、うまく機能するのでは・・なんて思う反面、それでも、やはり状況を見て途中から切り替えた方が「変化」という意味でうまくいくよな(世界の常識だし・・)・・なんてことも思っていました。

 とはいってもエスパルスも負けてはいない。その仕掛け人は、もちろんアレックス。勝負所では必ずドリブル勝負に入り、キチッと、何らかの「最終シーン」を演出してしまうんですよ。延長開始早々の2分には、惜しいシュートまで放ってしまって・・。いや、素晴らしい。

 とにかく延長戦で両チームが展開したサッカーのエキサイティングなこと。延長前半でのシュート数は、アントラーズが「4本」、エスパルスが「3本」、そして延長の後半は、勝負が決まるまで互いに「2本」ずつと、両チームのダイナミックな仕掛け合いが見えてくるじゃありませんか。

 でも、このまま引き分けになってしまうんだろうな・・なんて思いはじめた延長後半13分。唐突に、本当に唐突に、エスパルスの「Vゴール」が決まってしまいます。右サイドから挙げられた伊東のセンタリングを、バロンが、アントラーズゴールにヘディングシュートを突き刺したのです。一瞬、静まりかえるスタジアム。

 たしかにアントラーズの調子は上向きです。トニーニョ・セレーゾの「ゲーム采配」もよかったですしね。シュート数だけを比べれば、完全にアントラーズのものでした(23本:13本)。とはいっても、アントラーズ同様に、何本も決定的チャンスを作り出すような素晴らしいサッカーを展開した(アウェーの!)エスパルスも大したもの。まあ、内容的には「引き分け」が順当かな・・なんて思っていた湯浅だったのですが。

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試合後、すぐに浦和へ移動しました。途中、事故や、大渋滞に遭遇してしまって・・。単車ですから、車の間をすり抜けられますが、それでも気疲れが・・。そして、試合開始直前に、埼玉スタジアムに到着です。フ〜〜ッ。

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 では、レッズ対FC東京の試合レポートを短く・・。

 連敗になってしまったレッズですが、前回同様、ディフェンスコンセプトは、よく機能していたと思いますよ。強固なディフェンスが、よいサッカーの基本ですから、まあ方向性としては間違っていない・・。でもそのことが、前の試合同様、「次の攻撃」に、かなりネガティブな影響を与えてしまっていると思う湯浅なのです。思い切りのよい、また組織的で危険な攻めを展開できず、全体的な仕掛けイメージの中心が、エメルソンの単独突破に依存してしまうレッズ・・。ハンス・オフトも、まだ攻撃の戦術イメージを醸成するところまで手が回らない!? とはいってもネ・・。

 逆にFC東京は、開幕戦と同じように、攻守がうまくバランスしたグッドフットボールを展開していました。佐藤由紀彦がいないにもかかわらず・・。でも、三浦文丈がケガでリタイアし(浅利と交代)、下平が二枚目イエローで退場になってしまってからは防戦一方になってしまいます。まあ当然の成り行きなのですが、それでも、たまに繰り出すカウンターの鋭いこと・・。本当に彼らは、よくトレーニングされている・・もちろん「戦術的な発想(イメージ・シンクロ)」という意味でネ。

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 アリソンですが、しっかりとボールをキープして(タメの演出)ラストパスを出したり、ドリブルにトライしたり、決定的フリーランニングを仕掛けたり、積極的にシュートにトライしたり等々、よかったですよ、最初の20分は・・。攻撃だけではなく、実効ある守備でも、彼のクオリティーの高さを感じていました。だからこそ、気抜けプレーをしたら腹が立つということなんですが、それでも20分を過ぎたら、もうほとんど「存在が消えかかって」しまって・・。この時期になっても「まだ」コンディションが悪いというのでは、もうまったく言い訳のしようがありませんよね。とにかく、自分主体になって「攻めの流れに絡む」という強い意志を前面に押し出すなど、積極的な戦う姿勢だけは魅せていたアリソン。今後に期待しましょう。

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 レッズですが、下平が退場になった後の攻撃がいただけない。エメルソン、福田、トゥット、山田等の「個人勝負」ばかりが目立ってしまって・・。もっと『早い』タイミングでパスを回さなければ・・(特に、相手の懐深くをえぐるタテパスと、そこからの爆発的なテンポアップ!)。それが遅いから、結局は、パスレシーバーの動きが止まってしまう・・。一人ひとりが、ボールをこねくり回し過ぎなんですよ。だから、パスを受ける方にしても、どのタイミングで動き出していいか分からない。そして、「待ち(様子見)」になってしまうことで動きが止まり気味になり、それがチーム全体に「ネガティブ連鎖」してしまう・・。それでは、相手ディフェンダーが読み難いタイミングのボールの動きを演出することなんて出来るはずがありませんし、相手守備の薄い部分(人数が揃っていないゾーン)を、エメルソン、トゥット、福田、山田等が、天賦の才を駆使して突いていく・・なんていうエキサイティングシーンだって演出できっこない・・。

 それこそ、戦術的な発想(次の仕掛けに対するイメージ)のシンクロレベルの問題。これからの、ハンス(オフト)とビム(ヤンセン)のお仕事に期待しましょう。

 ところで、石井俊也はどうしちゃったんでしょうか。心理的にも、物理的にも、はたまた戦術的にも優秀な選手なのに・・。ちょいと不思議だな・・なんて思っている湯浅なのです。まあ、監督によって選手評価はまったく異なりますから、同業者として、ハンスの判断は尊重しますがネ・・。とにかく、難しい時期を経験し、一回り大きくなってレッズの躍進に貢献する石井の勇姿を確信している湯浅だということは付け加えておかなければ・・(なんて書いたら、すぐにレッズを支持する方々からメールが届きました・・石井は、疲労骨折寸前だったとか・・でももうトレーニングをはじめているから、復帰ももうすぐ・・とのこと。しっかりした取材なしに、安易な文章をアップしてしまい、恥じ入る湯浅でした。・・ということで書き直すのではなく、自戒の意味も込めて、この文を追加することにしました。湯浅)。

 とにかく、阿部さえ復帰してくれば・・なんて思っている湯浅でした。

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 アタマが回らなくなってきたので、今日はこれくらいにします。明日(3月10日、日曜日)は、もちろんヴェルディー対ジュビロの観戦です。発見があれば、またレポートします。とにかく、文章を見直すエネルギーさえ残っていない湯浅でした。



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